第119回:インターネット経由やDIMORAで
DIGA「DMR-E500H」に外出先からアクセス



 DMR-E500Hのネットワーク機能を利用すると、録画した映像をネットワーク上のPCで再生できる。これをWAN、つまりインターネットからも使えるかどうかを検証してみた。また、同社がDIGAシリーズ向けに提供しているインターネット経由での予約録画サービス「DIMORA」についても同様に検証してみることにしよう。





インターネット経由で映像を再生する

DMR-E500H

 前回、DMR-E500Hで録画した映像を同一ネットワーク上のPCで再生・転送する方法を紹介したが、気になるのは、この機能をインターネット経由でも使えるかどうかだ。これが可能であれば、場合によっては公衆無線LANサービスやインターネットカフェなどから自宅にアクセスして、映像を楽しむことが可能となる。決して万人向けの機能とは言えないが、こういった機能を求めているユーザーもいるのではないだろうか。

 まずは、MPEG-4の再生から試してみよう。通常、MPEG-4を再生するは、ネットワーク上のPCからブラウザを利用して「DIGA MANAGER」にアクセスすればいい(アドレスはDMR-E500HのIPアドレス)。ということは、理論上はインターネット経由でも同様の方法でDIGA MANAGERにアクセスすればMPEG-4の再生が可能なはずだ。

 そこで、ルータでポート80をDMR-E500Hに転送するように設定し、インターネット経由でアクセスしてみたが、残念ながらDIGA MANAGERのページを表示することはできなかった。内部的にどのような設定になっているのかはわからないが、どうやらLAN内部からしかアクセスできないように制限されているようだ(TTLが制限され、パケットが届かないのではないかと考えられる)。仮にポートフォワードなどで利用可能になったとしても、セキュリティのことを考えると常にポートを開放しておくわけにもいかないので、現実的とは言えないだろう。


ルータでポート80をDMR-E500Hにフォワードしてみたが、残念ながらインターネット経由でDIGA MANAGERに接続することはできなかった




PPTPとSoftEtherでチャレンジ

 というわけで別の方法を試してみることにした。試したのは、VPNとSoftEtherの2種類だ。どちらもインターネット経由で仮想的なLANを構築できるので、前述した方法よりも実現できる可能性は高いはずだ。

 まずは、VPN(PPTP)だが、Windows XPの着信接続とバッファローの「WHR2-G54V」(PPTPサーバー機能搭載無線LANルータ)の両方でPPTPサーバーを構築して試してみたところ、いずれの場合も問題なくDIGA MANAGERを表示することができ、MPEG-4の再生が可能だった。再生された映像の品質もLANで利用したときとほぼ同じでスムーズだ。


バッファロー製の「WHR2-G54V」のVPN(PPTP)機能を利用すれば、外出先から手軽に自宅に接続することが可能。サーバーPCを用意する必要がないため、手軽にリモートアクセス環境を構築できる

 一方、SoftEtherを利用した場合も、同様に問題なく利用できた。LAN側のPCにSoftEtherの仮想HUBをインストールし、ルータで接続に利用するポート(7777かHTTPS)をフォワードする設定にしておく。この状態で、外出先のPCからSoftEtherのクライアントを利用して接続すれば、同様にDIGA MANAGERの利用が可能だ。


SoftEtherを利用した接続も可能。LAN側に仮想HUBとして利用できるPCが存在する場合(常に起動させておく必要がある)は、この方法でインターネット側からMPEG-4を再生することも可能だ

 このように、ルータのポートフォワードだけでは不可能だが、PPTPやSoftEtherなどを利用することで、外出先のPCをあたかもLANの一員のように見せかければ、問題なくインターネット経由でもDIGA MANAGERの利用が可能というわけだ。XPの着信接続やSoftEtherの場合、着信を受け付けるPCを用意しなければならないので、実際には、WHR2-G54Vのようなリモートアクセス機能を搭載したルータを利用するのがベストだろう。


インターネット経由でDIGA MANAGERを使ってMPEG-4を再生したところ。自宅の回線環境によっては、ファイン程度の画質でないとスムーズに再生できない(映像はハメコミ合成)

 ただし、実際に映像を再生する際は、自宅に敷設している回線の上り速度を十分に考慮する必要がある。今回は、回線にFTTH(Bフレッツのニューファミリータイプ)を利用したこともあり、MPEG-4のXF(1.5Mbps)もスムーズに再生することができたが、ADSLとなると話は別だ。上りが1Mbpsの場合、XFの再生となるとかなり厳しいだろう。スーパーファインでも1,050kbpsのビットレートなので、現実的にはファイン(430kbps)でないとスムーズに再生できないと思われる。インターネット側から利用する場合は、あらかじめ録画する画質を適切に設定しておくといいだろう。





MPEG-2の再生は難しい

 続いて、前回紹介したMPEG-2の再生に挑戦してみたが、これは正直なところ現実的ではない。確かにMPEG-4のときと同様、PPTPやSoftEtherを利用すれば、MPEG-2の再生や転送が可能なのだが、とにかく再生・転送に時間がかかるからだ。

 MPEG-4の場合はストリーミング再生となるため、データを一定容量バッファした時点で再生が開始されるが、MPEG-2の場合は完全にデータをダウンロードしてからでないと再生できない。場合によっては数GBのファイルをダウンロードしなければならないので、この時間が非常に長くかかるわけだ。自宅の回線がFTTHならこの待ち時間も耐えられるかもしれないが、ADSLの場合は素直にあきらめたほうがいいだろう。

 なお、前回、紹介したMPEG-2の再生だが、新たにわかった点を追記しておく。地上デジタル放送やBSデジタル放送など、コピーワンスのコンテンツが1つでも録画されている場合、DiXiM Media Clientを利用してアクセスしてもタイトルの一覧を表示することができない。また、同様のケースの場合、ブラウザを使って他のファイルを転送することはできるが、コピーワンスの映像は再生/転送に失敗する(ファイルが見つからない)。

 コピーワンスの映像を録画する機会は、まだあまりないと思われるが、このような制限がある点には注意しておく必要があるだろう。





インターネット経由で録画予約

 このように、環境次第ではインターネット経由でDMR-E500Hを利用することが可能だ。ここでは主に再生について説明したが、もちろん、DIGA MANAGERの「レコーダー操作」を利用すれば、録画予約も可能だ。ただし、DIGA MANAGERを利用した場合、録画予約したいチャンネルや日時をすべて指定する手動予約しかできない。どうせなら、番組表を利用して録画予約をしたいところだ。


VPNやSoftEtherで接続後、レコーダー操作を利用すれば、録画予約も可能。ただし、手動での予約となる

 そこで、利用したいのが同社がサービスを提供している「DIMORA」と呼ばれるサービスだ。すでに一部のサービスが正式に開始されているが、このサービスを利用すれば、外出先から手軽に録画予約を行なうことができる。利用するには、本体側にブロードバンドレシーバー機能が必要だが(外付けも可能)、DMR-E500Hには標準でこの機能が内蔵されている。

 具体的にどのようなサービスが提供されているのかというと、PCから番組表を使って録画予約ができる「テレビ番組ガイド『Gガイド』」、携帯電話から番組情報を参照したり、録画予約ができる「TVnano/番組サーチ」「テレビーバ!」などが利用できる。PC、もしくは携帯電話から「http://dimora.jp」にアクセスし、会員登録および機器登録(機種と機器ID)を行なえば、すぐに利用可能だ。

 たとえば、「Gガイド」の場合、PCからDIMORAのサイトにアクセスし、ログイン後、メニューから「テレビ番組ガイド『Gガイド』」をクリックすると、別ウィンドウで番組表が表示される。DMR-E500Hとほぼ同じイメージの番組表画面が表示されるので、録画予約したい番組を選んで、「予約録画」をクリックすれば、予約を実行できる。

 標準では3チャンネル、3時間分の番組表しか表示されないため(変更できるが毎回操作が必要)、少々、見にくいのが難点だが、外出先のPCなどからでも手軽に録画予約できるメリットは大きい。もちろん、LAN内のPCからも利用できるので(LANからも必ずインターネット経由となる)、筆者のように一日の大半をPCの前で過ごすユーザーにとっては非常に便利だ。


Gガイドを利用すれば、番組表から予約したい番組を選ぶことができる。外出先からの録画予約などに便利だ

「TVnano/番組サーチ」を利用すれば、携帯電話からの録画予約も可能。iアプリを利用することもできる

 一方、携帯電話からの録画予約だが、これも手軽だ。たとえば、「TVnano/番組サーチ」(現状はiモードのみ対応。「テレビーバ!」は3キャリア対応)の場合、携帯電話から、「http://dimora.jp」にアクセスし、同様にログインを行なう。その後、メニューから「TVnano/番組サーチ」にアクセスすればいい。

 さすがにGガイドのように、新聞や雑誌と同様のイメージで番組表を見ることはできないが、現在放送中の番組を表示したり、今日/明日の番組を表示することができ、そこから直接、DMR-E500Hに録画予約ができる。番組の検索も可能で、フリーワードや出演者などで番組を探すことも可能だ。慣れれば、意外に快適に操作することができるので、定額制サービスなどで契約している場合は、家庭内で使うのも便利だろう。

 なお、これはケータイWatchでおなじみの法林氏からアドバイスを頂いたのだが、iモードの場合、「マイボックス」というサービスを利用すると、DIMORAに接続するときのID、パスワード認証を省く(自動的に行なう)ことができる。サービスの登録に2~3日必要になるため、今回は間に合わなかったのだが、DIMORAのサイトから登録することができるので(PCでも携帯電話でも可)、これを利用すると便利だろう。

 このほか、TVnano/番組サーチでは、専用のiアプリを利用して、自分の好み合った番組をリストアップしたり、赤外線を使って録画予約を行なうこともできるようになっている(とっておきアプリやアプリモコン)。個人的にはiアプリではなく、サイトから録画予約した方が便利だと感じたが、場合によっては、こちらを使う手もあるだろう。

 このように、DMR-E500Hでは、LANからの利用に加えて、インターネット経由での利用も工夫次第では可能だ。ただ、まだまだ快適と呼べるレベルではないため、今後、さらに改善されていくことを望みたいところだ。特に、各社ともにネットワーク対応のHDD&DVDビデオレコーダが登場しているので、PCも含めて、その相互接続性が高まることに大いに期待したいところだ。


関連情報

2004/10/5 11:06


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。