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内閣府、日テレ、はたけ氏らがLinden Lab設立者と意見交換


Linden Labのローズデール会長
 3D仮想空間「Second Life」を運営する米Linden Labの設立者であるフィリップ・ローズデール会長の来日記念ラウンドテーブルが30日に開催された。国内でSecond Life関連の事業を展開する企業や、Second Lifeを活用する政府・教育機関の関係者らが集まり、ローズデール会長と意見交換を行なった。

 ラウンドテーブルの冒頭、ローズデール氏は、「これまでは、日本でSecond Lifeに対して何が起きているのか詳しいことがわからなかった。今回、日本へ来ていろいろと話を聞いて、日本でSecond Lifeを発展させていこうという動きを感じることができ、とても期待感を持っている。日本での発展をサポートするためにも、帰国してからさまざまな改良を行っていきたい」と挨拶した。


各社がSecond Lifeの取り組みを紹介

参加者一同
 ラウンドテーブルの参加者は、SUNの奥井宏太郎代表取締役副社長、メタバーズの島谷直芳代表取締役、内閣府の鳥巣英治参事官、アーティストのはたけ氏、慶應義塾大学理工学部生命情報学科の牛場潤一専任講師、日本テレビ技術統括局技術戦略センター技術開発部の安藤聖泰氏、マグスルの新谷卓也代表取締役。

 ラウンドテーブルでは、Second Lifeでの取り組みについて参加者がプレゼンテーションを行なった。SUNの奥井氏は、Second Life内のショッピングモールSIM「ToKyo ZERO番地」や専門フリーペーパー、携帯電話用のビューア開発などを説明。「誰でもSecond Lifeが見られるような技術開発と、コンテンツを軸にした展開を行なう」とした。

 メタバーズの島谷氏は、企業のSecond Life参入支援事業やSecond Lifeユーザー向けのブログサービス「SLMaMe(ソラマメ)」を紹介した。また、Second Lifeに対する要望としては、「物理的概念を無視したような、もっと自由な空間を作れるシステムにしてほしい」「外部サイトと連携できるAPIをもっと増やしてほしい」とコメントした。


内閣府は防災教育で、慶應義塾大学は医療・教育分野で活用

 内閣府の鳥巣氏は、防災予防・国際防災を担当しており、Second Lifeを活用した防災教育やイベントについて紹介した。災害被害を軽減するための国民運動において、正しい知識を魅力的なかたちで広めるために「良いコンテンツが重要」と説明。Second Lifeでは、自然災害をアバターで疑似体験できる教材を提供するほか、防災をテーマにしたオンラインイベントも実施したという。

 また、「今年は、防災の日のイベントでリアルとSecond Lifeを連携させた取り組みを行ないたい」とコメント。さらに、内閣府ではユーザー参加型の防災訓練・教育ツールをITの最新技術を用いて提供することも明らかにしており、鳥巣氏は、「Second Lifeをそのプラットフォームとして活用したい。具体的な施策は今後発表する」と述べた。これに対しローズデール氏は、「今後、Second Lifeの(物理)シミュレータを改良し、防災教育にも対応できるようにしたい」とコメントした。

 慶應義塾大学の牛場氏は、医療・教育分野でのSecond Life利用について紹介した。医療では、「肢体不自由な方をサポートするためにSecond Lifeを活用したい」として、脳波でアバターを操作できる「ブレインマシンインターフェイス」の実験を説明した。例えば、足を動かすイメージをするだけで、アバターの歩行が可能になるという。また、eラーニングでは、Second Life内の慶應義塾大学キャンパスを説明した。実際に学習で使用した際のアンケートから、「視覚的に他者を認識できるアバターは、他の受講者の存在を感じられる」とした。


防災教育での活用 慶應義塾大学の取り組み

日テレはSecond Life活用のテレビ番組を紹介

番組制作用の画面
 日本テレビの安藤氏は、Second Lifeを活用したテレビ番組「デジタルの根性」を説明した。日本テレビでは、視聴者との新しいコミュニケーションツールとしてSecond Lifeに注目しているという。「Webサイトの掲示板を使うと、荒らされる可能性が高かったが、アバターを使うとそれが極めて少ない。また、レギュラー出演者が遠隔地にいても番組が作れるし、視聴者も番組への参加が容易になった」とコメントした。このほか、アーティストのはたけ氏は、Second Life内での音楽活動について紹介した。「普段は会社員として生活しており、リアルではバンドを組めなかった人でも、Second Lifeではバンド活動が可能になった」など、いくつかの事例を挙げた。

 マグスルの新谷氏は、Second Lifeに注目して事業化するまでの背景を説明し、さらに、日本人にあった活用方法を試行錯誤してきた経緯を語った。「広告収益のオンラインゲームは、コンテンツを作ってもそれを消費するユーザーの速度が速いため、制作が間に合わず、飽きられていった。Second Lifeはコンテンツ制作をユーザーに任せたことで、Linden Labはそのコストが浮いた上、消費しきれないほどのコンテンツが生み出された。このモデルは成功すると思った」と分析する。

 コンテンツについては、日本人の性格を考慮したコミュニケーションスペースやSIMの配置、SIMの地図を使った広告などを紹介した。Second Lifeへの要望では、「デフォルトのアバターを綺麗にしてほしい」と述べた。これに対してローズデール氏は、「日本市場やユーザーの特性がよくわかった。アバターについても強化していきたい」とコメントした。


はたけ氏 マグスルのSecond Life専用アクセス解析画面

今後の課題はグラフィックやパフォーマンスなど

 最後にローズデール氏は、「日本は世界で4番目に多くSecond Lifeが使われている」と説明。順番は米国、ドイツ、イギリス、日本となり、ユーザーの数や利用時間から算出したものだという。「そういった意味でも日本のマーケティングは重要」とした。また、「現実世界にあるものをSecond Life内で再現する点において、日本は進んでいる」と話す。

 今後の課題としては、まず「グラフィックの向上」を挙げる。「日本はソフトが発達しているので、そこで補えるのではないか」とした。さらに、「パフォーマンスの向上」「ユーザービリティの改善」「日本でのサポート体制」を優先事項として挙げた。「今回の来日で、日本において、メタバースの分野でじつに多くのことが起きていいることがわかった。Linden Labでは技術やアプリケーションの開発に注力していきたい。それにより日本人のユーザーをもっと増やしていきたい」と締め括った。


ラウンドテーブルの風景。参会者はステージを扇状に囲んでプレゼンを聞いた 慶應義塾大学の学生が制作した3次元入力デバイス。指先の動きでアバターを操作可能

関連情報

URL
  Second Life日本語版
  http://jp.secondlife.com/

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( 野津 誠 )
2008/05/30 20:31

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