中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2022/6/30~7/7]

情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~「令和4年版情報通信白書」公表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. au、UQ、povoでの通信障害――約86時間のまとめ

 先週はKDDI(au、UQ、povoなど)の大規模通信障害が大きく報じられた(ケータイWatch)。影響を受けたのは「最大で3915万件」と、KDDI史上で最大の通信障害となった。以下のニュースソースでは時系列に報道のヘッドラインをまとめておいた。なお、2021年10月14日~15日には、NTTドコモで「音声通話は約460万人、データ通信は830万人以上」に影響を及ぼしたとみられる通信障害を起こしているが、今回はその教訓は生かされなかったようだ。

 そして、この障害により、KDDIの通話やデータ通信が使えなくなったことはもちろんのことだが、さまざまなIoTの機器に対しての影響もあったことも報じられている。例えば気象観測のアメダスでは一時期、観測データの収集ができなくなっていた。

 情報通信技術に支えられた社会がこれからさらに進展することは間違いない。今後、こうした規模の障害が発生しないよう、通信事業者が個別に事前に対策を再検討することは必要だが、大手とは言えども民間企業が個別に信頼性を高めて、完全に障害が起きないサービスを提供することは現状では難しいのではないかとも感じる事案と言える。

 国としても事業者に対して「行政指導」をするだけでなく、異常時には事業者間で、何らかのインフラの融通をするような仕組みや制度など、社会的なフェイルセーフも考える必要はないのだろうか。

ニュースソース

  • au、UQ、povoで通信障害[ケータイWatch
  • auの通信障害、楽天モバイルのパートナー回線やMVNOにも影響[ケータイWatch
  • ヤマト運輸で通信障害、au障害の影響か[ケータイWatch
  • 「au通信障害」発生からまもなく半日、復旧の目処立たず[ケータイWatch
  • 通信障害になったらデジチケは? モバイルSuicaは? 公衆Wi-Fiは?[ケータイWatch
  • 消防庁、KDDI通信障害で「緊急時は固定電話や他社携帯電話から119番を」[ケータイWatch
  • au通信障害、お客さまセンターなど窓口混雑[ケータイWatch
  • au通信障害の原因は「設備故障による通話(VoLTE)交換機での混雑」、緊急地震速報は受信可[ケータイWatch
  • au通信障害が回復傾向へ、朝には復旧目指す[ケータイWatch
  • au通信障害は70%程度回復[ケータイWatch
  • au通信障害、西日本は11時に復旧作業終了、東日本は17時30分に終了予定[ケータイWatch
  • KDDI髙橋社長が「au通信障害」謝罪、現時点で判明している経緯とは[ケータイWatch
  • auの通信障害、金子総務大臣「大変遺憾」[ケータイWatch
  • auの通信障害、KDDI髙橋社長「iPhoneは通信できることもあった」[ケータイWatch
  • 「au通信障害」KDDI髙橋社長の会見質疑詳報、なにが起きたのか、「ドコモの教訓」は?[ケータイWatch
  • au通信障害、「データ通信はおおむね回復」[ケータイWatch
  • KDDIの通信障害、4日13時時点でも音声通話つながりにくく[ケータイWatch
  • auの通信障害、影響した分野まとめ[ケータイWatch
  • auとUQ mobileのオンラインショップ、販売停止中[ケータイWatch
  • au通信障害、「音声通話・データ通信がほぼ回復」[ケータイWatch
  • KDDIの通信障害の「全面復旧」判断は明日夕刻めど、ネットワーク状況は障害前の水準に[ケータイWatch
  • KDDIの通信障害、現在はほぼ回復――つながらないならスマホの再起動を[ケータイWatch
  • 「au通信障害」KDDIの会見質疑詳報、なぜここまで障害が長引いたのか? スマホ時代の課題とは?[ケータイWatch
  • 金子総務大臣がKDDI通信障害の情報周知を問題視、幹部派遣は「技術に精通した職員」[ケータイWatch
  • KDDIの通信障害、ソラコムのIoT回線にも影響していた[ケータイWatch
  • au通信障害が「完全復旧」、5日15時36分に[ケータイWatch
  • 「au通信障害」完全復旧のKDDI会見質疑詳報、総務省幹部も入った復旧作業の舞台裏は[ケータイWatch

2. 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~「令和4年版情報通信白書」公表

 7月5日、総務省は令和4年版情報通信白書を公表した(総務省)。昭和48年の公表以来、今回で50回目となる。それをふまえ、今年の白書では「情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~」というテーマで構成されていて、これまでのICTサービス・技術の進化やICTを取り巻く国際情勢の変化を振り返るとともに、ICT分野における日本が直面する現状と課題、今後の日本社会でICTが果たす役割を分析している。本文の入手方法は総務省のウェブページ(無料)、書籍(有料)、専用アプリとなっている。

ニュースソース

  • 令和4年「情報通信に関する現状報告」(令和4年版情報通信白書)の公表[総務省

3.「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」中間答申の内容を公表

 6月30日、総務省は「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方 -強靱で活力のある2030年代の社会を目指して-」(令和3年9月30日付け諮問第27号)に関する情報通信審議会からの中間答申を受け、その内容を公表した(総務省)。

 Beyond 5G(6G)は「今後あらゆる産業や社会活動の基盤となる次世代情報通信インフラ」である。この答申には「Beyond 5G(6G)について、国として集中投資すべき重点研究開発分野を特定し、研究開発と社会実装を加速化する『研究開発戦略』、開発成果の早期かつ順次のネットワーク実装を進める『社会実装戦略』、研究開発戦略と一体となった『知財・国際標準化戦略』、世界市場をリードする『海外展開戦略』を強力に推進していく方針等」が含まれている。

 中間答申は本文のほか、概要や全体像というサマリーも公表されており、要点が分かりやすくまとまっているので、一度は目をとおしておくべきだろう。

ニュースソース

  • 「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方 −強靱で活力のある2030年代の社会を目指して−」(令和3年9月30日付け諮問第27号)に関する情報通信審議会からの中間答申[総務省

4. 医療情報の漏えい事案――そして、繰り返されるUSBメモリ紛失事件

 兵庫県尼崎市の全市民46万人分の個人情報を保存したUSBメモリを委託業者の協力会社社員が紛失した事件は記憶に新しい。幸い、USBメモリは発見されたが、内容が読み取られてしまったかどうかは定かではない。

 そして今週、東京都三鷹市の杏林大学医学部付属病院は、同院の医師が患者の個人情報入りUSBメモリを院外に持ち出し、紛失したと公表した(ITmedia)。記録されていたのは「患者27人の氏名やID番号、終夜睡眠ポリグラフ検査データ、睡眠時の状態を記録した動画」とされている。

 個人情報など、機密性のある情報を管理区域以外に持ち出すことが禁止されているにもかかわらず、利便性などを優先するばかりに持ち出されてしまうことは、事件化しないだけで日常的によくあることなのだろう。

 データの利用者や管理者のモラルの問題に任せるだけでなく、もう少し踏み込んだ対策を義務化するような必要もあるのか。

 そして、岐阜県岐阜市の幸紀会安江病院では「院内のコンピュータが不正アクセスを受け、患者と新型コロナワクチン被接種者の個人情報が最大11万1991件流出した可能性がある」と発表している(ITmedia)。医療情報のデジタル化とそこから得られる情報の分析は今後の知見として役立つとされ、各所でのDXへの取り組みも進んでいるが、こうした「不正アクセス」という敵とはどう向き合うべきか、改めて問われている。

ニュースソース

  • またUSB紛失 患者の個人情報入り、杏林大病院 院内持ち出し禁止のはずが[ITmedia
  • 岐阜県の病院に不正アクセス コロナワクチン接種者など最大11万件超の個人情報が流出か[ITmedia

5. メタバース――コンテンツやメディア体験は広がるか

 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)が小学館のメタバースプロジェクトに参画すると発表した(Markezine)。これまで両社はそれぞれにメタバースへ取り組んできたが「今後、両社は連携を強化し、XR・メタバース領域におけるコンテンツとコミュニティ形成のほか、次世代のメディアコミュニケーション体験の策定・開発を実施」する予定で、また、「DACが保有するメタバース広告のアセットを用いた事業共創」も検討していくとしている。

 また、NTTコミュニケーションズはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する東京都渋谷区の「代官山蔦屋書店」でVR(仮想現実)技術の実証実験を行うことを発表した(日経XTECH)。体験者はヘッドマウントディスプレイを装着し、バーチャル空間上に再現されたイラストレーターの永井博氏の作品の世界観に没入できるというもの。このバーチャル空間では世界観を体験するだけでなく、作品集やグッズを購入できる。この実証実験では「バーチャル空間での購買体験を検証し、小売店舗における新ビジネスの可能性を探る」ことが主題である。

 そして、アクセンチュアは、世界のテクノロジートレンドに関する調査レポート「Accenture Technology Vision 2022」に関する説明会を報道関係者向け行った(ZDnet Japan)。その内容を報じた記事によると「メタバースは“連続体”として捉える必要があるという。メタバース連続体(Metaverse Continuum)には、『テクノロジーがつながる』『仮想と現実を行き交う』『企業と顧客の接点が広がる』という3つの要素があり、その進化によってメタバース連続体が人々の生活を取り囲み、企業に再構築と変革をもたらすことになる」と説明されている。同社の調査では「全世界で98%の経営幹部は『長期戦略の立案において、経済や政治、社会よりもテクノロジーの進歩を信頼する』とし、71%は『メタバースは自社にポジティブなインパクトをもたらす』と回答した」ということだ。

 各社が取り組んでいることは多く報じられているところだが、日本の市場としてはいまだブレークするには至っていないが、ちょっとしたきっかけで花開くタイミングが来るということか。

ニュースソース

  • DACが小学館のメタバースプロジェクトに参画 XR・メタバース領域のコンテンツやメディア体験の開発へ[Markezine
  • NTTコムが代官山・蔦屋書店でVRイベント、バーチャル空間での購買体験を検証[日経XTECH
  • メタバースの遍在化がビジネスの再創造を促す--アクセンチュアが4つの技術トレンドを定義[ZDnet Japan
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。