独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は27日、報道関係者向けの記者会見を開催し、同日発表となった「国内・海外におけるコンピュータウイルス被害状況調査」について、IPAセキュリティセンター長の早貸淳子氏が解説した。
調査対象は、国内が663事業所と465自治体の計1,128件、海外が米国594件、ドイツ501件、韓国504件、台湾507件、オーストラリア503件だった。業種別では、自治体・公共団体が42.1%、製造業16.8%、サービス業11.7%と続く。従業員規模は、100~299名が26.8%、500名以上が21.2%、10~49名が19.3%だった。
● 日本はアウトソースが進み遭遇率減少、韓国はウイルス感染率が50%を超える
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IPAセキュリティセンター長の早貸淳子氏
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ウイルスに対する遭遇経験では、国内調査では「遭遇経験あり」が70.0%だった。これは、2001年の74.8%や2002年の80.3%と比較して減少している。この点について早貸氏は、「ウイルス総数自体はさほど変化していないはずなので、恐らくウイルス対策のアウトソーシングが進み、業務中にウイルスを発見する機会が減少したからだろう」と推測した。
一方、海外におけるウイルス遭遇経験では、米国が遭遇率84%と最も高く、次いで日本69.6%、韓国64.4%と続いた。特徴的なのは韓国で、遭遇率は64.4%だが“実際に感染した”と回答したユーザーが50.2%もおり、遭遇したユーザーの約78%が感染していることがわかる。
● ウイルス対策ソフトは米国とオーストラリアが80%超、その他は60%程度
ウイルスの感染経路はメール経由での感染が一番多く、米国やドイツ、台湾、オーストラリアなどでは約60%だった。特徴的なのは韓国で、メールによる感染が41.1%、次いでインターネット接続によるものが40.2%と多く、他国を大きく上回っていた。また、日本は外部メディアや持込PCによる感染が15.8%で他国を大きく上回った。この点については、「韓国はブロードバンド先進国であるため、このようにWebサイト経由などでの感染も多いのだろう。日本はメール対策がいるものの、持込PCで感染するなど、脇が甘い部分が目立つ(早貸氏)」と解説している。
また、ウイルス対策ソフトの導入状況では、米国が88.9%のユーザーが「9割以上のPCに導入済」と回答しており、続いてオーストラリアの83.8%、日本の70.4%だった。一方、最も少ないのは台湾で56.2%、ドイツの60.5%だった。
● 国内のウイルスによる被害額は約3,025億円
IPAでは、国内外のウイルス届出状況以外に、国内のみだが「ウイルス被害額推計」も実施しており、今回は663事業所から回答を得ている。このアンケート結果などを参考にした上で同機構では、国内のウイルスによる被害額を推計している。
被害額の算出モデルは、システムの停止時間や復旧作業コストなどの表面化している1次的被害額と、補償や補填、損害賠償などの2次的被害に分けられており、さらに表面化しているものと、システム停止による業務効率低下などの“潜在的な被害”を含めたものとなっている。今回の算出モデルでは、1次的被害額のうち、表面化と潜在化被害を合わせたものから推計したとしている。
この推計によると、2003年の国内におけるウイルスの被害総額は約3,025億円となり、2002年の4,400億円から大きく減少した。この点について、早貸氏は「今回大きく被害額が減少したのは、Blaster発生後に企業が対策を推進したことが大きいだろう。しかし、セキュリティ対策を施していても3,000億円の被害が出ていると考えると、まだまだセキュリティ対策を改善する余地はあるだろう」とコメントした。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.ipa.go.jp/security/fy15/reports/virus-survey/
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( 大津 心 )
2004/04/27 19:44
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