中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/6/23~6/30]

広がる交通機関での「Visaのタッチ決済」 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 兵庫県尼崎市のUSBメモリ紛失事件まとめ

 すでに多くのメディアで報じられているところだが、兵庫県尼崎市で、全市民46万人分の個人情報を保存したUSBメモリを尼崎市から業務を受託者していたBIPROGY(旧日本ユニシス)関西支社の関係社員個人が自分のかばんに入れたまま持ち歩き、かばんごと紛失した事件だ(INTERNET Watch)。結果的には数日後に発見されたが、情報の内容からもその行方が危惧されていた。かばんにいっしょに入っていた携帯電話の位置情報をもとに捜索したところ、紛失したと思われる場所の近くにあったということだ。しかし、メモリの中身を読み取られたかどうかは定かではなく、今後も調査が進めるとされている。また、情報漏えいだけでなく、この事件に便乗して、情報を持っていなくてもそれを匂わせるような詐欺行為なども懸念されるとしている(Impress Watch)。

 こうした事案を受け、MAMORIOが「リモートワーク勤務中における置き忘れや紛失の実態調査」の結果を公表した(CNET Japan)。それによると、「およそ半数の52.2%が業務に関する物品の置き忘れや紛失を経験している」と回答したという結果だ。

 未だ、社会的な情報に対する重要性の認識が低いと言わざるを得ない。情報管理について、各企業での抜本的な対策をする必要がある。加えて、位置情報の検知がこうした重大な事故で役に立つということもまた技術の進歩である。

ニュースソース

  • 兵庫県尼崎市、全市民46万人分の個人情報を保存したUSBメモリーの紛失を発表 住民基本台帳のほか、生活保護受給世帯や児童手当受給世帯の口座情報も[INTERNET Watch
  • 尼崎のUSBメモリ見つかる[Impress Watch
  • リモートワーク中のUSBメモリーなどの置き忘れ・紛失経験「52.2%」--報告はわずか13%[CNET Japan

2. まるでSF!? 「スマートコンタクトレンズ」の装着テストが始まる

 Mojo Visionが開発している「スマートコンタクトレンズ」の社内における装着テストが開始されたことが報じられている(CNET Japan)。なんともSF的な話題だ。記事によれば「Mojo Lensのハードウェアには、首からかけるプロセッサーが必要で、これがレンズとコンピューターの間で双方向に情報をワイヤレスで中継する」という構成だ。さらに「microLEDディスプレイ、短距離無線機、小型Armプロセッサーが搭載されている。加速度センサー、ジャイロスコープ、磁気センサーによって、アイトラッキングも可能」という仕様になっている。

 このレンズを使用すると、「視線によって制御されたヘッドアップディスプレイが宙に浮いているように見える」と説明されていて、一般的なARを眼鏡をかけることなく実現できそうだ。

 実用化までにはまだまだハードルもありそうな話ではあるが、将来的には医療用に転用できないのだろうか。

ニュースソース

  • Mojo Visionのスマートコンタクトレンズ、装着テストが開始--CEOが自らデモ[CNET Japan

3. エンターテインメント各社がWeb3を狙った共同事業を設立

 Web3の広がりを見据え、大手のエンターテインメント関連各社が事業化へ取り組みを開始している。この単語が多くメディアを賑わし始めたのわずか半年くらい前のことだが、すでに事業化のフェーズに入ったか。

 株式会社アミューズがWeb3領域でのエンタメ創出を目指す新会社「株式会社Kulture」と、Web3・メタバース特化ファンド「KultureFUND」を設立したと発表した(INTERNET Watch)。具体的な事業としては「アミューズが運営する、デジタルイベントのストリーミング配信サービス『LIVESHIP』のアップデートや、ブロックチェーン・NFTを活用したサービスの企画・開発」としている。

 また、サミー、KADOKAWA、グッドスマイルカンパニー、ウルトラスーパーピクチャーズの4社は「NFTサービスの企画・開発・運営会社『株式会社O-DEN』(株式会社オデン)」を設立した(Impress Watch)。事業としては「来たるべきWeb3.0の世界に備え、NFTの可能性・将来性を最大限に活用したサービスを展開する」としている。

