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第112回:国土地理院の2万5千分の1地形図とサイクリングロードも収録! アウトドア志向の防滴PND、ソニー「nav-u NV-U37」試用レポート
自動車だけでなく自転車や徒歩にも使えるPND(パーソナルナビゲーションデバイス)として人気のソニー「nav-u」シリーズ。そのnav-uの新製品「NV-U37」が6月25日に発売される(オープン価格、店頭価格は3万7000円前後の見込み)。NV-U37は、軽量・コンパクトで防滴機能を備えた「NV-U35」の後継モデルで、IPX5相当の防滴性能となっている。
バッテリー持続時間は通常モードで約5時間、操作していない時に画面のバックライトを最も暗い状態にする「スタミナモード」で約9時間、操作していない時に画面を消す「スーパースタミナモード」で約11時間と長時間の使用が可能だ。さらに自転車用のクレードルも用意されており、NV-U35と同様にサイクリングや散歩での使用を強く意識しているのが特徴だ。
nav-u NV-U37(ブラック) | nav-u NV-U37(ホワイト) | nav-u NV-U37(オレンジ) |
特に注目したいのが、国土地理院の2万5千分の1地形図を収録したこと。通常の地図と切り替えて表示させることが可能で、山岳地などのアウトドアにおいて自分のいる位置を確認できる。屋外でも見やすい半透過型液晶も搭載されて視認性が向上したことに加えて、サイクリングロードを考慮したルート検索など、フルナビにはない機能も随所に見られる。
メモリーは8GBで、建物の形や道路幅、一方通行なども収録した「市街詳細地図」は全国1331エリアを収録する。ガイドブック情報もかなり豊富で、「グルメぴあ」「BICYCLE NAVI」「全国立ち寄り温泉マップ」「全国日帰り温泉マップ」「道の駅マップ」など多彩なガイドブックが搭載されている。これに加えて、お気に入りのスポットを地図サイト「PetaMap」で検索してスポット情報をダウンロードし、nav-uに転送してオリジナルのガイドブックも作成できる。
サイズは112×79×19.7mm(幅×高さ×奥行)、質量は約182gで、NV-U35と比べると厚みと質量がわずかに増えている。液晶サイズは3.5型で、上位機種に比べると小さめだが、その分コンパクトで携帯性はいい。
本体はNV-U35よりも少し厚みがある | 裏面はクレードルとの接点が剥き出し | 本体の左横のカバーを開けるとUSBポートとメモリースロット、ACジャック、リセットボタンがある |
コンビニなどのアイコンが充実した地図画面 | 多彩なガイドブックデータを収録 |
●オービスデータが追加された自動車モード
自動車用クレードルはnav-uシリーズではおなじみの「ピタッと吸盤」による固定で、クレードルごと取り外してほかの車に乗せ替えるのも簡単だ。クレードルには電源用コードを接続するジャックがあり、NV-U37の裏面にある接点とつなげることで給電する。
10種類のジェスチャーコマンドで画面をなぞると基本的な操作ができるのも従来通り。ナビゲーション中に右回りの円や左回りの円を描くと設定した縮尺に変更させることが可能だ。
NV-U37には上位機種のように加速度センサーやジャイロセンサーを使った速度/方向算出機能「POSITION plus GT」は搭載されておらず、簡易的な「POSITIONアシスト」しか搭載されていない。これは走行中にトンネルに入った時など、一時的にGPS電波を受信できなくても短時間なら進行方向やスピードを予測して表示する機能だ。
標準添付の自動車用クレードル | 自動車に取り付けたところ。下にあるのは5.8型液晶搭載のCDナビ |
ワンセグも非搭載で機能的にはシンプルだが、カーナビの案内情報は都市高速入り口ガイドや方面看板、交差点拡大表示、ハイウェイマップ、全国約2900カ所のジャンクション/ランプガイドなど基本的な機能は搭載されている。
ルート検索の探索方法は「推奨ルート1」「推奨ルート2」「有料道優先」「一般道優先」「一般道距離優先」「距離優先」の6種類から選択可能で、経由地は最大10カ所まで設定できる。
VICSによる渋滞情報には対応していないが、出発日時や到着日時を指定したルート探索の場合は、全国主要道路における過去の渋滞統計情報を基にしたルート探索が可能だ。
施設の検索については住所や電話番号での検索が可能なほか、周辺の施設の中からガソリンスタンドやコンビニなど施設の種類でも絞り込める。施設の出入り口情報も収録されており、駅や地下鉄の出入り口や、ホテルやショッピングモールの駐車場の出入り口情報なども収録されている。
このほか前機種のNV-U35に搭載されていなかった機能として、全国の自動速度違反取締装置(オービス)の地点の収録や、PC上で作ったルートのデータを読み込んで地図画面に表示するインポート機能などがある。ルートはKMLまたはGPX形式のルートデータをメモリースティックDuoに記録して本体に挿して使う。インポートできるルートは1つだけで、新しいルートをインポートすると既存のルートは上書きされる。
地図画面を3D表示にしたところ | メニュー画面 |
ルート探索方法は6種類 | ルート編集画面 |
交差点の案内表示 |
●サイクリングロードを通るルートを探索できる自転車モード
設定で「自転車モード」にすると、画面上のアイコンが自転車の絵に切り替わり、自転車モードとなる。自転車モードではルートの探索条件が自動車モードと異なり、以下のようになる。
・「おすすめ」:走行頻度を考慮して距離を優先
・「サイクリングロード」:サイクリングロードを優先
・「楽ラク」:上り坂を避ける道路を優先
・「トレーニング」:上り坂を優先
・「大通り」:幹線道路や幅の広い道路を優先
・「裏通り」:幹線道路を避ける道路を優先
・「いつもと違う道」:走行頻度が低い道路を優先
・「距離」:距離を優先
8種類もの探索条件から選択することが可能で、サイクリストのさまざまな好みに応じて選択できる。特に標高変化を考慮した探索を行えるのは便利だ。ルート探索時や走行中に、ルートの標高変化をグラフで表示する機能も搭載している。
また、表示切り替えを「情報」モードにすると、目的地までの距離や時間に加えて速度(現在・平均・最高)、距離、時間、消費カロリーなどが表示されて、サイクルコンピューターとしても使えるだろう。情報画面と地図画面を半々にして使うことも可能で、この場合は速度と移動距離、経過時間、現在時刻だけのシンプルな表示内容となる。
今回最も注目されるのは、サイクリングロードのデータを収録している点だ。収録サイクリングロードは、国土交通省が定める大規模自転車道9路線に、そのほかの2路線を加えた11路線(総延長約470km)で、以下の通り。
・多摩川サイクリングロード
・多摩湖自転車道
・江戸川自転車道
・花見川サイクリングロード
・荒川自転車道
・境川自転車道
・浜名湖周遊自転車道
・びわ湖レイクサイド自転車道
・北大阪サイクルライン
・瀬戸内海横断自転車道(しまなみ海道)
・メイプル耶馬サイクリングロード
自転車モードで探索条件に「サイクリングロード」を選択すると、サイクリングロードを考慮した探索が行われる。例えば東京都台東区から埼玉県三郷市まで探索した場合、「おすすめ」での探索では普通に国道を通り最短に近いルートが提示されるが、「サイクリングロード」で探索すると、まず東に進んで江戸川まで行き、そこから江戸川自転車道を北上するルートが提示される。
この場合、「おすすめ」では到着予定時間が56分なのに対して、サイクリングロードは1時間22分とかなり遠回りとなる。探索したルートの結果を見ると通常路線のルートはピンク色、サイクリングロードの部分は緑色の線で描かれるので、どの部分がサイクリングロードになっているのかがわかりやすい。
このサイクリングロードのデータはゼンリンから提供されている。ゼンリンの発表によると、2012年度には提供路線を約130路線(総延長約4000km)に拡大し、サイクリングターミナルや休憩ポイントなどの関連施設の検索データも提供予定とのこと。NV-U37にこれらの情報がファームウェアのアップデートで追加されるかどうかは不明だが、後継機種ではサイクリング関連の情報がさらに充実していきそうな流れである。
サイクリングロードの部分が緑で表示される | 「おすすめ」で探索するとサイクリングロードは通らないルートとなる |
情報表示の画面 | ガイドブックデータ「BICYCLE NAVI」に収録されている自転車関連のデータ |
なお、NV-U35から強化した点としてはもう1つ、液晶パネルが半透過型になったことが挙げられる。屋外でバックライトを最低にしても従来より見やすいので、これはバッテリーの節約に役立つだろう。
NV-U35と共通の自転車用クレードル | クレードルを装着 |
見やすい位置に角度調整が可能 | 屋外でも見やすい液晶 |
●2万5千分の1地形図を見ながらの山歩きを楽しめる徒歩モード
徒歩モードではマップマッチング(道路に合わせて現在地を修正する機能)が解除されて、GPSで測位した現在地がそのまま表示される。
徒歩モードでのルート探索条件は、標準的なルートを探索する「おまかせ」、地下街やアーケードなど屋根が多いルートを探索する「屋根を優先」、階段や歩道橋など昇降が少ないルートを探索する「楽な道を優先」の3種類。地下道や駅内コンコース、歩道橋、公園など、自動車専用ナビには搭載されていない情報を考慮したルート探索が可能なのは便利だ。
新機能として注目されるのは、なんといってもアウトドア地図の収録だ。これは国土地理院が発行する2万5千分の1地形図をラスターデータとして収録したもので、山岳部の一部エリアについて収録している。収録エリアは以下の通り(カッコ内は2万5千分の1地形図の図名)。
・大雪山(旭岳、層雲峡)
・奥入瀬渓流(陸奥焼山、十和田湖東部)
・八幡平、筑波山(筑波)
・尾瀬(尾瀬ヶ原、燧ヶ岳)
・東京西南部、高尾山(八王子、与瀬)
・御岳山(武蔵御岳)
・丹沢(中川、大山)
・上高地(焼岳、上高地、穂高岳)
・乗鞍高原(乗鞍岳、梓湖)
・南アルプス(間ノ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰山、夜叉神峠)
・蓼科山(蓼科山、蓼科)
・六甲山(神戸首部)
・熊野古道(伏拝、本宮)
・大山(伯耆大山)
・剣山(剣山)
・久住山(湯坪、久住山)
アウトドア地図は最も拡大した状態(縮尺レベル200m)で2万5千分の1の2倍、つまり1万2500分の1の縮尺で表示される。1段階引いた縮尺レベル400mの状態で2万5千分の1、すなわち紙の地形図の原寸大となる。なお、本体に収録されているエリア以外のアウトドア地図については、ソニーのウェブサイトから無料でダウンロードして、メモリースティックDuoに保存して追加可能だ。
アウトドア地図。軌跡が地図上に表示されている | アウトドア地図にした状態で縮尺を小さくすると収録地域がわかる |
電子コンパス機能も搭載 |
●沢沿いは誤差が出るが尾根歩きには十分な性能
徒歩モード限定というわけではないが、軌跡ログをPCに取り込む機能もある。別売のメモリースティックDuoをメモリースロットに差し込んで移動軌跡を「PetaMap」の地図上にアップロードできるほか、自分でGoogle EarthやGoogle Mapsのマイマップなどに転送して使うことも可能だ。ログのファイル形式はNMEAまたはKMLで、最長12時間までの走行を1つのファイルに記録できる。ログの取得間隔は1秒ごとで、間隔を変更することはできない。
記録した軌跡はアウトドア・道路地図双方でドットの連なりとして表示されるので、道を迷った際に元来た道を引き返す時の参考にもなる。
それでは山で使った時のログを見てみよう。今回のテストは高尾山で行った。比較に使ったのは単体GPSロガーの「HOLUX M-241」、GARMINのハンディGPS「GPSmap60CSx」、ランニングGPSウォッチの「Forrunner405」だ。地図上の軌跡は赤い線がNV-U37、黄色がM-241、水色がGPSmap60CSx、緑色がForrunner405となっている。わかりやすいようにNV-U37の赤線だけ少し幅を太くしてある。
全体図 |
画面の上部が往路の登りで沢沿いの「琵琶滝コース」、下部が復路の下りで尾根歩きの「稲荷山コース」となっている。往路は沢沿いの道で樹林帯ということもあり見晴らしがかなり悪く、軌跡のバラツキが激しい。復路の稲荷山コースも樹林帯だが、尾根歩きということでほとんどバラツキはなく、いずれの機器も良好なログを記録している。
山麓付近のログを見ると、往路の左端のカーブでバラツキが出ており、M-241が内側にズレているのに対して、NV-U37は、GPSmap60CSxとForrunner405に似たコースを通るが、カーブを曲がった後に下側にズレている。
山麓付近 |
最も違いが出たのは中腹部で、地形に沿って大きく曲がる個所で軌跡がかなり荒れている。全体的にNV-U37はカーブの内側に入り込んでいく傾向が見られるが、場所によってはGPSmap60CSxよりも誤差が少ない場所も見られる。地図中央より少し左の部分でNV-U37だけ大きく内側に入り込んでいく個所があり、この部分は少し気になる。
中腹部 |
山頂付近でもNV-U37だけ外れている部分が見られるが、軌跡の形自体はほかのGPSと似ており、個人的には許容範囲だ。ハンディGPSや単体GPSの性能を上回るほどではないが、それらに近い性能は十分にあり、この精度なら夏山登山で尾根歩きが中心なら十分使えると思う。
山頂部 |
●カーナビ用途以外の機能が強化された魅力的な1台
NV-U37の目玉機能は、なんといってもサイクリングロードのデータおよびアウトドア地図の収録だろう。この点に魅力を感じるのならば、NV-U35からの買い換えも十分お勧めできる。
日本の大手メーカーで登山に使えるハンディGPSを販売している会社はほぼ見当たらないが、NV-U37はそんな現状に一石を投じる製品だと思う。カーナビとしての機能はシンプルだが、自転車や徒歩でも使える点が本機の魅力であり、前機種のNV-U35よりもこの長所がさらに伸ばされているという印象だ。
軌跡ログを見ても測位精度はなかなか高く、尾根歩きに使うのであれば十分な性能を持っていると思う。ただしバッテリーが専用充電池で交換ができないので、長期の山行にはUSBチャージャーなどを持っていく必要がある。モデルチェンジの際は山で連泊するケースを想定して、ぜひ予備電池を交換可能にしてほしい。nav-uシリーズの中で最もコストパフォーマンスの高いこのシリーズは、サイクリストやハイカーにも最適なPNDとして今後の進化が非常に楽しみである。
関連情報
2011/6/9 06:00
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