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“青少年ネット規制法”が成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど


 ネット上の有害情報から青少年を守ることを目的とした、いわゆる「青少年ネット規制法」(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)が、11日の参議院本会議で可決・成立した。法律は、公布日から1年以内の政令で定めた日から施行される。

 法律では、インターネット接続サービスを提供する携帯電話・PHS事業者に対して、利用者が18歳未満の青少年である場合には、保護者からの申し出がある場合を除いてフィルタリングサービスを適用することを義務付けている。また、保護者に対しても、使用者が青少年であることを携帯電話・PHSの契約時に申し出る義務があるとしている。

 このほか、ISPには利用者からの求めに応じてフィルタリングソフト・サービスを提供する義務、PCなどインターネットに接続する機器の製造者にはフィルタリングソフト・サービスの利用を容易にする措置を講じる義務をそれぞれ課している。ただし、これらの義務については、いずれも罰則は設けられていない。また、フィルタリングサービスの費用をユーザーと事業者のどちらが負担するのかといったことについても、法律では触れられていない。

 規制対象となる「青少年有害情報」については「青少年の健全な育成を著しく阻害するもの」と定義。有害情報の種類については、「犯罪もしくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、もしくは誘引し、また自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報」「人の性行為または性器などのわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させまたは刺激する情報」「殺人、処刑、虐待などの場面の凄惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報」の3点を例示している。

 法律では基本理念を「施策の推進は、民間における自主的かつ主体的な取り組みが大きな役割を担い、国および地方公共団体はこれを尊重することを旨として行なわれなければならない」としており、具体的にどのような内容の情報を「有害情報」とするかについては民間に任せる形となり、法律では例示にとどめている。また、フィルタリングソフト・サービスの調査研究機関や開発事業者などは、「フィルタリング推進機関」として総務大臣と経済産業大臣の登録を受けられるとしている。

 一方で、法律に対しては、6日に衆議院で法案が可決された後、日本新聞協会が「例示といえども、有害情報がいったん法律で規定されれば、事実上の情報規制を招く根拠ともなりかねない」「フィルタリング推進機関を国への『登録制』とすることについても、公的関与の余地を残す懸念がある」と懸念を表明。また、マイクロソフトやヤフーなど5社も、表現の自由への制約やフィルタリングの発展の阻害といった課題を挙げ、参議院では慎重な審議を求める共同声明を発表した。

 こうした点に配慮する形で、参議院では「フィルタリングの基準設定の内容によっては、表現や通信の自由を制限する恐れがあることを十分に認識し、その開発にあたっては事業者や事業者団体などの自主的な取り組みを尊重すること」「事業者などが行なう有害情報の判断、フィルタリングの基準設定に干渉することがないようにすること」といった付帯決議を行なっている。


関連情報

URL
  青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案
  http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16901030.htm

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( 三柳英樹 )
2008/06/11 19:20

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