5分でわかるブロックチェーン講座

改正資金決済法の施行日が5月1日に決定、国内の暗号資産産業は次のフェーズへ

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

編集部より: 当連載は、3月末まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

1. 改正資金決済法の施行日が決定

暗号資産についての新たな法規制である改正資金決済法の施行日が、2020年5月1日に決まった。法案が可決された2019年5月時点では、来春、つまり2020年春を目処に施行予定とされていたため、今回の発表で正式に決まったことになる。

改正資金決済法は、元々、2017年4月に資金決済法を改正するかたちで生まれた法律だ。資金決済法の中に暗号資産に関する項目を追加した改正であったため、通称「仮想通貨法」とも呼ばれている。今回は、その改正資金決済法をさらに改正することで法案が可決された。

追加された項目のうち、大きく話題となったのが通称「カストディ規制」だ。これまで、ウォレットプロバイダのような顧客の資産を預かるだけのサービスを提供する場合には、暗号資産交換業の免許は必要なかった。しかし今回の改正により、顧客の資産をサービス提供者が自由に移動させることができる形態の場合には、暗号資産交換業の免許が必要となっている。これにより、暗号資産だけでなくスマートコントラクトや秘密鍵といったテクニカルな点も考慮しなければならなくなった。

なお、今回の発表は、日本政府の機関紙である官報を通して「仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(内閣府三五)」という名称の府令として、4月3日に出されている。官報では法律の施行に際して、「この政令は、情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律の施行の日(令和二年五月一日)から施行することとした」と背景を説明している。

参照ソース


    令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について
    [金融庁]
    仮想通貨交換業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(内閣府三五)
    [インターネット版官報]
    速報 仮想通貨に係る改正資金決済法は「5月1日」施行=内閣府機関紙
    [CoinPost]
    暗号資産に関する改正資金決済法は5月1日に施行予定
    [CryptoTimes]

2. 金融庁がパブリックコメントを公開

先述した改正資金決済法の施行に際し、金融庁は4月3日、「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等」と題したパブリックコメントの詳細を公開した。

通常、法案が可決され施行されるまでにはパブリックコメントと呼ばれる質疑応答の機会が設けられる。暗号資産業界の場合、テクノロジーの進展やサービスの拡大と現在進行形で規制が整備されていくため、多くのパブリックコメントが寄せられる傾向が特に強い。

今回も、172の個人および団体より延べ398件の意見が提出されたという。2017年4月に施行された改正資金決済法と比較しても、より具体性を帯びた項目が増えていることがわかる。官民が共同で産業を作り上げていく実感があるのも、暗号資産・ブロックチェーン業界の特徴だといえるだろう。

取引所を中心とする暗号資産サービス提供者にとっては、デリバティブおよび信用取引がレバレッジ最大2倍に引き下げられる点や、いわゆる板取引が存続できるかといった点が議論の焦点になっていた。

一方のブロックチェーン関連のサービス提供者にとっては、先述したカストディ規制の対象範囲に注目が集まっていた。カストディ規制に抵触すると、暗号資産交換業の免許を取得しなければならず、リソースをサービス開発に割くことができなくなってしまうためだ。従って、何をするとカストディになるのか具体的な意見が寄せられていた。今回のパブリックコメントにより、対象範囲が明確になったことは日本のブロックチェーン産業においても大きな一歩だといえるだろう。

参照ソース


    コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方
    [金融庁]
    速報 金融庁、仮想通貨規制に係るパブコメ回答を公開 レバレッジ規制等の重要内容まとめ
    [CoinPost]

バイナンスがCoinMarketCapの買収を正式に発表

3月31日に一部の海外メディアで報じられた、暗号資産取引所最大手のバイナンスによるCoinMarketCap(CMC)の買収が4月3日、正式に発表された。買収額は公表されていないものの、最大4億ドルにおよぶ巨額の買収だといわれている。

今回の買収は、現金とバイナンスの発行する暗号資産BNBによるものと報じられている。なお、CMCのCEOを務めていたBrandon Chez氏は、移行の一環として辞任するという。

CMCは暗号資産のベンチマークサイトであり、暗号資産を時価総額で評価する業界基準を最初に作り上げた老舗サービスだ。暗号資産メディアTheBlockの公開したデータによると、CMCは過去半年間で2億7000万PVに到達しているという。今後は、現状の収益モデルからの脱却を図るために、広告モデルからサブスクリプションモデルへの転換を検討していると声明を出した。

暗号資産業界ではまだまだ事例の少ない買収案件だが、取引所の傘下に入ることで情報に歪みが発生する可能性も考えられる。CMCは、中立の立場から長らく業界の発展に貢献してきたが、今回の買収によりバイナンスに偏った情報が発信されるようになるかもしれない。なおこの点に関してCMC側は、買収後も変わらず中立的な立場を維持すると公式声明を出している。

バイナンスは、2019年中にDApps関連のデータ分析サービスDappReviewと暗号資産デリバティブプラットフォームのJEXを買収している。特に前者と今回のCMC買収からは、複数の切り口によるデータの収集傾向が伺える。暗号資産に関する数値を分析する際は、これまで以上に複数のリソースを参照した方が良いかもしれない。

参照ソース


    バイナンス、大手仮想通貨ベンチマークCoinMarketCap買収を公式発表
    [CoinPost]
    Confirmed: Binance has officially acquired CoinMarketCap
    [Decrypt]

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec