本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)を毎月ピックアップ。中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、幅広い話題をレポートしていきます。
■人気の一方、海賊版配布で問題視される動画共有サイト
11月を振り返ってみると、動画サイトの話題が多かった。
11月15日、百度と北京大学が共同で設立した中国人検索行為研究センターが2007年動画検索業研究レポートを発表。それによると、動画検索の数は年々上昇しており、中国のインターネット利用者はアダルトコンテンツやテレビドラマなどが主に人気であるという。そこでは土豆網というサイトが最も人気の動画サイトと評したが、この発表日と同じくする11月15日、百度は動画配信サイト「百度影視(http://v.baidu.com/)」を立ち上げた。
一方で、上記の研究レポートの中で登場した中国最大級の動画共有サイトの土豆網と、それに中国最大級のP2Pダウンロードサイトの迅雷が、夸克電影網というサイトに海賊版コンテンツ配布しているとして提訴された。夸克電影網は、同社が正式に映画「太陽照常昇起(SUN ALSO RISES)」のオンライン配信権を得ているが、迅雷と土豆網は海賊版を配布したため、合法な権益が損なわれたとし、迅雷と土豆網に該当ファイルの削除を訴えた。
土豆網と迅雷はその規模から、動画共有とP2Pダウンロードでそれぞれ強い影響力がある。これらのサイトが海賊版問題で戦い負けるならば、中国の動画共有サイトやダウンロードサイトのあり方が問われる、と中国メディアは分析している。
またサイトではないが、11月中旬には、夸克電影網と同様にコンテンツ配信の権利を所有する企業である広東中凱文化発展有限公司が、広東省のネットカフェ2店舗を相手に、ネットカフェ店舗が海賊版コンテンツをダウンロードし店内でそのコンテンツを配信しているとし提訴した裁判で、裁判所の南海法院は2店舗に対して、それぞれ28,860元(43万円超)と67,720元(100万円超)の支払いを命じた。
海賊版動画の話題をもうひとつ。11月27日に中国最大級のオンラインによる海賊版動画コンテンツの犯罪が明るみとなった。その犯罪とは、2000年より犯人3人が得た海賊版を版権を取得した正規版と称し、電信企業や映画配信企業やネット企業など100社に販売、今までに1,600万元(約2億4,000万円)超を不法に売り上げたというもの。これには中国のコンテンツホルダーだけでなく、米国映画協会や韓国SBSも協力したことで、犯人の販売するコンテンツは、中国のコンテンツだけでなく海外のコンテンツに関しても未許可であることが明らかになったという。
動画サイトが人気となっている現実が垣間見れる一方、海賊版コンテンツを配信している業者に対して裁判を通して圧力をかけることで、1社に対してだけでなく、対業界に訴えることができる、と捉えられよう。
■Alibaba.comなど著名ネット企業が続々と上場
先月のキングソフト(金山軟件)に引き続き、今月も日本にも進出する企業の上場が続いた。
11月6日に中国で最大級のB2Bサイトとして、また日本にも進出していることで知られるAlibaba.comが香港証券取引所に上場した。中国では老舗かつ著名サイトとあって、Alibaba.comの上場は今年の中国ネット企業の上場の中では最大級のインパクトであり、IPOによる融資額も最大のものとなった。ちなみにAlibaba.comはアリババグループの子会社であり、アリババグループにソフトバンクが投資している。
また11月1日には、オンラインゲームを手がける巨人網絡がニューヨーク証券取引所に上場。この上場により、今まで中国でNo.1のオンラインゲームベンダーであった盛大網絡を抜き、中国でトップのオンラインゲームベンダーとなった。
■Google中国、内陸部にも営業・開発拠点を開設【11月8日】
中国における検索サイトのシェアでは、利用実態においても広告売上においても、百度がGoogle中国を大きくリードしている。
広告売上については、百度が中国全土で営業を展開しているのに対して、Google中国は現状沿岸部に対して重点的な営業を行なうに止まっており、これが差が開く原因のひとつとなっている。こうした状況を踏まえ、Google中国は11月8日、内陸進出に意欲を燃やすコメントを発表した。
Google中国は、売上を伸ばすため、中国内陸の中心となる四川省成都市に拠点を開設。中国移動(ChinaMobile)と提携し、中国市場向けの携帯電話プラットフォーム「Android」を共同開発していると発表した。また、中国は数年以内に3Gへの切り替えが見込まれるが、その際に中国語版Androidが必要となってくるだろうとコメント。3G普及をにらんで市場投入することを示唆した。
一方、ライバルの百度はその翌日となる11月9日に、CEOの李彦宏氏が「講演で招かれた香港科技大学にて、海外で活躍する有能な中国人技術者を百度に呼び戻すシステムを作る」とコメントしている。
■セカンドライフ、中国へ進出【11月13日】
