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KDDI、移動体通信が増収増益。固定通信も赤字改善で黒字化を見込む


 KDDIは25日、2007年3月期3四半期(10月~12月)の決算を発表した。連結ベースでは移動通信事業が好調のために売上高、営業利益ともに前年同期比から増加。また、固定通信事業でもメタルプラスの赤字が改善され、2008年第3四半期には黒字化を達成できる見込みとした。


移動体通信は引き続き好調。第3四半期の純増はNO.1に

KDDIの小野寺正社長兼会長
 第3四半期の営業収益は8,576億3,500万円、営業利益は866億3,200万円、経常利益は922億9,400万円。第1四半期から第3四半期までの前年同期比では、売上高は前年同期比10.4%増の2兆4,624億7,000万円、営業利益は同22.7%増の3,160億9,300万円と、増収増益を達成した。

 事業の中では移動体通信の好調が続き、売上は第1四半期から第3四半期までの前年同期比で7.1%増の1兆9,760億2,900万円、営業利益は同12.1%増の3,358億6,600万円と増収増益。加入者数はauとツーカーを合わせた12月末の累計シェア28.7%に対し、第3四半期の純増シェアは73.3%と、純増No.1を達成。MNPに第3四半期の純増数は46.5万加入と、出だしは好調であり、auのWIN契約者も12月末で1,252万加入と着実に増加。ツーカーからauへの同番移行も第3四半期で31万、累計で177万と進捗しており、2008年3月末にサービスを終了するとした。

 MNPに関しては「利用率が予想より低かったが、解約率も前年同期比で0.11ポイント低下の1%と低かった」ことが好調の理由と説明。「MNPは一過性のものではなく、今後も続く制度」と断った上で、「コミッションの平均単価も前年同期と同水準の35,000円で抑えている」とした。


決算総括 移動体通信事業の概況

メタルプラスの収益は改善傾向に。2008年には黒字化の予定

固定通信事業の概況
 固定通信事業ではメタルプラスの拡販やパワードコムとの合併などにより、売上は第1四半期から第3四半期までの前年同期比で23.1%増収の5,363億5,100万円。営業利益の赤字幅も、前年同期の438億300万円から254億9,780万円と改善。メタルプラスの累計開通回線数は12月末で261万回線となり、回線数が増加したことで音声売上も好転につながっているとした。

 固定通信事業のうち、FTTH事業では東京電力との統合サービス「ひかりone」を2006年6月から開始し、2007年1月1日には東京電力のFTTH事業をKDDIに統合。12月時点での回線数はKDDIが22万、東京電力が34万の合計56万だが、東京電力の光ファイバ網を手に入れたことで光アクセス網の自前化を図り、需要に合わせた柔軟なエリア展開を実施。PLCへの取り組みといった施策も含め、首都圏ではFTTHシェア30%を目指すとした。

 FTTHを除く固定通信事業全体は、2008年第3四半期には黒字化の見込み。FTTHを含めた場合、1月1日付の東京電力のFTTH事業を含めても営業赤字は2006年3月期第3四半期が底となる見込みであり、固定通信事業全体でも成長が見込めるとした。

 なお、2007年3月期の業績見通しに関しては、移動体通信の好調がFTTH事業統合の影響を吸収したため、期初予想に対して増収・増益となる見通し。業績予想は期初予想に対し、売上高で370億円増の3兆3,300億円、営業利益で240億円増の3,420億円になるとした。営業利益の内訳は移動体通信事業が350億円の増収、固定通信事業がFTTH事業統合の影響を受けて90億円の減収となる。


メタルプラスは黒字化を見込む FTTH事業も積極的に取り組む

携帯電話のコミッション制度は「ビジネスモデルそのものを議論すべき」

auの販売コミッション
 小野寺正社長兼会長との質疑応答はMNPを中心とした移動体通信事業の話題に集中。MNP開始後の実感に関しては「MNPの障壁は退出の際の手数料2,100円と年間契約の2つ」と指摘。「手数料は永遠に続く問題だが、年間契約は契約が切れる3月でのMNP利用が最も多いのではないか。最大の商戦期である3月を見なければわからない」との考えを示した。

 Googleとの提携により導入したモバイル検索は、「額は明らかにできないが、広告収入は明らかに増えている」とコメント。「携帯電話の使われ方は固定に近づいており、公式サイトだけでなく一般サイトの情報も見たいというニーズが増えている」と導入の経緯を説明し、「auではPCサイトビューアーも提供しており、こうした流れはほぼ当初の予測通り」とした。

 コミッション料金を販売店に支払うことで携帯電話の価格を下げる方式に関しては、「諸外国では契約が1年または2年の期間で決められているが、日本では郵政相の時代から通信に契約期間を設けることができない」との違いを説明。また、端末の価格に関しても「諸外国は通信事業者が価格を設定しているために端末価格がほぼ同じだが、日本でそれをやると公正取引委員会から指摘を受ける」とした。

 こうした理由を踏まえて小野寺氏は、「端末や通信料金の安さだけを見る前に、今のビジネスモデルが正しいのかどうかを議論すべき」との考えを披露。「ワンセグがこれだけ急速に普及したのも我々が端末に搭載してきたから。理想論だけでは日本の携帯電話産業そのものがおかしくなる」と熱弁を振るった。

 また、端末の価格を月賦で徴収するソフトバンクモバイルの料金プランは「(通信事業者がコントロールするという意味で)ソフトバンクモバイルはうまいことをされた」との感想を示しながらも、「月賦だけでは端末価格がかなり高額になってしまう」と指摘。また、「月賦で買った人にとって、同じ端末が寿命時期に0円で販売されたのを見たらどう思うだろうか」との考えも示し、「制度上の問題もあるが、お客様の行動をどう見るのかも重要だ」とした。

 2007年から始まる携帯電話事業者の新規参入については「競争が起きるのは良いこと」とした上で、「今までも新規参入はあり、淘汰が進んで今の3社体勢になっているだけ。3社で競争しあったほうが国民経済には良いのでは」とコメント。「新規参入は既存事業者の設備と併設すればいい、とかんたんに言われているが、都心のビルなどではできるだけ設備を小さくしてけ面積を使わないよう工夫している」と説明。「土地に余裕のある田舎ならいいが、都心では簡単に併設できない。今から新規にアンテナを敷設するのは難しいのではないか」との考えを示した。


関連情報

URL
  KDDI投資家情報
  http://www.kddi.com/corporate/ir/index.html

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( 甲斐祐樹 )
2007/01/25 19:46

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