5分でわかるブロックチェーン講座

独自のステーブルコイン「FUSD」をローンチするDapper Labs、独自で発行するのは何故なのか?

イーサリアムのガス代下落要因を解説

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Dapper Labsが独自ステーブルコインをローンチ

 NBA Top Shotなどを運営しNFT市場を牽引するDapper Labsが、独自のステーブルコイン「Flow USD(FUSD)」をローンチした。米ドルを担保に、同じく自社提供の独自ブロックチェーンFlow上で発行される。

 Dapper Labsは、CryptoKittiesやNBA Top Shotといった人気ブロックチェーンゲームを開発し、NFT市場の大部分のシェアを獲得してきた。いずれもイーサリアム上に開発されたサービスであったため、ガス代の高騰などに悩まされてきた結果、独自のブロックチェーンFlowを開発するに至っている。

 今回発表したのは、Flow上で発行するステーブルコインのローンチだ。Flowにはネイティブトークン「FLOW」が発行され既に流通しているものの、Flowを購入するにはそもそも暗号資産を保有していないといけないなどのハードルが存在する。

 米ドル担保のステーブルコインを発行することで、事前に暗号資産を保有する必要がなく、米ドルのみでFlowエコシステムにアクセスできるのだ。今週は、このステーブルコインを独自で発行することの重要性について考察したい。

参照ソース


    Flow’s First US Dollar-Backed Stablecoin Now Available
    [Dapper Labs]

イーサリアムのガス代が急落したのは何故なのか?……その要因を解説

 ここ1ヶ月でイーサリアムのガス代が急落している要因について、米メディアThe Blockが調査レポートを公開した。

 イーサリアムでは、トランザクションを実行するたびにガスと呼ばれる手数料が発生する。ローンチ当初は1円未満か高くても数円だったものの、イーサリアムの需要が高まるにつれて高騰し、2021年に入ってからは数千円台を推移していた。

 そんなガス代が、ここ1ヶ月で90%以上下落し現在は1ドル未満となっている。The Blockはガス代が低下した要因について、「トランザクション数の減少(165万件→120万件)」「特にDeFiとNFTのトランザクション数が減少」「Polygonの台頭(150万件→750万件)」の3つをあげた。

 イーサリアムでは、トランザクションごとにガス代が設定され、ガス代を高く設定すると優先して承認される。そのため、トランザクション数が増加している際にはガス代も高騰する傾向にあるのだ。

 今回のガス代下落には、DeFiとNFTに関するトランザクション数が減少したことが影響しているという。また、昨今勢力を強めるブロックチェーンPolygonの台頭も大きく関係しているとした。

 Polygonには、既に350以上のDeFiプロジェクトが存在しており、イーサリアムからPolygonへユーザーが流れたことも、結果的にイーサリアムのトランザクション数が減少したことに繋がっている。

参照ソース


    Ethereum gas fees have plunged to a six-month low. Here's why
    [The Block]

今週の「なぜ」ステーブルコインの発行はなぜ重要か

 今週はDapper Labsの独自ステーブルコインとイーサリアムのガス代下落に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

ステーブルコインは法定通貨と暗号資産のブリッジとして機能する
独自のステーブルコインを発行することで新規ユーザーを獲得できる
実需のあるプロジェクトこそステーブルコインを発行する傾向に

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

法定通貨と暗号資産の橋渡しを行うステーブルコイン

 最近、独自のステーブルコインを発行するプロジェクトが少しずつ増えてきている。一定のシェアを獲得しているステーブルコインとしては、法定通貨担保型のUSD Coin(USDC)やTether(USDT)、暗号資産担保型のDai(DAI)などがあげられる。

 特に法定通貨担保型ステーブルコインの成長は著しく、現時点でTetherが約600億ドル、USD Coinが約250億ドルもの時価総額を誇る。これは、ブロックチェーンの実活用が進むにつれて、法定通貨と暗号資産の交わりが進んでいることの表れだろう。

 これまでは、法定通貨と暗号資産の橋渡しは取引所が担ってきたが、法定通貨を担保に発行可能なステーブルコインがこのポジションを奪いつつある。法定通貨を担保に発行されたステーブルコインを使うことで、簡単にその他の暗号資産へアクセスすることができるのだ。

ステーブルコインでエコシステムを拡大

 Dapper Labsがステーブルコインを発行したのは、Flowエコシステムのユーザー数を拡大することが狙いだ。Flowブロックチェーンには、FLOWというネイティブトークンが存在するものの、先述の通りFLOWを入手するのに他の暗号資産が必要だったりする。

 暗号資産へのアクセスは、一般人とってはまだまだハードルが高いため、他の暗号資産を介さずに直接法定通貨と繋げる必要があったのだ。ステーブルコインであれば法定通貨を使って発行できるため、取引所のライセンスなどを取得することなく現実世界との橋渡しが可能となる。

 現状、Flowブロックチェーン上にはいくつかのブロックチェーンゲームが展開されているが、おそらく今後はこれらのゲームでFUSDが使用可能となるだろう。これにより、これまでアクセスしてこなかった層のユーザーをFlowエコシステムに取り込むことが期待できる。

ステーブルコインが応えるのは実需

 ブロックチェーンゲームなどの場合、トークンの価格変動を気にせず純粋にゲームを楽しみたいという需要も一定存在する。そんな時に、FLOWのような価格変動の激しいトークンが基軸通貨として使用されていては、ゲームを楽しむことに集中できないだろう。

 つまり、実需のあるプロジェクトには必然的にステーブルコインへの需要が高まってくるのだ。DeFiやNFTなど、暗号資産市場には中身の伴わないものが無数に存在しており、実需がなくてもトークンに価格がついてしまうことが珍しくない。

 そういった意味では、ステーブルコインの有無でプロジェクトの中身を判断することもできるようになるかもしれない。

 ステーブルコインは、価格変動の激しい暗号資産市場における資産の逃げ先としても機能している。例えばビットコインを中心とするここ数ヶ月の大暴落においても、ステーブルコインに換金しておけばリスクをヘッジすることが可能だ。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami