インターネット上の掲示板などにおける名誉毀損やプライバシー侵害に対して、法務省の人権擁護機関がプロバイダーなどに対して情報の削除依頼を行なった件数が、2004年10月から2005年9月までの1年間で18件あったことが明らかになった。テレコムサービス協会、電気通信事業者協会、日本インターネットプロバイダー協会の3団体で構成する「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が13日に発表した。
同協議会は2004年10月、「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」を一部改訂。インターネット上の人権侵害行為について、法務省の人権擁護機関がプロバイダーに対して削除依頼を行なう場合の判断条件や書式、プロバイダー側における削除依頼に対する対応プロセスを新たに明確化していた。
それまでは、被害者本人から削除依頼があった場合の対応プロセスについては指針が示されていた。しかし、少年事件の加害者の情報がインターネット上で公開されるなど、人権侵害の被害者本人がプロバイダーに削除を依頼することが困難な事例などが増加。法務省からの削除依頼に対しても、迅速に対応することが求められるようになったことが背景にある。
今回、改訂後の1年間におけるガイドラインの運用状況がとりまとめられたかたちになる。これによれば、ガイドラインに基づいて法務省の人権擁護機関から削除依頼を行なった案件はプライバシー侵害が6件。いずれも直ちに削除され、依頼の過程で法務省側が困難を感じることはなかったという。
具体的には、少年事件の加害者の氏名や写真などがWebサイトに記載されていた事案(2004年10月、2005年8月)では、プロバイダー4社とWebサイト開設者1名に対してそれぞれ削除を依頼した。また、掲示板に一般私人の氏名と電話番号が掲載されたことで、不特定の者から同人を中傷する電話がかけられ、自ら削除依頼を行なうことができない程度に事態が切迫していた事案(2005年2月)で、プロバイダー1社に削除を依頼した。
ただし、法務省の人権擁護機関が1年間で行なった削除依頼の総数は18件であり、ガイドラインに基づいた削除依頼措置はその3分の1にとどまっている。削除依頼書の送付先が判明しないために、そのプロバイダーが指定する掲示板上で依頼するという方法によらざるを得ないのが主な原因だとしている。
なお、法務省の人権擁護機関が同期間に受理したインターネットによる人権侵害案件は、名誉毀損が104件、プライバシー侵害が88件、その他(差別助長行為など)が45件の計237件だった。
また、受理した案件に対する法務省の対応は、被害者本人からプロバイダーなどに削除依頼を行なうよう同省が「援助」した案件が215件、法務省側から直接プロバイダーなどに削除を「要請」した案件が21件、その他(調査の結果、権利侵害性が認められない場合や、権利侵害性の認定が難しい事案)が15件だった(受理から処理まで時間がかかる場合もあるため、同期間中の受理件数と処理件数の合計は一致しない)。
関連情報
■URL
ニュースリリース
http://www.telesa.or.jp/consortium/provider/2005/20051213.htm
関連記事:法務省他、長崎男児誘拐殺人事件の書き込みに対し2ちゃんねるに削除要請
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0710/naga.htm
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( 永沢 茂 )
2005/12/15 19:23
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