本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまでレポートしていきます。
なお、本連載中ではとくに断り書きがない場合、本文中のURLは中文サイトとなります。ご注意ください。
■高校2年生が中国政府サイトを攻撃。逮捕され話題に【5月30日】
内モンゴル自治区の高校2年生が、200以上の中国政府サイトを含む国内外の2,200サイトを攻撃したとして、逮捕後の6月前半は容疑者の学生の生い立ちなどを紹介するニュースが数多く掲載され話題となった。
さかのぼること5月15日、湖北省随州市の市政府情報網の電子政務関連のサービスが容疑者の学生の攻撃を受けたことで、数日間利用できなくなった。中国では、IPアドレスと地域が対応しているために発信元が割れ、5月30日に御用となった。
容疑者の学生は、「外国のサイトと比べると、中国のサイトはセキュリティが甘い。多くのサイトがIDチェックを行なわないことから攻撃しやすかった。攻撃をした後は、そのサイト管理者に連絡し、サイト復旧の相談をもちかけた。しかし、ほとんど相手にされなかった」と中国メディアの取材に答えている。サイト攻撃の目的については、「ハッカーとしての腕を磨きたかった」と話している。
■Mozillaが中国にオフィスを創設。Firefoxの普及を狙う【5月31日】
Mozilla Corpotaionの副社長であるMike Schroepfer氏は中国メディアに対し、北京の秋葉原こと中関村にMozilla中国中心(Mozilla China Foundation)を創設することを明らかにした。同施設は6月末時点で既に創設済み。代表には、SUNの中国研究院の院長兼マイクロソフトWindows Live中国区の総経理である宮力氏が就任する。
また、Mike Schroepfer氏は「Firefoxが、5%でも10%でも――願わくば20%のシェアを獲得し、Internet Explorerの技術ルールではなく、本来あるべきWeb標準を中国が採用するよう努めたい」と中国メディアにコメントしている。
ブラウザ市場におけるFirefoxのシェアについてSchroepfer氏は、「世界のブラウザ市場におけるFirefoxのシェアは16%前後に上る。シェアは地域によって異なるが、欧州では多くの国で30%のシェアを獲得しており、40%を超えるところもある。アジアは世界的に見てFirefoxのシェアが最も低い地域となっており、中国はわずか1%しかない」とコメントしている。今回中国に初めてのオフィスを設ける前にも中文版Firefoxはリリースしていたが、満足できるシェアは獲得できなかった。中国オフィス創設で「積極的に宣伝していく(同氏)」という。
■孔子に関する公式ポータルサイト「中国孔子網」開設【6月6日】
中国孔子基金会による孔子や儒学に関するオフィシャルポータルサイト「中国孔子網( http://www.chinakongzi.net/ )」が6月6日に開設された。言語は、簡体字と繁体字の両中国語のほか、英語サイトも用意。孔子についてのさまざまな情報を調べたり、「子曰く、~」でお馴染みの論語などの有名な作品を読んだり、中国の古典音楽が聴けたりできるほか、オンライン祭祀もできる。
■中国のインターネット研究者「百度よりもGoogleのほうが優れている」【6月6日】
中国インターネットの著名研究者である呂伯望氏は、百度とGoogleについてネット利用者がどう考えているかを独自調査し、それを「搜索質量盲測評估報告」として発表した。中国全土で2740人、11864の有効回答が得られた同調査の結果によると、時事ニュース、IT、金融、ショッピング、交通旅行、教育、公共情報の7項目で、Googleが百度よりも優れた検索結果となり、反対に百度がGoogleより優れている検索結果はエンターテイメントの分野だけという結果となった。端的に言えば、Googleのほうが百度よりも検索サービスでは優れているという結果となった。
また百度の最も大きな不満点として「広告と検索結果の区別がつきにくい」というのが挙げられ、また一方でGoogleの最も大きな不満点では「検索サービスが不安定」で、「掲示板やmp3検索サービスを提供していない」こともマイナス点として挙がった。
後日、一部の中国メディアは、「サンプルが少なすぎる」「市場シェアでは百度のほうが上」などの様々な観点から、この調査は信憑性のないものとして非難する記事を掲載。この非難に対して呂伯望氏は、同氏のブログ上で反論している。
■中国最大の証券サイトにトロイの木馬が仕掛けられ話題に【6月10日】
毎日数十万人が訪れるという中国最大の証券サイト「中国証券網」にこの日の午後にトロイの木馬が仕掛けられ話題となった。その日2時間後にキングソフトインターネットセキュリティのプログラマが確認したところ、問題ののトロイの木馬は既に消去されていることが確認された。トロイの木馬が仕掛けられている間に同サイトにアクセスすると、パスワードなどアカウント情報を取得した上で、ハッカーらに情報が送信されるという。
こと最近株ブームに沸く中国では、今年の4月にも別の証券サイトにトロイの木馬が仕掛けられるなど、中国のマネーブームに便乗したウィルスが急増しているという。
■Google中国、さらなる現地化推進を宣言【6月13日、26日】
Google大中核のCEOである李開復氏は、中国メディアに対し、今後一部のGoogle中国のサーバーを米国から中国に移転することを明らかにした。また同氏は、さらに米国らのGoogleの各サービスの中国化を推進するという。2006年初頭に中国向けの同社検索サーバーが中国に移転して話題になったが、同社サービスのサーバー移転の話題はそれ以来となる。
同社サービスの中国語化といえば、関連ニュースでは26日には上海の研究所が落成し、中国において北京、台北(中国台湾)に続く3箇所目の研究所となった。この研究所では具体的にどのようなことがされるか明言されていないが、中国における同社サービスの本土化を推進するための研究開発が行われる。既存のサービスの中文化はもちろん、過去には中文IMEの開発も行なっていることから、中国独自のサービスがリリースされる可能性もある。
■23歳の青年を中国IT系WEBメディアの総編集長に【6月24日】
ITニュースやImpressWatchの中文版も配信する、中国有力IT系WebメディアのChinabyte(天極網)は、同サイトの総編集長に23歳の李〓縁(〓は、王へんに其。以下同)氏を採用することを発表した。中国のIT系Webメディアの編集長は若い世代が一般的だが、ここまで若いのはそう多くない。
天極網の総裁である李志高氏は、李〓縁氏の採用について「李〓縁氏は非常にインターネットに詳しく、かつ若いネット利用者の趣味趣向やオンラインへの偏向をよく理解している」とコメントしている。また「同サイトの利用者の半数以上は25歳以下」という統計から同世代である23歳の李〓縁氏を採用した、ともコメントしている。
李〓縁氏は14歳のときに個人サイト「〓縁網絡」を立ち上げ、15歳から16歳にかけてポータルサイト「中華網」のサイト構築と運営をする「維持網絡信息有限公司(ネットワーク情報維持有限公司)」のCEOとなっている。そんな経歴から「少年CEO」「中国インターネット第一の子供」と呼ばれた。李〓縁氏はその後英国オックスフォード大学に留学、帰国してのち今回のChinabyteの総編集長に。Chinabyteは李〓縁氏に、年60~70%のページビュー増加を要求している。
■元ソニー会長の出井氏、百度の社外取締役就任に中国の反応はいまいち【6月27日】
本誌でも報じたように、元ソニー会長の出井伸之氏が百度の社外取締役に就任し、氏の就任により百度の日本向けの市場戦略を強化することが明らかとなった。
その後、あらためて中国でこのニュースについて確認すると、中国では非常に多くのWebメディアがこのニュースを取り上げていた。このニュースを取り上げて記事にするブロガーも目についた。また、各ニュースサイトのニュース感想掲示板でも、これについての感想の書き込みは少なくなかった。
ネチズンの感想をいろいろ見てみると、出井氏が就任することを祝う内容は意外に少なく、むしろ出井氏を含む外国人の取締役の就任により中国企業でなくなることを残念とする内容や、そもそも近年の百度は使えないといった内容が多かった。これが全ての人の意見ではないが、どうもこのニュースに関しては、日本人の思うところと中国人の思うところは違うように思える。
■Google中国、名称が似ている企業から訴えられる【6月28日】
2006年の4月13日、現地化の一環として「谷歌」と中国名を命名したGoogle中国だが、改名後、よく似たサービスを運営するよく似た名前の企業から訴えられることになった。
裁判所である北京市海淀法院に提訴したのは、ショッピングと検索のポータルサービスを提供する「北京谷歌科技有限公司」。被告となるGoogle中国の正式名称は、「谷歌信息技術(中国)有限公司」だ。原告は、2006年4月19日に「北京谷歌科技有限公司」を登録したが、調べてみると、2006年11月になってようやっと登録されたことが判明した。4月から11月までの7カ月も待たされ、Google中国と間違える電話が頻繁に来ることから、権利侵害としてGoogle中国に名称変更を求めて提訴したものだ。
Google中国は、中国メディアの記者の質問に対して、「相手企業の意図するところはわかりかねるが、中国におけるあらゆるGoogle中国の登録は合法だ」とコメントしている。
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山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2007/07/03)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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