第155回:トライアルには課題があるもサービスの魅力は十分
コンテンツをDVDにダウンロードできる「ひかり de DVD」を実際に体験
以前、本コラムで「ひかり de DVD」について取り上げたが、このトライアルサービスに実際に参加できたので、今回は、その使い心地についてレポートする。
●加入前の敷居は高いが、セットアップは簡単
ひかり de DVDのトライアルについて触れる前に、改めてサービスの概要を紹介しておこう。パワードコム、東芝、東京電力の3社によって提供されているこの映像配信サービスの特徴は、東京電力のTEPCOひかりを回線として利用し、東芝製のDVDレコーダにコンテンツをダウンロード配信する点にある。コンテンツはDVD-RAMに録画でき、一定期間のみ視聴できるレンタル方式のほか、半永久的にコンテンツを残しておけるセル方式も用意されている。
今回、「ひかり de DVD」を実際に利用して感じたのは、その敷居の高さだ。現在、一般的なストリーミングタイプの映像配信サービスは、映像の受信に専用のセットトップボックス(STB)を利用するが、「ひかり de DVD」では東芝製のHDD&DVDレコーダ「RD-X4TP」を利用する。このレコーダは東芝製のDVDレコーダ「RD-X4」をベースにした専用モデルだが、その価格は74,550円と、安いとは言い難い価格だ。
もちろん、この製品は単純なSTBではなく、DVD&HDDレコーダとしてテレビ録画などにも利用できる製品だが、さすがにこの価格を加入時に支払わなければならないとなると、尻込みしてしまうユーザーも少なくないだろう。また、ベースとなっている製品は2003年に発売された1年以上前のモデルであり、店頭ではRD-X4TPと同程度の価格で最新のHDD&DVDレコーダも購入できる点を考えると、価格面での敷居は高いと言わざるを得ない。
ただし、RD-X4TPはあくまでトライアル専用の端末であり、サービスでは、別の製品が使われる可能性や、購入ではなくレンタルで提供される可能性もあるだろう。また、以前のインタビューでは、2004年秋以降発売の東芝製DVDレコーダであれば、ファームウェアのアップグレードでひかり de DVDに対応できるという話もある。しかしながら、現状のトライアルに限るならば、この価格はやはり敷居が高いと言えるだろう。
「ひかり de DVD」トライアルサービスで利用されている東芝製の「RD-X4TP」。市販の「RD-X4」をベースに「ひかり de DVD」向けのカスタマイズをした製品。トライアルでは74,550円で購入する必要がある |
端末のセットアップに関しては、特に難しい点はなかった。機器の接続は、ネットワークへの接続が必要な点を除けば、通常のHDD&DVDレコーダとまったく変わらない。AVケーブルを使って家庭用テレビのビデオ入力に接続し、背面のLANポートとルータをケーブルで接続するだけだ。
設定も必要最小限な項目のみで、初回設定画面で加入時に割り当てられたユーザーIDやパスワードを入力し、サービスへの登録をすれば完了する。端末の価格という敷居の高さはあるものの、一旦加入すれば、使い始めるまでの手間はほとんど感じられない。
●操作性は改善の余地あり
実際に「ひかり de DVD」のサービスを利用するには、まずRD-X4の電源をオンにし、「クイックメニュー」ボタンから「DVDBB」を選択する。すると、サービスへのログイン画面が表示されるので、ここにパスワードを入力すれば、「ひかり de DVD」のトップページが表示される。
クイックメニューから「DVDBB」を選択するとログイン画面が表示される。毎回クイックメニューからログインするのが煩雑な印象 |
繰り返しになるが、現状の端末は、すでに市場投入されていたRD-X4を「ひかり de DVD」向けにカスタマイズしたもので、ひかり de DVDのために新たに開発された製品ではない。このために仕方がない点ではあるのだが、ひかり de DVD関連の操作性に関しては使いづらいと感じる場面があった。
例えば、ひかり de DVDを利用するのに、毎回クイックメニューからアクセスするのは面倒だ。できればリモコンに「ひかり de DVD」に一発でアクセスできるボタンを用意して欲しい。また、パスワードの入力に関しても、現状のRD-X4TPでは下部のカバー内部に用意された数字ボタンで入力しなければならない。さらに、ボタン類を押してから、画面上に文字が入力されるまでに若干のタイムラグも感じた。
RD-X4TP付属のリモコン。下部のカバーを開けないと数字ボタンを押すことができない |
とは言え、端末に関しては、別の製品(2004年末発売以降の東芝製品)でも「ひかり de DVD」への対応は可能という話もあり、これらの欠点は、あくまでも現状のRD-X4TPを利用した場合に限った話であることを考えると、本サービスでは改善される可能性が高いと言えそうだ。
