5分でわかるブロックチェーン講座

AWSがイーサリアムをサポート、エンタープライズブロックチェーンを強化へ

熱狂的に盛り上がる「NFT」、Web3.0につながる、その重要性を考察

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

AWSがイーサリアムのサポートを開始

 アマゾンのクラウド事業、AWSを通したブロックチェーン開発サポートサービスAmazon Managed Blockchain(AMB)が、イーサリアムのサポートを開始した。すでにサポートされている、Hyperledgerに続き、企業向けサービスを強化する方針を見せている。

 現状、企業がブロックチェーンを使ったアプリケーションを開発する場合に採用するプラットフォームは、イーサリアムがトップシェアで、次いでHyperledger、Cordaといった状況だ。AMBは、2019年よりイーサリアムへの対応計画を明らかにしていたものの、その後の市況の変化などからこのタイミングでのサポート開始となっている。

 今回の対応で、AMBを使えば、イーサリアムのノードを数分で簡単にセットアップできるようになった。イーサリアムのメインネット(本番環境)やテストネット(開発環境)へ、アプリケーションを自由に接続することができるようにもなるという(なお、イーサリアムのテストネットはRinkebyやRopstenなど複数存在する)。

 これまでイーサリアムを使ったアプリケーションを開発するには、インフラの管理と運用に多くの時間が割かれていた。具体的には、非同期ノード同士のデータの信頼性やストレージのスケーリング課題、脆弱なオープンソースソフトウェアによるノードのクラッシュなどがあげられる。

 通常のWebアプリケーション開発におけるAWSが担う役割同様、AMBはブロックチェーンにおけるインフラコストの削減に貢献してくれるだろう。AMBでは、Ethereum APIを介したイーサリアムへの安全な接続、高速かつ信頼性の高い同期通信、拡張性の高いストレージなどが利用できるとしている。

 なお、イーサリアム対応のAMBを利用できるリージョンは、アジアパシフィック(東京)に加えアジアパシフィック(シンガポール)、アジアパシフィック(ソウル)、欧州(アイルランド)、欧州(ロンドン)、米国東部(バージニア北部)となっている。

参照ソース


    Ethereum on Amazon Managed Blockchain の一般提供を発表
    [AWS]

記事そのものがトークンになる、ブログ「Mirror」の取り組み

 NFTと呼ばれるブロックチェーンを使って発行されるトークンが熱狂的な盛り上がりを見せている。今週は、Mirrorというユニークなブログプラットフォームについて紹介しよう。

 ブロックチェーンは、あらゆる資産をトークンという形で流通可能な状態にしている点が大きな特徴の1つだ。これをトークナイズと呼んだりするが、いわゆる証券化に近い概念だと言えるだろう。

 ブロックチェーン上に発行されるトークンは大きく2種類存在する。ユーティリティトークン(Utility Token)とNFT(Non-Fungible Token)だ。前者は、我々が普段トークンと呼んでいるものでICOなどに活用されている。トークンに識別子がなく、どのトークンでも同じように機能するものだ。

 対して後者はNFTと呼ばれ文字通り代替が不可能なトークンとして発行される。トークンに識別子が付いており、同じトークンは世の中に存在しない。

 昨今、このNFTを使った取り組みが急速に発展してきている。例えばNFTを活用したMirrorというサービスでは、ユーザーが執筆した記事をNFTに紐づけることでその記事を世の中に唯一無二のものとして公開することができる。

 仮にMirrorで書かれた記事に価値を見出す人が存在するならば、その記事の所有権をNFTを売却することで他人に販売することもできるのだ。テキストのコピー&ペーストはできてしまうが、どの記事が本当の大元になっているのかを証明することが可能となっている。

 MirrorのようなNFTを使ったサービスは、デジタル化によってコンテンツの複製が容易になった時代における多くの課題を解決してくれそうだ。今週の後半パートでは、Mirrorをはじめとして急速な盛り上がりを見せているNFTの革新性について考察していきたい。

参照ソース

今週の「なぜ」NFTはなぜ重要か

 今週はAWSによるイーサリアムへのサポート開始やNFTを活用したMirrorに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

NFTはWeb3.0を実現するための重要な要素
デジタルデータを唯一無二のものにするNFTには資産価値が帯びている
NFT普及の背景にはデジタルコンテンツのコモディティ化が影響

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

Web3.0とNFT

 Web3.0とは、一般に「ブロックチェーンを活用したWebサービスが主流となる未来」と言われているものだ。

 個人的な解釈としては、Web1.0がフロントエンド革命、Web2.0がバックエンド革命だ。Web1.0でデジタル上に情報を表示することができるようになり、Web2.0でその情報を通信できるようになった。

 Web3.0では、通信される情報の価値を証明できるようになる。データ基盤がブロックチェーンになることにより、その情報が改ざんされていないことが保証され、結果的にその情報に資産価値が生まれることに繋がるのだ。

 これを実現するための重要な要素がNFTだと考えている。先述の通り、NFTは唯一無二のトークンとして発行することができるため、NFTそのものに資産価値が帯びる可能性がある。

デジタル上の情報に資産価値を持たせるNFT

 NFT市場は、まずはゲーム市場から盛り上がりを見せていた。ゲーム内のキャラクターやアイテムをNFTと紐づけて流通させることで、そのキャラクターやアイテムが唯一無二の存在して発行されることになる。

 このような状況になると、そのキャラクターやアイテムには資産価値が生まれるようになり、ユーザー同士での売買が始まる。ブロックチェーンによってデジタル上の情報(ここではキャラクターやアイテム)が保証されることにより、ある種の金融資産として価値を見出す人が出てくるようになるのだ。これはまさにWeb3.0そのものだと言えるだろう。

 ゲームの他にも、現在までにアートや音楽、著作権、ライブチケットなどがNFT化されて市場に流通している。今回紹介したMirrorでは記事がNFT化されている格好だ。

デジタルコンテンツはNFTによって真に量から質の時代へ

 NFTが注目を集めるようになった背景には、デジタルコンテンツのコモディティ化があげられるだろう。情報へのアクセスが容易になり量より質の時代が到来しつつある中で、NFTは特定のセグメントでのみ価値を見出せば良いことを前提にしている。

 ゲームキャラクターやアート、音楽、ライブチケットなどがその典型例だろう。例え一部の人へのリーチだとしてもその人たちに大きな価値を提供できるのであれば、その方がこれからの時代は生き残っていける可能性が高い。

 最近では、オンラインコミュニティなどへの参加権をNFTで発行するサービスも登場している。特定のNFTを保有している人のみ参加できるコミュニティということだ。

 コンテンツはNFT化された時代においては、デジタル社会における最大の課題とも言うべき転売や偽造が不可能であり、現在ここにかけているあらゆるコストを削減できる点もNFTの強みだ。

 現在は、NFTを売買するためのマーケットプレイスがNFT市場を牽引している。とあるNFTが1億6000万円で売買されるなどの事例も出てきており、引き続きこの市場には注目してもらいたい。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami