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第87回:地図の描画速度が向上、「スーパーマップル・デジタル11」を試す


 今や電子地図といえばインターネット上の地図サイトを使うのが当たり前の時代となったが、その一方でPC用のパッケージ地図ソフトを愛用している人も少なくない。昭文社から6月10日に発売予定の「スーパーマップル・デジタル11」も、そんな人たちに長年支持されてきたソフトだ。前バージョンと比べてどのような点が変わったのかを中心に、このソフトについてご紹介しよう。

 なお、「スーパーマップル・デジタル11」はWindows 7/Vista/XPに対応しており、「全国版」(1万5330円)、「東日本版」(8820円)、「西日本版」(8820円)、「関東甲信越版」(5880円)、「乗換・アップグレード 全国版」(オープンプライス)など幅広いラインナップとなっている。また、同梱されているPDA用の地図ソフト「Pocket Mapple Digital」はWindows Mobile 6.5/6.1/6/5.0(Standard Editionを除く)に対応している。


「スーパーマップル・デジタル11」

地図の表示スタイルがさらに充実

 地図ソフトはラスターデータとベクトルデータの2種類に分かれるが、「スーパーマップル・デジタル」はベクトルデータを使用したソフトだ。建物の形状までわかる詳細図にはコンビニや飲食店など主要な施設名が記載されており、一方通行表示なども細かく載っている。また、都市部において地下鉄の駅の位置が見分けやすいのも魅力だ。駅のホームや出口の位置だけでなく線路もはっきり表示されているので、地上との関係がとてもわかりやすい。本バージョンでもこのような伝統はしっかりと受け継がれている。

 地図の表示スタイルが豊富なのも特徴のひとつだ。施設名などの文字を大きく表示する「でっか字表示」や、地形表現を無くす「地形表現なし表示」をはじめ、「等高線強調表示」「色覚UD表示」など、前バージョンからさまざまな表示スタイルが用意されていたが、本バージョンではこれらに加えて「少し薄め表示」と「少し濃い表示」の2種類が加わり、より微妙な色合いを選べるようになった。


表示スタイルを「でっか字表示」に変更

表示スタイルを「少し薄め表示」に変更

表示スタイルを「少し濃い表示」に変更

前バージョン比で2倍以上、描画速度が向上

 そして本バージョンで最も注目される進化が、地図描画の速度向上だ。パッケージの地図ソフトの利点といえば、やはりスタンドアローン環境で使える点が挙げられる。これは外出先でモバイルPCを使うときなどは大きなメリットとなるはずだ。「スーパーマップル・デジタル11」は、ローカルディスクに地図をインストールして使うことの利点を最大限に生かし、地図描画の速度向上にこだわった。昭文社によると、描画スピードの向上は前バージョン比で約2.3倍というから、これは期待が持てる。

 個人的には、地図ソフトというのはあれこれと新しい機能を付けるよりも、単純にパフォーマンスの向上を追求してくれた方がありがたいと思っているので、今回のような姿勢は歓迎したい。

 それではどれくらい速くなったのかを見てみよう。前バージョンの「スーパーマップ・デジタル10」と今回の「11」のスクロールや拡大・縮小の動作を比べてみた。

 スクロールはもちろん、マウスホイールで地図を拡大させたときのレスポンスにも大きな違いがあり、「10」ではホイールを回転させた直後、動作が一瞬止まったかのように見えるが、「11」の方はこのようなもたつきが、皆無とまではいかないが明らかに少なくなった。総合的には、「11」の方が確実にストレスが少なく感じられる。

 以下、デスクトップ録画ソフトで撮影した両バージョンの動作の様子だ。細かい部分は見えづらいかもしれないが、それでも動作速度の違いはわかっていただけると思う。

   

【動画】「スーパーマップル・デジタル10」での操作【動画】「スーパーマップル・デジタル11」での操作

  なお、使用したPCは、CPUがCore 2 Duo E6600 2.40GHz、メモリーが4GB、ビデオカードがGeForce 7600 GT(256MB)。ディスプレイ解像度は1600×1200ピクセルだが、地図部分の表示はおよそ1000×1000ピクセルだ。OSはWindows 7 Professional(64bit)。

少し大きくなった表示エリア

 このほかの違いとしては、表示エリアの大きさが変わったことが挙げられる。「スーパーマップル・デジタル」の縮尺は「10」も「11」も1/1,000~1/5,000,000だが、同じ縮尺でも表示される範囲が異なっている。最大縮尺で比べるとよくわかるが、「11」の方が同じ縮尺でも大きく表示されるようになった。

 さらに、地図中の鉄道名などのテキスト表示が前バージョンよりも大きめに表示される点も変わっている。「11」の標準スタイルでの文字の大きさは、前バージョンで地図の表示スタイルを「でっか字表示」にしたときよりもさらに大きく見やすい。

 細かい部分としては、地図上にテキストや写真を貼るときの「ラベル」の設定において、グラデーションをかけたりテキストにアンチエイリアスをかけたりする効果のオン・オフが選択できるようになった。さらに、地図の画像出力時に、切り出した画像の四隅の緯度経度を記したCSVファイルの自動生成も可能となった。


「スーパーマップル・デジタル10」での最大縮尺表示

「スーパーマップル・デジタル11」での最大縮尺表示

PDA用ソフトとの連携も強化

 Windows Mobile用のアプリケーション「Pocket Mapple Digital」にも新たな機能が加わった。GPSを搭載したスマートフォンから「Pocket Mapple Digital」を通じて位置情報付きのメールを送ると、PC上の「スーパーマップル・デジタル」上で位置を確認できるようになった。この機能は車両の移動状況や外出者の管理など、主にビジネス用途を想定しているようだが、個人でもお気に入りのスポットの場所をメールでPCに送れば、備忘録として使えるだろう。


GPSのログを地図上に表示

 バージョンアップで強化された主な点は以上の通りで、もちろん地図データは2010年4月までの市町村合併や道路情報など最新情報が収録されている。ただし、車でのルート検索は2009年4月時点の情報までだ。

 道案内図を作成するために略地図を出力する機能や、前バージョンから加わったグラフ表示機能、観光情報サイト「MAPPLE観光ガイド」と連動してコンテンツを検索できる機能など、「スーパーマップル・デジタル」ならではの機能は引き続き搭載している。また、ジオタグ(位置情報)付きの写真を取り込んで、地図上の該当する場所に自動的に貼り付ける機能や、GPSログデータを地図上に表示して速度や高度のグラフを描く機能も以前とほとんど変わらない。

 簡単に言えば、「Pocket Mapple Digital」を使わないユーザーにとっては地図データの更新および地図の描画速度向上くらいしか違いは見られないのだが、今回の描画速度向上は個人的にはかなり魅力的だ。この点に価値を認められるのであれば、バージョンアップして後悔することはないと思う。同シリーズにはぜひ今後とも、パフォーマンスの向上を追求してほしいものである。


略地図作成機能




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2010/6/3 06:00


片岡 義明
地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。