●追っかけ再生でダウンロードの面倒もなし
続いてコンテンツの購入方法を見ていこう。「ひかり de DVD」の画面イメージは以下の通りだ。左側にジャンルのメニューが表示され、選択したジャンルの説明が右側に表示される。トライアルサービスのせいか、非常にあっさりとしたデザインのメニューだ。
「ひかり de DVD」のメインメニュー。非常にシンプルな画面構成 |
ジャンルを選択後、見たいタイトルを選んでから、リモコンの「決定」ボタンを押してコンテンツを購入できる。購入方法は、いわゆるセルビデオとして購入する方法と、一定期間(24/72/168時間)視聴できるレンタルの2つがある。価格はコンテンツによって異なるが、レンタルは315円程度、購入は1,000円前後といったところだ。
レンタルに関しては、若干割高なイメージがあるが、コンテンツによっては3日間、もしくは1週間視聴できる場合もあるので、実際のレンタルビデオ店などと同じようなイメージで利用できるだろう。
コンテンツの購入画面。コンテンツは購入とレンタルの2種類の方法で試聴できる。購入の料金が安めに設定されているのでお買得感は高い |
個人的には、レンタルと購入の価格差があまりないことを考えると、一定期間しか視聴できないレンタルよりは購入のほうが得だと感じた。コンテンツにもよるのだが、購入であれば何度も見られる上、ダウンロードしたけれど急用などで見る時間がなくなってしまった、という場合でも後から見ることができる。時間的な猶予が与えられているという安心感が得られるのは、やはり大きなメリットだ。
レンタルの場合、設定された試聴期限が過ぎると再生できなくなる。いつでも見られるという安心感があるのも購入のメリットだろう |
見たいタイトルを選んで購入した後、ドライブにCPRM対応のDVD-RAMをセットすると、DVD-RAMの初期化が行なわれた後、ダウンロードが開始される。ダウンロードにかかる時間は、ドライブの書き込み速度や本体の処理速度の関係でコンテンツの再生時間とほぼ同じだが、ダウンロードが完全に終了するまで待つ必要はない。なぜならば、ひかり de DVDは追っかけ再生に対応しており、ダウンロード中にリモコンの「タイムスリップ」ボタンを押せば、ダウンロードしながらの再生が可能だからだ。ただし、ダウンロードが再生に追いつかない場合もあるため、10%程度ダウンロードしてから再生するのが実用的だろう。
購入するとダウンロードが開始される。ダウンロードにかかる時間は、コンテンツの再生時間とほぼ同等(若干短い程度)。ダウンロードしながらの追っかけ再生も可能だ |
なお、ダウンロード中は、一部の操作が制限される。たとえば、ダウンロード開始後に、テレビの録画を開始することはできない(録画番組の再生は可能)。また、逆にテレビの録画中にダウンロードを開始することも不可能になっている。
ただし、ダウンロードとテレビ録画の同時利用がまったく不可能というわけではない。たとえば、ダウンロードの開始後、テレビ番組の録画予約時間になってしまった場合は、ダウンロードとテレビ録画が同時に行なわれる。完全に排他というわけではなく、万が一の場合でも、どちらかが失敗することがないように工夫されているのは、ありがたいところだ。
●コンテンツ不足をどこまで解消できるか?
サービスを一通り使ってみて感じたのは、「ひかり de DVD」は、仕組み的にはよくできているサービスということだ。ストリーミング型の映像配信サービスの場合、映像は一度見たら終わりだが、ひかり de DVDではDVDに残せるために所有感があり、さらに時間的な余裕を持ってコンテンツを見ることができるのは大きなメリットであると実感できた。
ただし、前述したように端末の完成度については多少の難がある。現在のトライアルサービスで利用している「RD-X4TP」は、操作性、動作速度ともに実用に耐えるとは言い難い。EPGが利用できない(拡張パックの利用は不可)など、HDD&DVDレコーダとしても、もはや時代遅れの印象が高い。本サービスでは、最新のHDD&DVDレコーダを採用し、さらに「ひかり de DVD」向けにリモコンや処理性能などのチューニングを徹底して行なって欲しい。
また、深刻なのはコンテンツの問題だろう。正直な感想を言わせていただくと、現状のトライアルサービスは、あまりにもコンテンツが不足している。「ひかり de DVD」のホームページで提供されているWebマガジンのページでコンテンツの一部が紹介されているが、個人的には、「見たい」と思わせるコンテンツが1つもなかった。もちろん、コンテンツはユーザーの好みによるところも大きいが、本サービスの段階で、魅力的なコンテンツをどこまで揃えられるかがカギと言えるだろう。
関連情報
2005/7/12 10:59
-ページの先頭へ-