清水理史の「イニシャルB」

“光の開通前も5Gでつながる”だけじゃない! 圧倒的な熱量で作り込まれたKDDIのハイブリッドホームルーター「Aterm HY01」

「auひかりプラス」専用ルーターについて開発担当者に聞く

写真左から、KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 部長 相原円氏、同社パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 サービス企画1グループ グループリーダー 市川亮平氏、同社パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 端末2グループ コアスタッフ 髙橋達也氏、同社パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 部長 高橋知彦氏、

 KDDIから登場した「auひかりプラス」は、光回線と5Gのモバイル通信を組み合わせることで、光回線の工事を待たずに5Gでインターネットを利用可能にするサービスだ。

 注目は、光回線と5Gの両対応となるWi-Fi 7ルーター「Aterm HY01」だ。はっきり言って、このサービスの主役は、このルーターだ。開通までのつなぎとして使え、その後はバックアップにもなるだけでも魅力的なのだが、それだけにとどまらないこだわりが詰め込まれている。KDDIの開発担当者に話を聞いた。

auひかりプラス公式サイト

開発陣に共通する「つながる先」の解像度の高さ

 今回、KDDIにインタビューを申し込んだとき、実はちょっと不安だった。

 今回の主役はハードウェアとしての「Aterm HY01」。「Aterm」の名前からもわかる通り、開発はNECプラットフォームズとなる。回線の話ならKDDI本体でもかまわないが、放熱設計は? 2種類のアンテナの工夫は? とか、突っ込んだ話をしても大丈夫だろうか? と心配になっていた。正直、高輪じゃなく、品川で降りて掛川(NECプラットフォームズの開発・製造拠点がある)に向かった方がいいんじゃないか? とさえ思っていた(編集部補足:取材の申し込みにあたり、NECプラットフォームズの方にも伺うことを想定しつつ質問リストを送付したところ、KDDIのメンバーでお答えしますとの返信をいただいていた)。

 ところが、話を聞いてみると、まあ熱量が高い、高い。普段のインタビューでは、僕が一方的に疑問や思いをぶつけることが多いのだが、「待ってました」とばかりに、どうしてそうなったのか? ここがポイントで、と楽しそうに苦労を語ってくれる。今回は完全に気圧された格好だった。

 それもそのはずで、今回の製品は、ハードウェアの設計担当者がNECプラットフォームズに通いつめ(掛川にも何度も足を運んだそう)、一緒に苦労しながら作り上げたものになっているとのこと。サービス担当者も、この業界が長い「マニア」の人物で「こうしたらもっとよくなる」という思いで、今回のサービスを設計していることが、ひしひしと伝わってくる。

 しかも、話を聞いた4氏はいずれも「解像度が高い」。思いだけで作られたサービスや製品は、得てして自己満足に終わってしまうものだが、今回のチームは、誰もがつながる先の風景やシナリオを明確に描いている。どんな問題を解決したいのか? 誰に使って欲しいのか? 何を変えたいのか? どんな困りごとを解決すべきか? こうした意思が言葉の端々から伝わってくる。

 要するに、この「auひかりプラス」や「Aterm HY01」は、思いつきや技術だけで作られた製品ではないのだ。このデザインにも、サイズにも、スペックにも、きちんと意味があり、それが必ず利用者のメリットにつながっているのだ。

取材中の様子

「auひかりプラス」とは

 家庭でインターネットに接続するために光回線を申し込んでも、工事が終わるまでは使えない。加えて、工事日もなかなか思い通りにならない。そんな声を受けて誕生したのが、今回の「auひかりプラス」というサービスだ。本稿執筆時に、ちょうど「どこの光でしょう?」というテレビCMも見かけるようになったが、現在、業界でも注目されているサービスとなっている。

 相原円氏(KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 部長)は、サービスの開発経緯についてこう語った。

 「お客様からよく耳にする光回線の課題として多いのは、やはり開通工事までの期間が長いということです。もちろん、工事を短縮することに努力はしていますが、やはり人がかかわる作業には限界があります。そこで、この『つなぎ』の期間に、5Gと一体となってサービスを提供することはできないか? というところから検討が始まりました」という。

 同様に開通までの期間にモバイルルーターを貸し出すサービスも存在したが、開通後の設定変更や返却という手間がかかった。相原氏によると、「1回つなげば、5Gでの利用開始、そして工事後に光回線の速度にアップグレードされるという『シナリオ』を作りたかった」ということだ。

KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 部長 相原円氏

 しかも、この5G回線は、光回線の開通後はバックアップとして活用できる。万が一、災害などで光回線が使えない状態になっても、モバイル回線と電源が利用できれば5G回線でインターネット接続を利用できる。このあたりの詳細は、後述するが、相原氏によると「耐障害性というか、いざというときのダイバーシティというか、5G回線を付加価値としてバンドルするという発想で開発を進めました」だそうだ。

 工事を待つ間の不便さを解消し、開通後にも役割を残すというだけでも、なかなか面白いアイデアだが、記憶に新しい今夏の大雨のような災害時の対策という点を考えても価値の高いサービスと言えそうだ。

 ただ、筆者も、読者の皆さんもそうだが、このサービスがリリースされたときに、「材料はそろってたのに、どうして今までやらなかったのだろう?」という疑問はあったはずだ。

 この点について相原氏は、「コストとか性能といったところが影響した部分もあります。5Gもそうですが、10GbpsやWi-Fi 7対応などで、価格が上がり過ぎてしまうと難しい面があります。こうしたバランスが取れる見通しが立ったことで、チャレンジすることになりました」と説明した。

光回線の開通を待たずに、5G回線で利用できる(「auひかりプラス」発表会の説明資料より)
災害時など光回線の障害発生時には、5G回線をバックアップ回線として使える(「auひかりプラス」発表会の説明資料より)

KDDIなのに「コラボ光」にも対応!!

 相原氏が使った「チャレンジ」という言葉は、実は結構大きな意味を含んでいる。というのも、今回のサービスはネットワーク側の選択肢が複数存在する。

 今回の「auひかりプラス」は、BIGLOBE、@nifty、So-netの各プロバイダーとの提携によって提供されるサービスとなっている(ちなみに、現状のauひかりが対応するau one netでの提供は、現時点では予定されていないという)。そして、これらのプロバイダーは、KDDIの「auひかり」を使ったサービスだけでなく、NTT東西の回線を使った「コラボ光」のサービスも提供している。

 「ネットワーク面での今までとの最大の違いは、『auひかりプラス』というサービスの枠組みの中で、auひかり回線だけでなく、コラボ光の回線にも対応している点です。地域によってはauひかりでは1Gbpsのサービスしか提供できないケースがありましたが、コラボ光に対応することで、より広いエリアで10Gbpsのサービスを提供可能になっています(相原氏)」という。

 なお、コラボ光でauひかりプラスを利用できるのは、現時点ではBIGLOBEと@nifty(So-netは非対応)で、両サービスのIPoE接続と組み合わせて提供される。

 これは、ちょっと想像できる以上にスゴイことだ。詳細は後述するが今回のAterm HY01は電話サービス(モバイル回線を利用した固定電話)もサポートしているし、将来的にはネットワーク側の障害を自動検知して回線を切り替えることも検討している。こうした複合的なサービスを他社回線も含めて対応するというのは、正直、僕が担当者なら面倒なので避けたい。

 今回のauひかりプラス、およびAterm HY01は、「やるならトコトン作り込もう」という、非常に凝った内容になっている点が印象深い。

ありそうで意外とない「イイところを突いた」10Gルーター

 さて、肝心の「Aterm HY01」の話に入ろう。

 このルーターは、市販製品も含めた現状のWi-Fi 7ルーターと比べても、かなり凝った構成になっており、いろいろなWi-Fiルーターを見てきた筆者にとっても新鮮で、欲しいと思えるものに仕上がっている。

 詳細なスペックは以下のサポートサイトを参照してもらうとして、ポイントだけ紹介すると、Wi-Fiはトライバンド対応の2ストリーム構成で、速度は5764(6GHz帯)+2882(5GHz帯)+688(2.4GHz帯)Mbps。有線は、WAN側が10Gbps×1、LAN側が10Gbps×1+1Gbps×1。無線WANとして5G/4G(下り最大2.7Gbps/上り最大218Mbps)が搭載される構成になっている。

▼Aterm HY01のサポートサイト
Aterm Support Information「Aterm HY01」

 実は、このWi-Fiトライバンド2ストリーム、有線WAN/LAN 10Gbpsという組み合わせは珍しく、市販ルーターを含めて比べても「イイところを突いたなあ」と思える構成になっている。

 本家Atermでも、WAN/LAN10Gbps対応のAterm 19000T12BEは4ストリーム対応の高級機だし、価格が手ごろなAterm 7200D8BEは6GHz帯が使えないデュアルバンドでLAN側も2.5Gbps対応となっている。この「トライバンド2ストリームの無線+WAN/LAN10Gbps」という組み合わせは非常に少ない。

 筆者の知る限りでは、エレコムのWRC-BE100XSとアイオーデータのWN-7T100XXRが5765+2882+1376Mbps、WAN/LAN10Gbps対応で近いが(2.4GHzが高速で1Gbpsポートが多い)、この2台以外には見当たらない。TP-LinkのArcher BE550 ProやASUSのRT-BE92Uが無線スペック的に近いが、10GbpsポートをWANに使う構成ではLAN側は最大2.5Gbpsとなるし、BuffaloのWXR9300BE6PもLAN側1Gbpsだ。

 エレコムのWRC-BE100XSとアイオーデータのWN-7T100XXRも市場のニーズをよく捉えた製品だが、今回のAterm HY01は、これらの製品と比べても、5G対応、電話対応、コンパクトサイズ、高いデザイン性と、優位な点がいくつかある。

 NECプラットフォームズは、Atermシリーズとしてこの製品を市販ラインアップに加えた方がいいんじゃないか? と思えるほど、非常に市場で競争力のある製品になっている。

 正直、LAN側を2.5Gbpsや1Gbpsのみにしてしまう選択肢もあったと思うが、高橋知彦氏(KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 部長)は「LAN側ポートの構成に関する議論は結構しました。やっぱり通信屋として、10Gサービスといったときに、WAN側だけでなくLAN側も含めたトータルで10Gじゃないと、10Gサービスとは言えんだろう、という強い要望もありまして」と語る。

KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 部長 高橋知彦氏

 実際に今回の製品開発を担当した髙橋達也氏(KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 端末2グループ コアスタッフ)は、その経緯をこう語る。

 「サイズとコストをうまくバランスさせるために、どのスピードのポートをどれだけ搭載するのかには悩みました。やりたかったのは、やっぱり有線でも無線でもエンド to エンドで10Gbps回線の性能を生かせる体験をお届けすることです。トライバンド対応にして、6GHz帯で320MHz幅で通信できるようにしたのもそうですが(筆者注:6GHz帯の利用には月額770円のWi-Fiパックの契約が必要)、10Gのサービスとして提供するならLAN側も10Gでなければならないという考えがありました(髙橋達也氏)」という。

KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 システム開発本部 プロダクト開発部 端末2グループ コアスタッフ 髙橋達也氏

 また、「それ以外の機器の接続用に1Gbps対応のポートも1つ搭載しています。これについても最後まで議論しました(髙橋達也氏)」という。「複数台の機器をつなぐためにハブを買ってもらうという考え方もあるかと思いますが、やはり、そうした手間をかけることなく、有線でつなぐものは、できるだけカバーできる構成にしています。現状の利用状況の調査も含めて、最終的に搭載を決定した経緯があります(髙橋達也氏)」ということだ。

 話を聞くほど、サービスとして届けたいものと、そのために作りたいルーターの姿が、次々に出てくる。このあたりは、サービスの設計を中心となって進めた相原氏も、宅内側の仕様はこだわったポイントであり、製品を開発するメンバーに負担をかけた部分だったと振り返る。

 取材現場でKDDIが実際の回線で測定した例も見せてもらった。有線接続のPCで約7Gbps、320MHz幅のWi-Fiで接続したスマートフォンで約3Gbpsの速度が出ていた。もちろん、実際の速度は接続環境や時間帯などで変わるが、これだけ出れば、10G回線を使う意味はわかりやすい。

KDDIが実施した計測結果の一例

 Aterm HY01は「つなぎとして5Gで使える」ことに注目されがちな製品だが、光回線利用時に、しっかりと10Gbpsの性能を堪能できる、高速なルーターである点にも注目だ。

10G有線と5Gモバイルをファンレスで

 もちろん、高い要求にこたえるスペックを詰め込むとなれば、筐体設計も工夫しなければならない。

 Aterm HY01は、従来のホームゲートウェイとは少し印象が異なる、すっきりした外観をしている。髙橋達也氏によれば、「5Gの時は窓際、光回線開通後は引き込み口の近くと置き場所が変わる場合もありますので、どんな場所に置いても違和感がない、置きやすいデザインと形状にしました」という。

もちろん、形状の理由はデザインだけでない。10Gの有線LANに、5Gのモバイル通信、トライバンドのWi-Fi。これらを1台に入れるとなれば熱対策が欠かせない。

 髙橋達也氏によると、「HY01では、セルラー側の部品とWi-Fi側のアンテナを上下に分け、内部の仕切り板を使って熱の流れを調整しています。上に向かう熱を単純に上部から逃がすのではなく、側面にも回し、筐体全体に分散させる構造にしました」ということだ。

 KDDIには筐体の表面温度に関する設計基準として上限60℃という目安があるとのことで、「一部が熱くなりすぎないようにする熱設計をかなり意識し、工夫しました(髙橋達也氏)」ということだ。

 もちろん、ファンを搭載するという手はあるが、髙橋達也氏によれば「ファンを使うことは、当初から検討していませんでした」という。可動部品を増やさず、長く使える機器にすることを重視したのが大きな理由だが、静音性も重視している。高橋知彦氏の「やっぱり静かな方がいいですからね」という言葉が印象的だった。

 実物を見ると、サイズも本当に小さい。取材中、実機を持ち上げてみたのだが、筆者は、思わず「これ、本物ですか?」と軽さに驚いてしまった。通常、10Gbps対応、それもWAN/LAN両対応の機器は、放熱のために内部に巨大なヒートシンクが搭載されており、本体はズシリと重い。

 そのつもりで本製品を手に取ると、拍子抜けするほど軽い。実際、本製品の重量はわずか0.8kgしかない。前述した同等スペックのエレコムWRC-BE100XSは1.7kg、アイオーデータWN-7T100XXRは1.8kgだ。つまり、半分以下の重さしかない。同じAtermシリーズのAterm 7200D8BE(デュアルバンドでLAN側2.5Gbps対応)と同じ重量だ。いや、これも技術的にはスゴイことで、数々のWi-Fiルーターを手に持ってきた筆者の経験からすると、信じられないくらいにコンパクトで軽い。

「ファンを使うことは、当初から検討していませんでした」と、製品開発を担当した髙橋達也氏より、実機を見ながら詳細な説明を受けた。この後、筆者も持ってみて軽さに驚く

 髙橋達也氏によると、「大きいと、ユーザー目線で置き場所に困るとか、目立つなどの理由で隠されてしまったりすることがあります。すると、無線の性能を生かしにくくなってしまうので」と、2色を使った外観でスリムに見せる視覚的な効果も意識しているということだが、本製品は見た目だけでなく、実際にコンパクトだし、軽い製品に仕上がっている。

黒や白1色のWi-Fiルーター/ホームルーターが多い中、Aterm HY01は黒とグレーの2色でスリムに見せている

 LEDを消せる点も、筆者としてはうれしいポイントだ。髙橋達也氏によると、「夜にランプが明るいという声は、過去にも寄せられていた」そうで、5G、光回線、コラボ光といった状態を確認するための表示方法と合わせて、NECプラットフォームズと細かく詰めたということだ。

 このほかアンテナにも工夫がある。もともと、NECプラットフォームズのAtermシリーズは、基板上に設置可能な独自の小型アンテナ技術を持っているが、今回の製品は直交アンテナを採用することで、スマートフォンの向きの変化に対応できるような高性能なアンテナを内蔵している。「5Gの窓際でも、光回線の中央でも、電波が広く届くように無指向性のアンテナで広くWi-Fiエリアをカバーすることも意識しています(髙橋達也氏)」ということだ。

光回線の開通後も活用できる5G

 5Gによるバックアップについては、取材時点では、光回線側のLANケーブルをルーターから抜くことで、モバイル回線を利用する仕組みとなっており(ルーターの再起動も必要)、障害を検知して自動的に切り替える機能は、2026年度内のファームウェア更新に向けて開発を進めている段階だという。

この自動切り替えも、話を聞くと簡単ではないなと感心してしまった。

 例えば、自宅のケーブルが抜けたことを検知するだけならわかりやすい。しかし、光回線が使えなくなる原因は、自宅の近くにあるとは限らない。地域の設備や、その上位のネットワークで障害が起きることもある。

 市川亮平氏(KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 サービス企画1グループ グループリーダー)によると、「過去の障害事例を分析し、地域の設備が水没するようなケースも含めて、検知できるように設計を進めています」という。

KDDI株式会社 パーソナル事業統括本部 事業戦略本部 事業推進部 サービス企画1グループ グループリーダー 市川亮平氏

 さらに、今回のauひかりプラスでは、前述したように自社回線を使う場合だけでなく、コラボ光を使う場合もあり、プロバイダーも異なる。さまざまな構成で、どのような状態を障害として捉え、切り替えるかを考えなければならない。切り替わる側のモバイルネットワークにも、受け入れる準備が必要だ。広い範囲で光回線が使えなくなれば、同じ地域のユーザーが一斉にモバイル側へ移る可能性もあるため急激な混雑も想定しなければならない。

 相原氏は、「将来的なスムーズな切り替えを目指しつつ、まずはユーザーの操作を必要とせず、つながらない状態を解消することを目標としています」と説明する。

 個人的には、こうした切り替えが発生したときに通信中のセッションまで維持され、何事もなかったように使い続けられることを願いたいが、このあたりは、今後の実装を待って確かめたい部分だ。

 前述したように、Aterm HY01には電話機も接続できる。KDDIが提供する電話サービス「電話(K)」契約時は、KDDIのモバイルネットワークを使い、VoLTEで電話を提供する仕組みになっている。光回線でデータ通信をしていても、電話はモバイル側を使うという構成だ。

 つまり、5Gは、光回線開通までのつなぎだけでなく、さまざまな役割を持っていることになる。

 Wi-Fiの6GHz帯を有効化する「Wi-Fiパック」を契約すると、電話(K)向けの「迷惑電話発着信ブロック」も追加料金なしで利用可能となっており、危険な電話の着信だけでなく、発信もブロックする安全な電話へとアップグレードすることもできる。

 このほか、スマートフォン向けの「auひかり」アプリに実装されたセキュリティ機能の「ホームネットワークプロテクション」もWi-Fiパックで利用可能となっており、市川氏によると「ウイルス対策ソフトをインストールできないIoT機器も保護できます」ということだ。

KDDIブランドのWi-Fiルーター

 以上、KDDIに「auひかりプラス」および「Aterm HY01」について話を聞いた。Aterm HY01は、Wi-Fiルーターと5Gホームルーターを合わせたという単純な話ではなく、5Gや他社回線、電話を含めた複雑なネットワークに対応できる凝ったルーターとなっており、無線や有線のスペック、デザイン含めて、非常に競争力のある製品に仕上がっている。

 今回の話を聞いていて感じたのは、価格に合わせて何を削るかという話よりも、サービスとして何を届けるべきかという話が常に先にある点だ。そして、それぞれの担当者が、こうしたイメージを非常に高い解像度で自分の中に持っている。

 個人的には、回線事業者が提供するレンタルルーターは、「専用機」としてもっとシンプルに設計されるものとばかり思っていた。それが話を聞いてみれば、ハードウェアは凝っているし、コストもかかっているし、他社回線も想定したソフトウェアになっていたり、電話も使えたりと、まあ、とにかく凝りまくっている。

 誰に話を聞いても、サービスやルーターの表面的な話では終わらない。それをどこに置き、何につなぎ、誰がどう使うかという話につながっている。もちろん、一般的なルーターメーカーにもこうした視点はあるが、実際にサービスを提供している事業者としてユーザーとの接点がより強い印象がある。

 もちろん、最終的な形にしたNECプラットフォームズの技術力の高さあっての製品と言えるが、なるほど、KDDIという会社が本気でWi-Fiルーターを作ると、こうなるのかと感心した。

今回取材を行った部屋には光回線がなく、光回線での速度は前掲の例を見せてもらったのみ(有線接続のPCで約7Gbps、320MHz幅のWi-Fiで接続したスマートフォンで約3Gbps)だったが、5G回線で接続してWi-FiでiPhone 18 Proを接続したときには、fast.comで770Mbpsの速度が出ていた
清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中