5分でわかるブロックチェーン講座
NFTを担保にステーブルコインを発行、DeFiとNFTの融合進む
「Play-to-Earn」人気ブロックチェーンゲームAxie Infinityが独自の取引所を計画
2021年10月12日 07:50
NFTを担保にステーブルコインを発行
NFTを担保にしたDeFiローンサービスJPEG'dが、分散型オラクルソリューションChainlinkとの提携を発表した。併せて、最古のNFTシリーズとして人気のCryptoPunksを担保に入れることができるよう対応している。
NFT市場が盛り上がるにつれて、DeFi市場との融合が活発になってきた。イーサリアムなどの同一プラットフォーム上であれば、NFTとDeFiはスマートコントラクトで簡単に相互接続が可能となる。
この特性を生かして両者の市場を融合させたのが、NFT担保ローンだ。文字通り、NFTを担保にDeFiで貸し借りをすることができる。JPEG’dの場合は、NFTを預け入れることで独自のステーブルコインPUSdを発行できるようだ。
ただし、NFTを担保にしたDeFiローンには課題が山積みとなっている。特に、担保資産であるNFTの価格変動が大きすぎることから、それを担保に発行されるステーブルコインが全くステーブルにならないことや、価格の急落による清算リスクが付いて回る。
そこで期待されているのが、今回JPEG'dも導入したChainlinkだ。今週は、NFT担保ローンにおけるChainlinkのプライスフィードの重要性について考察する。
参照ソース
Introducing JPEG’d: DeFi Meets NFTs
[JPEG’d]
Axie Infinityが独自の取引所を開発
「Play-to-Earn」として人気のブロックチェーンゲームAxie Infinityが、独自の分散型取引所(DEX)を開発していることがわかった。ゲーム内で使用されるトークンを簡単に売買できる環境を整備する。
Axie Infinityでは、ゲームでの活動を通してAXSやSLPといった独自トークンを獲得することができる。ゲームをプレイするにはこれらのトークンが必要になるため、スタート時は事前に購入しておかなければならないが、ゲームを中でキャラクターを育てたりバトルに勝利したりすることにより、トークンを獲得することが可能だ。
獲得したトークンは、法定通貨やほかのトークンに換金できるため、文字通り「Play-to-Earn」と呼ばれている。現状、Axieのトークンをほかのトークンに換金するには、外部の取引所を使用しなければならない。その場合、プレイヤーは一度ゲームの外に資産を移す必要があるため、金銭的にも時間的にもコストが発生してしまう。
そこで、Axieはゲーム内に独自のDEXを設けることで、ユーザーをエコシステムの外に出さずさらに拡大しようと画策している。
参照ソース
Axie Infinity is launching a decentralized exchange
[The Block]
今週の「なぜ」NFTに分散型オラクルはなぜ重要か
今週は、NFT担保ローンJPEG'dのChainlink連携やAxie Infinityの独自DEXに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
DeFiレンディングが抱える過剰担保と清算リスクの問題
課題はそのままNFT担保ローンでも浮き彫りに
清算リスクを解決するChainlinkのプライスフィード
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
DeFiレンディングの課題
NFT担保ローンとは、文字通りNFTを担保に資金の貸し借りが可能なDeFiレンディングサービスだ。一般的にDeFiレンディングというと、MakerDAOのようにETHやBATを担保にステーブルコインDaiを発行したり、Compoundのようにプールに対してトークンを供給することで利子を得られたりする。
NFT市場が盛り上がるにつれて、NFTを担保にしたレンディングサービスが出てくるだろうとは以前より予想されていた。実際、JPEG'd以外にもPleasrDAOなど複数のNFT担保ローンサービスがローンチされている。
DeFiでは、管理者が存在しないため外部の信用情報などを参照することができず、過剰担保にすることでいわゆる貸し倒れのリスクを防いでいる。たとえば、MakerDAOで1万円分のDaiを発行するのに、1万5000円分のETHを預け入れておく必要がある、といった具合だ。
要するに、誰が借りるかわからないから万が一のために担保をたくさんもらっておこう、という考え方である。
NFT担保ローンの清算リスク
DeFiレンディングの過剰担保問題は、DeFi全体の課題として浮き彫りになっている。DeFiは本来、管理者が存在しないことでユーザーを選ばない金融包摂が目的だったものの、過剰担保によりユーザーを制限することになってしまった。金融包摂の対象となるような人々は、担保に入れることができる原資を持っていないからである。
過剰担保が必要なもう1つの理由は、担保資産の価値が急激に変動する点にある。ステーブルコインDaiは、ETHやBATなどの暗号資産を担保に発行され、ステーブルコインとしての価値は担保になっている資産の影響を受ける。
そのため、ETHやBATの価格が急激に変動した場合、ステーブルコインとしての価値を維持することが難しくなる。特に、価格が急落した際には、担保資産としての役割を果たすことができず、自動的に清算されてしまうことになるのだ。
この問題は、NFT担保ローンでも同じことが言える。バブルの様相を持つ昨今のNFTは、数百万円単位の価格変動は日常茶飯事であり、そのような資産が担保になるとは到底考えられない。
Chainlinkのプライスフィード
この問題を解決するのが、Chainlinkの提供するプライスフィードだ。Chainlinkは、ブロックチェーンの外部情報をブロックチェーンの内部に組み込むためのオラクルソリューションとなっている。
たとえば、Daiを発行するのにいくら分のETHやBATを預け入れれば良いのか、市場のETHおよびBAT価格を参照するのにChainlinkのプライスフィードが使用されている。
これをNFT担保ローンでも使用するというのがJPEG'dの取り組みだ。Chainlinkの提供するNFTプライスフィードを使用することで、実際の価格変動ではなく、そのNFTの本質的な価値を想定して算出される平均的な価格を参照することが可能となる。
これにより、NFTの急激な価格変動に左右されることなく、NFTを担保にしたDeFiレンディングができるのだ。ただし、これで1つ目の過剰担保問題が解決されるわけではないため、引き続き対策が求められる。