セカンドライフが中国進出を発表した。リンデンラボと香港のRTM Asia社の提携による企業が、北京で中国におけるリンデンラボの代わりとなる事務所を設立する。
中国メディアでは、中国においては中国版セカンドライフことHiPiHi(ハイピーハイ)など多数のメタバースが存在することを指摘し、競争が激化していると報道した。
■広東省政府、違法ネットカフェ調査に乗り出す【11月18日】
広東省政府は「違法ネットカフェの最近の取り締まり効果の調査レポート」を広東省の各教育部門に配布した。調査レポートでは、近年未成年の犯罪率は上昇しており、これは違法なネットカフェと大きく関係があるとしている。2004年より違法ネットカフェの取締りを開始し、2005年には広州市のある区では168店を取り締まったという事例を紹介する一方、取り締まりきれていない現状の問題を指摘した。
また、レポートの中では、ある取締りにおいて政府関係者がネットカフェに調査に入ろうとするも、その店のガードマンが入店させないようするなど調査が容易でない事例なども紹介されている。
■韓国大使館、中国で韓国製ゲームが不人気な点についてコメント【11月19日】
在中国韓国大使館はこの日、一度は中国のオンラインゲーム市場のシェアのほとんどを握った韓国製オンラインゲームだが、その後シェアが縮小。現在は10%程度のシェアしか得ていないと発表した。
シェアが縮小した原因として、在中国大使館では、中国企業の模倣に対する対策が不十分だったこと、新製品の開発がスピーディでなかったこと、中国企業との提携におけるトラブルなどを挙げている。
■Google中国、脱税疑惑で北京税務署が調査【11月20日】
Google中国が脱税しているとして、北京市地税局がGoogle中国の調査を行なっている、と中国各メディアが報じた。これらの報道内容が事実であれば、中国のインターネット企業では最大規模の脱税事件に発展することになる。
脱税問題は、関係者の通報により明らかになったもの。報道によれば、通報人は「2005年より不正な領収書の発行があった」と述べているという。
一方、Google中国の広報はこの件に関して「このような話は根拠がなく、北京市税務署から調査の連絡も来ていない。Googleは中国における活動開始以来常に法律を遵守している。報道されているような問題はない」とコメントしている。
現在までのところ、その後を報じるニュースは出てきていないが、事実であれば大規模の脱税問題になるため、中国では引き続き関心を集めているようだ。
■「中国人はアメリカ人よりもネット依存度が高い」という調査結果【11月23日】
米国InterActiveCorp(IAC)の調査で、中国のインターネット利用者は米国のインターネット利用者と比べて、よりインターネットに依存していることが判明した。
具体的には、中国のインターネット利用者の25%が「1日以上インターネットをしないと我慢できない」とし、42%が「ネット依存症と自ら認識している」とし、また、77%が「インターネットは社交的に役立つ」と考えているという結果が出た。これらの数字はそれぞれ米国のインターネット利用者の数字を大きく上回った。
また、「オフラインではいえないことも、ネット上では自由に言いたいことを言える」と思う人は、米国人では32%に止まるのに対して、中国人では73%に上った。
■中国最大のポータルサイトが落ちるも「短い時間だから大丈夫」【11月26日】
中国最大のポータルサイトの新浪網新浪網(Sina)がこの日の午前11時前に落ち、一時サイトが閲覧できなくなった。中国メディアの毎日経済新聞は、「新浪網の全てのページが表示できなくなった」とその時点での状況をレポートした。しかし、サイトが落ちた数分後には復旧。正常にページを表示することができるようになった。
新浪網はこの原因について「これはハッカーの攻撃ではなく、ほかの原因によるもの。中国電信(日本でいえばNTTにあたる)のマシンルームで異常が発生し、テストのために一度システムを落とした」とし、また「サイトが落ちた時間は長い時間ではなく、たかだか数分なので、影響は大きくない」とコメントしている。
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山谷剛史の海外レポート
http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/index.htm
中国のネット人口は1億2,300万人、回線はADSLが主流に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/21/12742.html
ワールドカップで盛り上がった中国インターネット
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html
(2007/12/06)
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山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。
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