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医薬品のネット通販継続を求めて行政訴訟、ケンコーコムら2社


記者会見の模様
 ケンコーコムとウェルネットの2社は25日、医薬品のネット販売規制を定めた厚生労働省令に対して、医薬品のネット販売を行う権利の確認および省令の無効確認または取り消しを求める行政訴訟を提起したと発表した。

 同日行われた記者会見で、ケンコーコム代表取締役社長の後藤玄利氏は、「検討会も終了し、パブリックコメントも終わり、我々がこの省令を食い止める手段は、唯一、行政訴訟を起こすだけしか残っていない。司法の場に出ずとも、しっかり議論すれば行政は理不尽な結論を出さないはずだと信じて、今まで4年間、厚生労働省と折衝してきた。日本という国の政治・行政の良心を信じていただけに、非常に残念」と語り、医薬品ネット販売の継続を訴えた。


「営業の自由を侵害、官僚の横暴」と後藤氏

ケンコーコム代表取締役社長の後藤玄利氏
 今回の訴訟は、6月1日に改正薬事法が完全施行されることに伴い、厚生労働省が2月6日に公布した省令(薬事法施行規則)に対して、医薬品のネット販売を手がけるケンコーコムとウェルネットが省令の取り消しなどを求めて提起したもの。

 改正薬事法では、一般医薬品をリスクの高い順に「第1類」「第2類」「第3類」に分類し、それぞれのリスクに応じた販売方法や購入者への説明方法などを取ることとされている。この薬事法の細則を定める省令で「購入者への説明は対面で行うこと」が原則であるとされ、ネット販売を含む通信販売では対面での説明が行えないことから、通信販売で販売できる医薬品は最もリスクの低い「第3類」の医薬品に限るとされた。

 後藤氏はこの省令が「2つの点で致命的な問題を抱えた欠陥法令であると言わざるを得ない」として、省令の問題点を説明。「1つは憲法で保証された『営業の自由』を侵害していること。突然、厚生労働省がルールを変え、ネット販売ができなくなる。ケンコーコムは年間数億円の売り上げが吹っ飛んでしまう。ウェルネットは商売が続けられなくなるかもしれない」「2つ目は、厚生労働省が暴走して、ネット販売の規制を進めていること。改正薬事法には、第3類以外のネット販売を禁止することなど全く記載されていない。法律に書かれていない重大なルールを、厚生労働省が勝手に作る。こんな官僚の横暴がまかり通ったら、法治国家とは言えない」と語り、省令は憲法違反であると訴えた。

 また、後藤氏はこの省令を決めた当時の検討会にも参加を求めたが門前払いされ、省令公布後に舛添要一厚生労働大臣の指示により設置された再検討会には参加が認められたが、結論は出せないまま再検討会は5月22日に終了したと説明。厚生労働省では、「離島居住者」「薬の継続購入者」に限って、2年間通信販売を認めるとする経過措置を打ち出しているが、これも到底承服できるものではないとして、行政訴訟を提起するに至ったとした。

 ケンコーコムとウェルネットでは、省令について国を相手取り、25日午前中に東京地方裁判所に対して提訴。訴訟の内容は、1)6月1日の省令施行後も「第1類」「第2類」医薬品のネット販売を継続する権利があることを確認する訴え、2)ネット販売を禁止する部分の省令が無効であることを確認する訴え、3)ネット販売を禁止する部分の省令の取り消しを求める訴え――の3点となっている。

 訴訟に楽天やヤフーなどの事業者が参加していない点について後藤氏は、「販売当事者の権利を確認する訴訟」であるため、ショッピングモール事業者などは加わっていないと説明。6月1日の改正法施行後の対応については、「悪法といえど法は法。法に則ってしっかりと安全に販売していく」と語った。また、訴訟の結論が出るまでの期間については、「1年ぐらいはかかるのでは。我々としては早く結論を出してほしい」(訴訟代理人の阿部泰隆弁護士)という見通しを示した。


関連情報

URL
  ケンコーコム
  http://www.kenko.com/
  ウェルネット
  http://www.rakuten.co.jp/wellnet-bito/

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( 三柳英樹 )
2009/05/25 17:19

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