中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2022/6/16~6/23]
web3の特徴は「join(参加する)」――THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022 ほか
2022年6月27日 07:00
1. メタのVR技術の4つの要素――製品化までには数年か
メタ(旧フェイスブック)のが開発中のVR技術のプロトタイプを同社のマーク・ザッカーバーグCEOが公開したことが報じられている(ケータイWatch)。そのなかでVR技術の要素として「網膜並みの解像度」「焦点深度」「HDRにより自然な明るさ」を挙げている。示された画像では、従来の機器よりもはっきりとした文字が表示されていることが分かる。そのうえで、「まだ道のりは長いですが、今後数年のうちにこれらの技術を製品化できると思うと楽しみです」とコメントしたと伝えられていて、高品位なVRの環境整備はいましばらくかかりそうだ。
一方、アップルが「WWDC2022」で発表するのではないかとして期待を集めていたVR/ARヘッドセットは、結局、話題にも上らなかった。しかし、アナリストらは2024年から2025年になりそうだとみているようだ(Gizmode)。これだけ噂が先行するというのはこれも市場の期待を集めていることからか。
さらに、Facebook Japanは、VR空間で若者と政治家がディスカッションするイベント「メタバースで政治・選挙はどのように変わるか」を開催した(ITmedia)。記事によると「政治家と若者がVRヘッドセット『Meta Quest 2』をかぶり、MetaのVR会議室『Horizon Workroom』にアクセス。政治におけるメタバースの活用について議論した」ということで、参加した衆議院議員は「没入感がある」「政策の実証実験に使える」「法案提出を急ぎたい」などという感想を持ったことが報じられている。
2. YouTubeが日本上陸から15年
YouTubeは、2007年6月19日に日本語版のサービスが開始され、今年15年を迎えた(ケータイWatch)。そして、日本版公式ブログでは、日本におけるYouTubeのこれまでの展開について紹介している。そもそも、YouTubeは「2005年2月にPayPalの元従業員であるチャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリムの3人によって設立された」(Wikipedia)サービスである。当初は怪しい動画サイトという印象もあったが、いまでは多くの人が映像での情報を世界に配信できるインフラとして確立をしている。さらに、そこから巨額のマネタイズをするユーチューバーというクリエイターも多数生み出すに至っている。もちろん、社会的なインパクトを持つコンテンツも配信され、世界規模のメディアとしての地位も確立している。
タイミングを同じくして、米国のYouTubeは、「TikTok」と競合する縦長のショート動画投稿フォーマット「YouTubeショート」を視聴しているログインアカウントが月間15億人を超えたと発表している(CNET Japan)。なお、TikTokが2021年9月に発表した数字によれば、TikTokアプリの月間利用者は10億人を超えている。同じ段階での比較はできないが、YouTubeが急速に追いついていることは間違えなさそう。
ニュースソース
- 上陸から15年のYouTube、これまでを振り返るブログを投稿[ケータイWatch]
- YouTubeの「ショート」動画、月間視聴者が15億人を突破[CNET Japan]
3. PHR、リスキリング…新たに組織化される業界団体
新しい市場や産業が動き出すとそれに合わせて業界団体も組織されることが多い。事業者間でのさまざまな調整をしたり、新たなルールを定めたりする必要があるからだ。
まず、NTT、富士通、SOMPOホールディングスなど、パーソナルヘルスレコード(PHR)事業に関わる15社がPHRの活用を推進する組織を設立すると発表したと報じられている(日経XTECH)。「PHRとは健康診断の結果や処方薬情報、個人で日々測定する歩数や血圧のデータなど、個人の生涯にわたる健康医療情報」のこと。組織名は「PHRサービス事業協会(仮称)」で、2023年度中の設立を目指すとしている。
グーグルを主幹とし、国や地方自治体、企業など49団体が参加する「日本リスキリングコンソーシアム」が発足した(Impress Watch)。「リスキリング」とは人材のスキルをアップデートすること。「デジタル人材育成のため、様々な企業によるトレーニングプログラムや就職支援、副業・フリーランス・アルバイトなどの幅広い就業機会などを提供」するとし、2026年までに50万人の人材を育成することを目標としている。
ドローン・ジャパンは「国内ドローン関連製品・サービスの社会実装を加速する」ことを目的とし、ドローン関連企業の技術連携を可能にする「ドローン オープンプラットフォーム プロジェクト」を開始した(Impress Watch)。ドローン・ジャパンとイームズロボティクスのほか、NECソリューションイノベータ、パナソニックシステムデザイン、日本航空電子工業、古河電池など、要素技術を担うメーカーに加え、ACSL、エアロジーラボなど機体メーカーらがパートナーとして参加する。
ドローン関連ではさらに、一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA)と一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、民間資格である「ドローン建築物調査安全飛行技能者」を創設すると発表した(ドローンジャーナル)。この資格はビルなどの外壁調査にドローンを活用することを目的とした民間資格となる。こうした資格により、業務に特化した専門技能を高めていくことにつながる。
国際的には、メタバースの相互運用性向上に向けた新団体「The Metaverse Standards Forum」が設立されたことが報じられている(Impress Watch)。MetaやAdobe、Epic Games、ファーウェイ、イケア、Khronos Group、Microsoft、NVIDIA、Qualcomm、Sony Interactive Entertainmentなどが参加する。この団体の目標は「オープンなメタバースを構築するため、相互運用性について業界全体で協力するため」としている。必要な標準仕様を定める標準開発組織としての活動、用語の定義やガイドラインの作成などを行うという。
ニュースソース
- NTTや富士通など15社、健康医療データ活用の新組織を2023年度中に設立[日経XTECH]
- JUIDAとJADAが「ドローン建築物調査安全飛行技能者」教育事業を設立、ドローン外壁調査を促進[ドローンジャーナル]
- グーグルら49団体、デジタル人材を育成する「日本リスキリングコンソーシアム」[Impress Watch]
- 国内ドローン企業が連携する「ドローン オープンプラットフォーム」[Impress Watch]
- メタバースの相互運用性を向上 「The Metaverse Standards Forum」設立[Impress Watch]
4. 新たな音声メディアの動き
米国ではオーディオブックやポッドキャストなどの音声メディアが活況である。日本では派手にブレークをした感じに乏しいが、新たな音声メディアの取り組みも発表されている。
まず、スポーツ報知を発行する報知新聞社はロボットスタート株式会社の音声化サービス「Audiostart」を使用し、「スポーツ報知 新聞ヘッドライン」をリリースする(Media Innovation)。このコンテンツの配信先は「Google Podcast」「Apple Podcast」「Amazon Alexa」「Amazon Music」「Spotify」という主要なプラットフォームをカバーしている。内容は「記者がスポーツ報知の新聞紙面から見どころを厳選し、毎日配信する音声配信サービス」でとなっている。
また、パナソニックは「競技関係者やアスリートによる実況や解説を会場でリアルタイムに視聴できるCHEERPHONE」というの音声配信サービスの利用者にアンケートを行い、「スポーツ観戦時に試合会場でのリアルタイム音声解説サービスが体験価値やファンエンゲージメント(ファンの愛着心)向上に効果があることを確認した」と発表している(Web担当者フォーラム)。CHEERPHONEは配信・視聴にアプリのインストールが不要。URLやQRコードからアクセスが可能であることが特長。Jリーグやリーグワンなどで導入が進んでいるサービスだ.
ニュースソース
- 「スポーツ報知」音声コンテンツの配信開始・・・厳選ニュースをスマホ・PC・スマスピで無料配信[Media Innovation]
- パナソニックHDがリアルタイム音声解説サービスによるスポーツ観戦の価値向上を確認[Web担当者フォーラム]
5. web3の特徴は「join(参加する)」――THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022
デジタルガレージとDG Labは、6月14日に東京都内で「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022」を開催した。主要なテーマは「web3が実現する分散型社会の未来」である。
デジタルガレージの共同創業者であり、取締役兼専務執行役員Chief Architectの伊藤穰一氏は「Web1.0が世界のどこからでも情報を閲覧できる『read(読む)』を実現」し、「Web2.0では、SNSの登場により誰もが情報を発信できる『write(書く)』世界になった」。そして、「web3の特徴を一言で言い表すなら『join(参加する)』だ」と象徴的に説明した(INTERNET Watch)。つまり「『ブロックチェーン上に構築されるDAO(分散型自律組織)では、トークンを所有することで投票ができ、組織の運営に直接関われる』と、join(参加)によって、組織や社会を大きく変える可能性」があるという。
また、衆議院議員で初代のデジタル大臣を務めた平井卓也氏も登壇し、「新しい価値のデジタル化が成長戦略につながるとして、国としても取り組んでいると話した」と述べたことが報じられている(INTERNET Watch)。
ニュースソース
- web3の特徴は「join」―デジタルガレージ、web3を日本で加速させるカンファレンスを開催[INTERNET Watch]
- 「日本がweb3の中心に返り咲くチャンスは残されている」―事業家や国会議員が「web3立国」に向けて議論[INTERNET Watch]
- テクノロジーとインスピレーションが交差する、NFTアートの現状と未来[INTERNET Watch]