5分でわかるブロックチェーン講座

Maker Foundationが開発資金をプロトコルに返還、Foundation解散へ向け最終調整

UniswapがV3をローンチ

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

分散型取引所UniswapがV3をローンチ

 分散型取引所(DEX)最大手のUniswapが、V3をメインネットにローンチした。流動性プロバイダー(LP)の収益源となる手数料を固定値ではなく変動値にする機能や、板取引のオーダーブックに似た資本効率を改善する機能などが追加されている。従来よりも金融サービスっぽさが拡充されている印象だ。

 流動性プロバイダーとは、Uniswapのプールに対して2種類のトークンペアを提供するユーザーのことを指す。売り手と買い手は資産プールを介して取引が行われ、プールに資産を提供するとUNIというLPトークンを受け取ることが可能だ。

 UNIはガバナンストークンとしての役割を持ち、UNIの保有者によってUniswapにおける意思決定が行われる。これが分散型アプリケーションの運営形態であるDAO(分散自立組織)の一般的な実装だ。

 ブロックチェーン上にデプロイされる管理者不在のサービスの場合、アップデートするには新たなスマートコントラクトを定義しなければならない。Uniswapも今回のアップデートによりV3がローンチされ、V1、V2と共に稼働することになる。運営の意思でV1とV2をクローズさせることができないためだ。

 なお、V3にはNFTを活用した仕組みも新たに導入された。流動性プロバイダーがプールに対して資金を提供すると、そのプールにおける自身の提供資産の割合がどの程度であるかが表示されることになっている。この割合をNFTで表示するという。

 将来的には、このNFTを外部で売買することも可能になるのではないだろうか。プールへ提供する資産をそのままNFTとして販売可能なデリバティブ取引のようなイメージだ。Uniswapの存在感がますます大きくなってきている。

参照ソース


    Uniswap V3 Mainnet Launch!
    [Uniswap]

Maker Foundationが開発資金をプロトコルへ返還

 分散型金融プロジェクト「MakerDAO」の開発を主導する財団、Maker Foundationが、プロジェクトの運営資金をMakerDAOプロトコルへ返還した。MakerDAOの開発を進めるにあたり、これ以上Maker Foundationが介入する必要はないと判断。いよいよ完全なDAO(分散自立組織)に向けたカウントダウンが大詰めを迎える。

 MakerDAOは、レンディングサービスやステーブルコインDAIの発行及び管理を行うプロジェクトだ。ガバナンストークンMKRの保有者によって意思決定が行われる。

 分散型プロジェクトの場合、理想としてはガバナンストークンの保有者による完全なDAO運営が描かれるが、とはいえ発足当初は誰かが旗振り役を務めなければ開発が進まない。

 MakerDAOの場合はMaker Foundationが、イーサリアムの場合はEthereum Foundationがこれに該当する。MakerDAOは、ガバナンストークンを発行した最初のプロジェクトの1つであり、年内にMaker Foundationを解散する予定であることが発表されていた。

 Web3.0プロジェクトの場合、IPOもM&Aも目指さずゴールは運営母体の解散に設定する。オープンソースプロジェクトに運営母体は必要なく、運営母体がなくてもプロジェクトの開発が進む状態が理想であるためだ。

 今週は、Maker Foundationが解散することの重要性について考察していきたい。

参照ソース


    The Maker Foundation Returns Dev Fund Holdings to the DAO
    [MakerDAO]

今週の「なぜ」Maker Foundationの解散はなぜ重要か

 今週はUniswapのV3やMaker Foundationによる開発資金の返還に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

DAO化に伴いMaker Foundationは解散するが一部のコアメンバーは残る
DAO化に伴い初期のMKR出資者が影響力を強めることが予想される
Maker Foundationの解散で1つの事例が作られる

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

MakerDAOの今後の運営要素

 Maker Foundationは、今回の発表に伴い総供給量の1%を除く全てのMKR保有分をプロトコルへ返還した。1%はDAO化に向けた最後の必要資金であり、今後Maker FoundationがMakerDAOの開発を主導することはなくなる。

 今後は、主に次の3つの要素によってMakerDAOの運営は行われていく。

・プロジェクトによって雇われるメンバー(Maker Foudationに在籍していた数名)
・MakerDAOの改善提案と提案者
・MKR保有者

 イメージとしては、開発を主導するのがMaker Foundationから数名の個人に切り替わること、MKR保有者の裁量が大きくなるといった形だ。上記2番のMakerDAO改善提案は既にうまく機能している。

DAOの具体とは?

 ブロックチェーンプロジェクトは、以前よりDAO化が前提とされてきたものの、これまでにDAO化が達成されている目ぼしいプロジェクトは存在しない。MakerDAOが初の事例になるであろうことから、非常に大きな注目を集めている。

 DAOというのは抽象的なもので、これを具体に落とし込むと結局は数名の影響力を持った人物によってプロジェクトが運営されるであろうことが予想されるのが正直なところだ。

 ただしこれは必ずしも悪いことではなく、これまで開発を主導してきた創業者などが突然あとはコミュニティでよろしく、といってプロジェクトから離れるよりは引き続きリードしてもらう方が良いのは異論のないことだろう。

 MakerDAOのブログによると、上記1番の雇われるメンバーというのは、コアデベロッパー、セキュリティコンサルタント、顧問弁護士、マーケティング、人事、会計チームとされている。

 DAOといえど、例えばブログを公開するためのサーバ代や実際に手を動かす開発者などが必要になる。机上の空論ではなく、ここまでの粒度でプロジェクトのDAO化を進めることができているのはMakerDAOが初めてだ。

MKRの保有者

 MakerDAOによる意思決定は、以前よりフォーラムを通して行われてきた。初期の頃はMKRの保有者が少なかったこともありなかなか活発な議論が行われることはなかったものの、Maker Foundationの解散が現実味を帯びるにつれて、コミュニティに活気が出てきている。

 ガバナンストークンMKRの保有者には、世界的な著名ファンドa16zなどが名を連ねている。a16zは、2018年時点でMakerDAOへ1500万ドルを出資しMKRを保有していた。これは、当時の総供給全体の6%を占めている。

 現在もMKRにおける大株主のようなポジションにあるa16zだが、Maker Foundationの解散に伴いその存在感は一気に増すことが考えられる。もちろん当時の数倍にも膨れ上がっているMKRを売却することで利益を得ることもできるが、当面はプロジェクトへの介入を強めていくことだろう。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami