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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
2008年2月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)を毎月ピックアップ。中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、幅広い話題をレポートしていきます。


動画共有サイト規制法施行後も著作権侵害コンテンツが横行

 1月31日、「動画共有サイトは国営企業が運営すべし」とした動画共有サイト規制法こと「互聯網視听節目服務管理規定」が施行された。

 施行後はどう変わるのかと、中国メディアも利用者も固唾を飲んで見守っていたのだが、施行されてから1カ月、私営企業が運営する人気の動画共有サイトYooku(優酷、このサービスに関する記事はこちら)などが取り締まりを受けることもなく、施行前と同様の状態で、運営を続けている。

 これに関してYuukuのCEO古永鏘氏は、「確かによろしくないコンテンツもアップされているが、弊社は自律的なコンテンツ管理を行なっている。政府によって規制されるサイトは中小の動画配信サイトに限られるのではないか」とコメント。また、別メディアに対して「2008年は動画ビジネス元年になる」というコメントもしている。

 施行日の施行から数日、多くのニュースサイトが、Yuukuをはじめとした動画サイトが“存続していること”をニュースとして報じた。そんな中、この法案を発案した中国信息産業部とテレビコンテンツなどの管理を行なう広電総局が、この法案の目的についての説明を発表した。

 発表文では、法施行の目的について「よろしくないコンテンツを規制したいという多数の人々の総意であり、中国の特殊なインターネット環境を発展するため(筆者注:ここでいう特殊なインターネット環境とは、意訳すれば中国政府がコントロールできる環境のことを指す)」、「違法行為を行なわなければ引き続き運営は可能だ」としている。

 また「動画サイトに動画コンテンツをアップロードするためには、広電総局と著作権所有者の許可が必要である」とも述べられている。

 しかし、現在までのところ、日本のコンテンツについても、アニメコンテンツを中心に引き続きアップロードされている状態が続いている。



人気のP2Pサイト「迅雷」、海賊版コンテンツ配信で裁判沙汰に

 中国ではP2Pによるダウンロードが、コンテンツの合法違法問わず人気となっている。その中でも最も人気のサービス「迅雷」が、中国国内外のコンテンツホルダーと裁判沙汰となった。

 2月6日、映画「傷城」の著作権を所有する中国企業の優度が、迅雷を同映画の無許可配信で経済的損失15万元(225万円)の賠償を求めて提訴した裁判で、上海浦東人民法院は優度の訴えを認め、賠償要求額満額の支払いを迅雷に命じた。

 このほか2月には、米国映画協会が「スパイダーマン3」など多数の未許可映画作品が迅雷上にアップロードされているとして、迅雷を上海の裁判所に提訴。こちらは700万元(約1億500万円)の損害賠償を求めている。


香港の有名タレントの秘蔵画像・動画流出で個人情報漏洩に意識

 香港の俳優エディソン・チャン(陳冠希)と、彼と交際するセシリア・チャン(張柏芝)ら女性トップアイドル数人のプライベート画像および動画が大量に流出。一般の新聞でも事件が取り上げられるほど大きな騒ぎとなった。ただし、原因はファイル交換ソフトなどではなく、エディソン・チャンが修理に出したPCから不法に削除ファイルをサルベージした犯人が流出させたものだという。

 中国では、香港や台湾の芸能人は本土の芸能人以上によく知られている。このため、芸能ゴシップネタとして今もなお大きな話題になっている。動画共有サイトでは、報道されたニュースがアップロードされ、多数のブログでトップアイドルのヌード写真がアップされた。もっとも、ブログなどに掲載されたスチル画像については、現在ではそのほとんどが削除されている。

 この事件の結果、個人の情報漏洩対策の意識が自然と向上したようだ。このニュースの影響で、プライベートなファイルをPC内蔵のHDDから退避するため、2.5インチの外付けHDDが電脳街では飛ぶように売れているというニュースも報じられた。


Google中国、春節の民族大移動に向けたサービスを期間限定投入

 2月、中国を含む中華圏の国々は旧正月こと春節を迎えた。このとき中国では、50年ぶりとも言われる大雪により、交通機関に大きな影響を及ぼしたものの、例年のように多くの中国人が帰郷した。

 春節前後の民族大移動を前に、Google中国は、春節の最新交通情報を提供する「春運交通図」を期間限定でリリースした。具体的には各都市の最新の天気情報や、道路状況、それに各飛行機や鉄道の切符の残り残数などが表示される。

 中国市場では、シェアトップの百度とのシェア争いが激しく、Google中国はシェア拡大のために中国市場に特化したサービスを投入している。「春運交通図」の他にも、Googleがレーベル会社より許可を受けたコンテンツを扱う合法的なmp3ダウンロードサービスを予定していることが、2月13日付けの第一経済日報で報じられている。


百度、チャット人気の中国でチャットソフトをまもなく投入

 中国においてチャットサービスは、メール以上に重要なコミュニケーションツールとなっている。ベンダー別シェアでは「QQ」という中国産インスタントメッセンジャーが2億9,000万のアクティブアカウントを抱え、一人勝ちの状態だ。この独占市場に、百度がインスタントメッセンジャー「百度Hi」を投入、新規参入することが判明して話題となっている。

 百度Hiは、2007年から開発をスタート、2月末の時点でテスト段階に来ているという。百度は「百度Hi」を特に重要な戦略的サービスと位置付けている。

 百度が中国の1企業がほぼ独占するインターネットサービスに参入し話題となったのは、今回したチャット事業参入だけではない。2007末には淘宝網がほぼ一人勝ち状態のオンラインショッピング市場(C2C)への参入を表明、大きな話題となった。


中国最大のポータルサイト「新浪」がバーチャルトレード開始

 中国最大のポータルサイト「新浪(Sina)」が、オンライントレードを仮想体験できるバーチャルトレードサービスを開始した。このバーチャルトレードでは、自己資金100万元強(1,500万円)の仮想資金を元手にスタートする。

 2007年、上海指数は2倍近くあがり、(リアルマネーで取引する)オンライントレーディングは、中年の社会人を中心に新たなインターネット利用者増加の引き金となっている。オンライントレーディング市場はまだまだ拡大途上にあり、大手ポータル「新浪」のサービス導入をきっかけに、さらに多くのインターネット利用者がオンライントレーディングの利用を開始すると見られている。


バレンタインデーに花やプレゼントがネットでバカ売れ

 中国のオンラインショッピングサイトでは、2月は旧正月こと春節のほか、バレンタインデーもまた商戦機となる。中国のバレンタインデーには、女性から男性にチョコレートを贈るということもあるが、むしろ男性から女性に花や、アクセサリ類や、化粧品や、服、それにデジタル製品をプレゼントする方がメジャーだ。

 中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網」では、バレンタインデーを前にそれに向けたプレゼントが多数売られ、中でも花、特にバラが人気となっている。バレンタインデー前に、淘宝網で花(鮮花)をキーワードに検索すると、96万件がヒット。うち20万件が薔薇だった。

 淘宝網によると、2月の第1週以降、毎日6,000束の薔薇の花束が同サイトで購入されたという。1束平均10本の薔薇が使われているとすれば、単純計算で1日に6万本、1週間に42万本ものバラの花がオンラインで取引されたことになる。


中国公安、オリンピック閉幕までWeb上の隠し撮り画像取締り

 中国公安部は、今年の1月から9月まで、Web上にアップロードされている隠し撮り画像を取り締まると発表した。特に動画共有サイトやブログを中心に、動画、映像、文章問わずポルノコンテンツについて重点的に取り締まる、としている。また、中国ではよく見られる、ポップアップ広告として意図せず表示されるアダルトショップ広告についても粛清するとしている。


報道賞を受賞したコラージュ画像、政府系サイトが急遽削除

 内陸の青海省とチベットのラサを繋ぐ青蔵鉄道と併走するチベットカモシカを写した写真を「記憶に残る報道写真賞」として、CCTV(日本でいえばNHKにあたる)が受賞したが、これがコラージュ画像であることが2月に判明した。コラージュ写真といえば、2007年末に発表された、絶滅したと噂される華南虎の写真がコラージュだったとして、陝西省林業庁が謝罪を行なったのも記憶に新しいところだ。

 表彰作品がコラージュであったことを受け、新華社、人民図片網、中国新聞図片網など政府系の5サイトは「客観的に捏造画像を提供することは、多くの読者に対して申し訳ない」とし、「該当写真の捏造問題に関する連合の声明」を発表。5サイト内のこれを撮影したカメラマンの写真をすべて削除した。


オンラインショッピング最大手「淘宝網」、携帯向けβサービス

 急激に利用者が急増している個人対個人のオンラインショッピング。オンラインショッピングサイトの淘宝網( http://www.taobao.com )が、携帯電話向けのベータサービスを開始した。PC向けサイトと同様に、商品の捜索から商品数点の比較、購入まで行なうことが可能だ。

 中国では携帯電話でのインターネットの利用というとWAPが一般的で、ほとんどの携帯電話からWAPが利用できる。しかし、携帯電話利用者が5億人、インターネット利用者が2億人を超す中国において、WAP利用者は数千万人程度しかいない。オンラインショッピング、こと淘宝網は、一部のインターネット利用者になくてはならないサイトとなっており、これをきっかけとしてWAP利用者が急増するかもしれない。



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  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2006/07/19/12688.html

(2008/03/12)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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