ニュースソース

  • アミューズ、Web3領域でのエンタメ創出を目指す新会社「Kulture」設立、BABYMETALのプロデューサーも参画[INTERNET Watch
  • サミーや角川・グッスマ・アニメ会社がNFT新会社設立[Impress Watch

4. 長文投稿、NFT、年齢推定――SNSの新たな取り組み

 Twitterは、長文が投稿できる新機能「Twitter Notes」を発表した。すでに一部の国で導入されているが、現時点では日本からの閲覧はできないようだ。

 「Twitter Notes」は現在のところ「タイトルは100字、本文は2500字の制限がある。現時点でノートを執筆できるのは、4カ国の少数のライターのみ」となっている(ケータイWatch)。いずれ、利用範囲、閲覧範囲は拡大を指定していくことになるのだろう。これまでの文字制限が大きく緩和されることで、「ツイート」の使い方も変わってくることになるだろう。

 また、メタ(旧フェイスブック)はInstagramにおける「ストーリーズ」でNFT(非代替性トークン)のテストを実施すると発表したと報じられている(ZUU online)。記事からは詳細は不明だが「SparkAR(ARフィルター)を活用した画像や動画などをNFT化するテストなどを行うもの」とみられると書かれている。

 さらに、Instagramのユーザーが登録されている自らの年齢を18歳未満から18歳以上に変更する際に、「年齢確認を求める機能のテスト」を米国で開始したと発表した(ITmedia)。方法としては「短いセルフィー動画をアップロード」し、その動画からAIが年齢を確認するというもの。または、「18歳以上の自分の友達3人を選び、保証人になってもらう」か、「運転免許証やIDカードなどの身分証明書の画像をアップロードする」という方法だ。後者はすでにある方法だが、セルフィーからAIが年齢を推定するというのは新しい。問題はその正確性がどうかということろ。

ニュースソース

  • 2500字までの長文を投稿できる新機能「Twitter Notes」が一部で公開[ケータイWatch
  • Instagram、ユーザー年齢をAIで推定する機能のテストを開始[ITmedia
  • 米メタ、インスタグラムのストーリーズでNFTのテストを実施[ZUU online

5. 広がる交通機関での「Visaのタッチ決済」

 ビザ・ワールドワイド・ジャパンは「タッチ決済」に関する国内のデータを公表した(ケータイWatch)。それによると「2021年と2022年を比較した場合、公共交通機関における『タッチ決済』の取引件数は、38.1倍増加した」ということだ。バスや地下鉄、鉄道などの公共交通機関では「2022年6月時点で、18道府県で25の導入プロジェクト(実証実験含む)が発表もしくは展開済み」としている。交通系のICカードを使用しないで、クレジットカードのタッチ決済を使用するメリットは事業者にとっての導入コスト負担が軽減されること、そして利用者、とりわけ交通系ICカードを持たない人(あまり頻繁に利用しない人や海外から来訪した人)でもクレジットカードを持っている可能性が高いことからすぐに利用ができるという点だ。もちろん、処理の高速化などの対応も課題ではある。しかし、拡大傾向にあるということから、今後の展開には注目だろう。

 そのようななか、新たに西武バス、三井住友カード、レシップ、QUADRAC、ビザ・ワールドワイド・ジャパンの5社により、「西武バスが運行する一部の『空港連絡バス』において、『Visaのタッチ決済』による実証実験」(7月25日~2023年7月末まで)を実施すると発表されている(ケータイWatch)。まさに、海外からの来訪者にとっては利便性がありそうだが、支払い方法として、海外顧客に認知をしてもらうための施策も必要だろう。

ニュースソース

  • 西武バスの羽田空港行き車両で「Visaのタッチ決済」の実証実験、7月25日から約1年間[ケータイWatch
  • 1年で38倍増、電車やバスで広がる「Visaのタッチ決済」国内の最新事例とは[ケータイWatch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。