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第7回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会
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医薬品の通信販売規制などを定めた厚生労働省令について、再検討を行うための「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第7回会合が22日、開催された。
厚生労働省が打ち出した「薬局のない離島居住者」「薬の継続使用者」については2年間通信販売を認めるとする省令の再改正案については、これまでの会合と同様に多くの委員が反対を表明したが、検討会での議論は今回で打ち切られた。また、省令再改正案に対して実施されたパブリックコメントでも、「通信販売への規制自体に反対」という意見が全体の84.9%を占めたが、厚生労働省では省令の再改正を6月1日までに実施したいとしている。
● 反対意見が多数を占めるも、省令の再改正案はそのまま
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後藤氏が掲げた紙を巡って事務局ともめる一幕も
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検討会では、会議の開始前にテレビカメラなどの撮影時間を設けており、それ以外の時間の撮影を禁止している。日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏は、この撮影時間に「通販で薬が買えなくなるまであと9日9時間10分」と書かれた紙をテーブルの上に置いたが、事務局の厚生労働省は「会議前なので」としてこれを外すよう要請。また、楽天の三木谷浩史会長兼社長が、「今回の会合は何のために行われるのか。ここで議論したことは省令に盛り込まれる余地はあるのか。そのことだけでもカメラが入っているうちに答えていただきたい」と問い詰めたが、事務局がこれを拒否するなど、議事に入る前から対立する一幕もあった。
検討会では、事務局が省令の再改正案について説明を行ったが、内容は前回の会合で示されたものとほぼ同様で、「薬局のない離島居住者」「改正省令の施行前に購入した薬の継続使用者」に限り、2年間(2011年5月末まで)の経過措置として第2類医薬品の通信販売を認めるとしている。「継続使用者」については、「同一の業者から同一の薬を買う場合」のみ認めるとしているが、どのようにしてそのことを確認するのかといった点については、省令案では示されていない。
また、この再改正案に対して、6月12日~18日に実施された一般からの意見(パブリックコメント)募集の結果も公表された。パブリックコメントには9824件の意見が寄せられ、内訳としては「そもそも通信販売を規制すべきでない」という意見が84.9%と多数を占めた。一方、経過措置に賛成の意見は全体の0.5%、経過措置に反対の意見は11.7%にとどまった。また、経過措置の反対意見には、通販規制に賛成の立場からの「このような経過措置は不要だ」という意見と、通販規制に反対する立場からの「この経過措置では不十分だ」という意見が含まれている。
三木谷氏は「経過措置に賛成の意見は0.5%しかないが、省令の再改正案には変更がない。このパブリックコメントをどのように受け止めたのか」と質問したが、厚生労働省では「意見は厚生労働省として拝見した。パブリックコメントは数字ではなく、これまで気付かなかった点が無かったかを確認している」として、省令の再改正案に付け加えるべき項目は無かったと説明した。
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楽天の三木谷氏
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省令の再改正案に対しては、通販規制には賛成する側の委員からも「今回の薬事法改正の意義が失われる経過措置には反対。継続使用者の定義がきちんとされていないことも問題」(全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかり氏)という意見が挙がるなど、多くの委員が「反対」または「やむを得ない」という意見で、積極的な賛成意見は聞かれなかった。
また、後藤氏はこの検討会とは別に、医薬品の通信販売に関して議論する審議会の設置を求めたが、要望として確認されるのみにとどまった。
検討会の座長を努めた北里大学名誉教授の井村伸正氏は、「この場でコンセンサスを得ることは難しく、いくら議論をしても同じような意見が出てくるだけだろうと思う」として検討会での議論の打ち切りを提案。「省令案に対する検討会の意見としては、異なる立場からの反対意見や、やむを得ないという意見があったということを羅列させていただきたい」として、省令の再改正については厚生労働省の責任において行ってほしいと説明。検討会としての結論は出ないまま、厚生労働省に一任する形で検討会は終了した。
検討会終了後、会見を行った三木谷氏は、「まったく見せかけだけの経過措置。これでは困っている人の1%も救済されない」とコメント。「法律として決まったのならまだしも、このような規制を省令のレベルで決めていいのか」として、行政訴訟などについても検討していくと語った。
関連情報
■URL
第7回医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会の開催について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0522-3.html
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( 三柳英樹 )
2009/05/22 21:35
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