携帯キャリア3社やマイクロソフト、ヤフー、楽天、ミクシィなどの通信・ネット関連企業をはじめ、PTA団体の代表や学識経験者らが発起人となり、任意団体の「『安心ネットづくり』促進協議会」を設立する。良好なインターネットの利用環境を民間主導で構築すること目的とし、1)総合的なリテラシー向上の推進、2)民間の自主的取り組みの推進、3)インターネット利用環境整備に関する知見の集約――という3点を柱として活動していく。2009年1月に設立し、4月から事業を開始する予定だ。
8日、発起人総会が開催された。発起人のメンバーは、KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長、NTTドコモの山田隆持代表取締役社長、ソフトバンクモバイルの孫正義代表取締役社長兼CEO、マイクロソフトの樋口泰行代表執行役社長、ヤフーの井上雅博代表取締役社長、楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長、ミクシィの笠原健治代表取締役社長、ディー・エヌ・エーの南場智子代表取締役社長、インターネットイニシアティブの鈴木幸一代表取締役社長、富士通の間塚道義代表取締役会長、東京海上日動火災保険の石原邦夫取締役会長、ベネッセコーポレーションの福島保代表取締役社長兼COO、全日本空輸の山元峯生代表取締役社長、日本PTA全国協議会の曽我邦彦会長、全国高等学校PTA連合会の高橋正夫会長、一橋大学名誉教授の堀部政男氏、慶應義塾大学教授の村井純氏、慶應義塾大学教授の金子郁容氏、東京都三鷹市長の清原慶子氏。世話人を、慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏が務める。
8日の発起人総会後、約1カ月の周知期間を経て、11月7日より会員の募集を開始。2009年1月中~下旬に設立総会を開催する予定だ。周知期間中の連絡先は融合研究所、11月7日と会員募集開始後はマルチメディア振興センター内に設立準備事務局を設置する。まずは会員150社程度の参加を目標としている。
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発起人総会後の記者会見には、携帯キャリア3社をはじめ、ヤフーやミクシィ、IIJなどのトップが顔をそろえた
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● 「自主憲章」を共有し、「国民運動」を展開
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記者会見の様子
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「安心ネットづくり」促進協議会の世話人を務める、慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏
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発起人総会後に開かれた記者会見で、世話人の中村伊知哉氏が協議会の概要を説明。産学による民間主導による取り組みであることともに、総合的な対策を推進することが協議会の特徴だと強調した。安心してインターネットを利用できるようにするための施策としては、これまでにも民間の取り組みがあったが、どれも対処療法的だったり、施策間の連携が不十分だったという。また、地域も偏っており、格差が懸念されるとした。
そこで協議会では、産学の自主的取り組みの「結節点」となり、これまで民間企業や教育機関、NPOなどによって個々に行われてきた取り組みを有機的に連携させていく。
2009年度の事業としては、1)総合的なリテラシー向上の推進を担当する「普及啓発委員会」、2)民間の自主的取り組みの推進を担当する「事業支援委員会」、3)インターネット利用環境整備に関する知見の集約を担当する「調査企画委員会」――という3つの委員会を設置して活動する。
普及啓発委員会では、「e-ネットキャラバン」などの地域における啓発活動を質的・面的に拡大するとともに、学生の参加やNPOとの連携を図る。また、インターネットを楽しく安心して使うことをテーマにした「e-ネット・マラソンシンポジウム(仮称)」を全国10カ所以上で開催する。
事業支援委員会では、ネット関連事業者や個人も含むサイト管理者の「自主憲章」を共有して、必要な対策をとることを宣言する国民運動「『e-ネットづくり!』宣言(仮称)」事業を展開する。また、サイト運営者によるセルフレーティングや、第三者機関によるレーティングの普及に向けた実証実験を行う。
調査企画委員会では、国内で行われているさまざまな啓発活動についての情報を収集・分類し、紹介するポータルサイトを開設する。また、機関誌「みらいネット(仮称)」を刊行して、活動紹介や政策提言を行う。
なお、違法・有害情報対策を推進するために総務省が年内にとりまとめる施策として「『安心ネットづくり』促進プログラム」があり、その中で、民間の自主的取り組みの促進やメディアリテラシーの向上が盛り込まれる予定だ。今回設立が発表された協議会は、名称から言っても、その取り組みを民間側で推進するための団体と言えるだろう。促進プログラムは、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の最終報告書として12月にとりまとめられる予定だが、同検討会内での検討結果として示されている「自主憲章」「国民運動」といった特徴的な言葉が、促進協議会の活動内容にも用いられている。
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「安心ネットづくり」促進協議会の2009年度の主要事業案
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「安心ネットづくり」促進協議会の今後の活動スケジュール案
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● 自治体やPTAも、民間による取り組みに期待
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(向かって左から)KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長、東京都三鷹市長の清原慶子氏、日本PTA全国協議会の曽我邦彦会長
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東京都三鷹市長の清原慶子氏は、「自治体においては青少年の健全育成施策や学校教育の中で、インターネットや携帯電話の適切な活用とともに、自殺サイトや学校裏サイトなど負の部分を子供たちが自主的に利用しないようにするという広い意味のリテラシーが求められいる。インターネットや携帯電話がこれからの暮らしに不可欠であるのならば、国などによる規制ではなく、それをいい意味で積極的に使っていくような両面の力を培っていきたいとして自治体でも努力をしている」と説明。従来も携帯電話や情報通信の企業とも連携してきたが、協議会により「国民的な運動で強めていただければ、地域に偏りなく自発的な取り組みができるのではないかと期待している」とした。
また、日本PTA全国協議会の曽我邦彦会長は、「全く標識のない高速道路の中を小学生に歩かせるのではなく、子供には子供の道路を歩いてもらえる環境を、ネット社会の中で構築してもらえればありがたい」と述べ、子供に安全なインターネット環境を民間で整えてもらう必要性を訴えた。従来は、個々の民間企業にそのような要望を伝える場がなく、国や市町村にお願いする以外になかったという。「このような場が早くできれば、と思っていた」とコメントした。
関連情報
■URL
「安心ネットづくり」促進協議会(融合研究所)
http://yougolab.jp/nsc/top.htm
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( 永沢 茂 )
2008/10/08 17:26
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