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「見逃した番組を見られる」ファイル交換ソフトを使う大きな理由の1つに

“セキュアなP2P”によるコンテンツ流通に期待~ACCSの久保田専務理事

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)などがとりまとめた「2006年ファイル交換ソフト利用実態調査」の結果によると、その利用理由・目的として多く挙げられたのは、やはり無料で楽曲やソフトが手に入るというものだった。その一方で、希少なコンテンツが入手できるからと回答したユーザーも目立ったほか、映像コンテンツにおいては「見逃したテレビ番組をダウンロードできる」との回答が最も多かった。


音楽は「無料だから」、映像は「見逃した番組を見られるから」

 調査は、ACCSと日本レコード協会、日本音楽著作権協会、日本国際映画著作権協会、NHKおよび在京キー局5社が連名で7月に発表したもの。ファイル交換ソフト利用者2,235人(現在利用者645人、過去利用者1,590人)に、ファイル交換ソフトを利用する理由・目的について尋ねている。

 その結果、音楽関連ファイルで最も多かったのは「無料なら聴いてもよい楽曲がダウンロードできる」が33.8%で、次いで「購入したいと思っていた楽曲を無料でダウンロードできる」が22.1%。やはり“無料”という側面が大きいようだが、「希少な楽曲や珍しい楽曲がダウンロードできる」が20.2%で3位に入っており、これらが3大理由となっている。

 以下、「CD購入前に試聴をする」(15.6%)、「CD店に行かなくても聴きたい楽曲がダウンロードできる」(15.2%)、「レンタル店で借りる代わりに聴きたい楽曲がダウンロードできる」(10.4%)、「好きなアーティストやジャンルのコレクションがしやすい」(8.5%)、「アップロードされている楽曲の種類・ジャンルが豊富」(7.5%)など、利便性などに関する理由が続いている。

 一方、映像関連ファイルでは、無料という側面よりも希少性や流通面、利便性に関連する理由が強いようだ。トップは「見逃したテレビ番組をダウンロードできる」(14.9%)で、これに「レンタル店やDVD店に行かなくても観たい映像がダウンロードできる」(12.6%)、「過去のテレビシリーズやCMなど、希少な映像や珍しい映像がダウンロードできる」(11.3%)が続く。

 これと差はわずかながら、「購入したいと思っていた映像を無料でダウンロードできる」は、「販売していない映像がダウンロードできる」と同率(10.6%)で4位だった。特にトップの「見逃したテレビ番組」は、現在利用者においては21.4%に上り、過去利用者の12.2%に比べてより大きな要因になっていると指摘している。




 このほか、ソフトウェアの場合は、「特に使いたいとは思わないが、無料なら使ってみたいソフトウェアがダウンロードできる」(8.0%)、「購入したいと思っていたソフトウェアを無料でダウンロードできる」(5.9%)、「希少な珍しいソフトウェアがダウンロードできる」(3.4%)が上位3つで、“無料”が強い。

 また、その他のファイルでは、「無料で画像や文書をダウンロードできる」(11.9%)、「希少な珍しい画像や文書をダウンロードできる」(9.6%)が2大理由。なお、「自分の作品を他の人にダウンロードしてもらいたい」(0.5%)、「自分の楽曲・映像ソフトを他の人にダウンロードしてもらいたい」(0.3%)は、8項目中の7位と8位で少なかった。


著作権侵害の問題は、著作権法だけの問題ではない

ACCS専務理事の久保田裕氏
 この調査結果に関してACCS専務理事の久保田裕氏も、利用理由として、やはり無料が多く挙げられる一方で、「見逃したテレビ番組」が多く挙げられたことは印象に残っているという。久保田氏はもちろん著作権を守ることを訴える立場にあるが、「便利なソフトがあって、どうしても見たい見逃した番組が手に入るとなると、人間としては非常に弱いところ」と述べる。「例えば、次のステップとしてセキュアなP2Pによって、そこにアクセスすればいつでも課金と連動して見られるというかたちになってくると、セキュリティに問題のある従来のファイル交換ソフトをあえて使うような行為は減少すると読んでいる。多くの人が見れば、(コンテンツの)値段も比較的リーズナブルになる」。

 久保田氏の言う“セキュアなP2P”とは、個人情報漏洩やウイルス感染といったセキュリティ上の問題への対応もあるだろうが、著作権保護のためのファイル管理機能などを備えた仕組みを指しているようだ。

 さらに、今回の実態調査ですでに公表されているように、ファイル交換ソフトの利用を止めた理由として、今年は「セキュリティ・ウイルスなどが心配」(46.2%)が圧倒的に多かったものの、「著作権侵害などの問題がある」(26.4%)が2位に入っている。久保田氏は、著作権侵害の問題についても「きちんと説明すれば、多くの人は理解してもらえるはず」と見ているが、それでもファイル交換するということになれば「別の利益の話になる」と述べる。例えば、どうしても欲しい情報が正規の流通では手に入らないといった理由でファイル交換ソフトが使われるのであれば、局面は変わるという。

 「絶版になった本など、人類共有のナレッジ資産にアクセスしたいけどできないということであれば、別の手立てで解決していくことになる。それは、著作権法の問題ではないかもしれない。文化や国のアイデンティティの問題として、国が税金を使ってでもやるべきことかもしれない。そういう発想に転化していかないと、すべての問題を著作権が背負ってしまうことになる。『著作権があるから、(ナレッジ資産を共有することが)できない』と言われることは避けたい。」

 このような考えもあり久保田氏は、セキュアなP2P技術にも注目している。「セキュアなP2P技術を使って著作物の正規の流通を促進し、なおかつ課金と連動できればありがたいし、ACCSはそういう技術の推進も支援したい」。例えば、「Winny」の作者である金子勇氏が開発に参画したP2Pコンテンツ配信システム「SkeedCast」のような技術が本当に“セキュアなP2P”かどうか評価するためには、検証や実態調査に慎重にならざるをえないとしているが、久保田氏は「それが“セキュア”であるならば、応援していきたい」としている。


関連情報

URL
  2006年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要(PDF)
  http://www2.accsjp.or.jp/news/pdf/p2psurvey2006.pdf

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( 永沢 茂 )
2006/08/30 15:01

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