第161回:バッファローの第3世代無線LANルータ「WHR-HP-G54」登場
通信距離が向上した新ハイパワーモデルの実力は?
バッファローから、筐体デザインが変更された第3世代のAirStationシリーズが発売された。すでに発売されているハイパワータイプの無線LANカード「WLI-CB-G54HP」も含め、ハイパワーモデル「WHR-HP-G54」の実力を検証した。
●電波が届きにくいという悩みを解消
第3世代AirStation「WHR-G54-HP」 |
無線LANを導入したいが、実際に自宅で電波がきちんと届くかどうかが不安……。そんな悩みを持つユーザーに向けてバッファローが新たに提案してきたのが、今回、発売された第3世代のAirStationシリーズだ。
筐体が小型化され、デザインがスタイリッシュになったという特徴もあるが、最大の特徴はなんといってもハイパワーモデルがラインナップされている点だ。同社は従来から電波の出力を強化したハイパワーモデルをラインナップしていたが、今回、発売されたハイパワーモデル「WHR-HP-G54」は、受信系経路の改善など、さらなる機能強化が図られている。
具体的にどれくらい機能が強化されているのかというと、カタログスペック上は20Mbpsで通信できる距離が220mと、従来のハイパワーモデル比で210%も改善されている。住居環境などで、電波が届くかどうかが心配というユーザーには注目のモデルと言えるだろう。
そこで、今回は、実際にWHR-HP-G54を利用し、どれくらい電波が届くようになったかを木造3F建ての筆者宅にて検証してみた。WHR-HP-G54だけでなく、先行して発売されているハイパワータイプの無線LANカード「WLI-CB-G54HP」も合わせて利用した場合の効果を検証してみよう。
●ハイパワーカードのみでも効果があるのか?
新製品の「WHR-HP-G54」をテストする前に、まずハイパワータイプの無線LANカード「WLI-CB-G54HP」の効果を検証した。クライアント側の変更だけで効果が得られるのであれば、すでに無線LANを利用しているユーザーでもわずかな投資(7,000円前後)で無線環境を改善できるはずだ。
アクセスポイントとして新11aに対応した「WER-AM54G54」を利用し、さまざまなクライアントから接続してみた結果が以下の表とグラフだ。筆者宅の1Fにアクセスポイントを設置し、1F、2F、3Fの各ポイントからFTPによる速度測定を実施した。
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表1-1:ハイパワーカードの効果(GET) |
表1-1のグラフ |
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表1-2:ハイパワーカードの効果(PUT) |
表1-2のグラフ |
グラフを見れば一目瞭然だが、ハイパワータイプのクライアントを利用するだけでもかなりの効果が得られる。GETの結果(グラフ1-1)を見ると、WLI-CB-G54HPでは、1F、2F、3Fともに26~27Mbps前後の速度が実現できており、長距離(3F)での速度の低下がほとんど見られない。ノートパソコン内蔵の無線LAN機能(Intel 2915AGB)やIEEE 802.11a/b/g同時通信の無線LANカード(WLI-CB-AMG54)、ノーマルタイプのIEEE 802.11g無線LANカード(WLI-CB-G54S:WHR-HP-G54のセット品)などが、3Fで速度が低下していることを考えるとかなり優秀だろう。
802.11aの結果も良好だが、3Fではさすがに速度が落ち込んでいる。今回のテストでは3Fの結果がハイパワータイプのカードとほぼ同等だったが、さらに距離が伸びたり、遮蔽物が多い環境では逆転する可能性もありそうだ。
ただし、ここで注目したいのがグラフ1-2のPUTの結果だ。GETではほとんど速度の低下が見られなかったWLI-CB-G54HPだが、PUTでは3Fで若干低下していることがわかる。詳しくは後述するが、すべての環境でハイパワーの効果が得られるというわけではなさそうだ。
なお、上記のテストではアクセスポイント(WER-AM54G54)に採用されているチップがAtheros製のため、同じAtheros製チップを採用したクライアント(WLI-CB-AMG54)の速度の方が全体的に高い結果が出ている。もちろん、もともとの速度が高い方が、長距離でも速度が落ち込んだとしても結果的に高い速度が得られるが、ここで注目していただきたいのは、あくまでも測定地点による速度の変化の度合いだ。
また、上記の結果は、あくまでも筆者宅にて行なった結果であることをお断りしておく。無線LANの速度は、周辺の環境や利用するPCによって異なるため、他の環境で同じ結果が得られるとは限らない点に注意してほしい。
●WHR-HP-G54でアクセスポイント側を強化
続いて、新たに発売されたWHR-HP-G54を利用してテストを実施した。アクセスポイントとクライアントの双方をハイパワータイプにした場合の結果も気になるが、最近ではノートPCに無線LANが内蔵されることも多いため、ハイパワータイプのアクセスポイントと通常のクライアントの組み合わせでどれくらい効果が得られるのかが気になるところだ。
先ほどのテストとほぼ同じテストをWHR-HP-G54で行なったのが以下の表とグラフだ。WHR-HP-G54はIEEE 802.11b/gのみの対応となっているため、IEEE 802.11aの測定を行なっていないが、それ以外は同じテストを行なっている。
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表2-1:ハイパワーAPの効果(GET) |
表2-1のグラフ |
ここでは、まず先ほどとは逆にPUTの結果(グラフ2-2)から注目して頂きたい。さすがにハイパワーの威力と言えるが、どのクライアントから接続した場合でも、ほとんど速度の低下が見られない(WLI-CB-G54Sでは若干低下傾向が見られる)。中でもWLI-CB-G54HP(ハイパワータイプの無線LANカード)とのハイパワー同士の組み合わせでは、3Fでも24Mbpsとかなり高いスループットが得られた。
ただし、これだけでハイパワーの効果は判断しないほうがいいだろう。なぜなら、GET(2-1)では、少し異なる結果が出ているからだ。PUTではどのクライアントでもほとんど速度の低下が見られなかったが、GETではWLI-CB-G54HP(ハイパワー同士)の場合以外は、3Fで速度の低下が見られる結果となっている。これはなかなか興味深い結果だ。
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表2-2:ハイパワーAPの効果(PUT) |
●ポイントは受信系にあり
セットモデル「WHR-HP-G54/P」に同梱する無線LANカードはノーマルタイプの無線LANカード「WLI-CB-G54S」 |
さて、ではなぜ前述したように、速度の低下が見られる場合と見られない場合があったのだろうか?
もう一度、関係を整理してみよう。グラフ1-1のケースではGET値、つまり「アクセスポイント→クライアント」という方向の通信になる。つまり、ハイパワーのWLI-CB-G54HPが電波を受信する側の場合は速度の低下は見られないが、グラフ1-2のPUT(クライアント→アクセスポイント)ではWLI-CB-G54HPが送信側となるため、速度の低下が見られたことになる。
一方、グラフ2-1のケースでは、アクセスポイント側がハイパワータイプ(WHR-HP-G54)となるために位置関係は逆転するが、送受信の関係性は同じだ。ハイパワーのアクセスポイントが送信側となる場合に速度の低下が見られ、逆に受信側となったときに速度の低下が見られないことになる。
つまり、ハイパワー製品同士の組み合わせを除き、いずれの場合もでも速度の低下が見られないのは、受信系にハイパワー製品を利用した場合ということになる。
これは、ハイパワータイプの製品の特徴をよく現わしている結果だろう。ハイパワータイプの製品の特徴は、送信する電波の出力を高めている点だが(電波法の制限があるため一定レベルまでに制限されてはいるが)、同時に受信系の回路設計が大幅に見直されている。つまり、送信されてきた電波を効率よく受信することで、より高い速度でリンクし、高い実効速度を得られるようにしているわけだ。
このため、ハイパワータイプの製品の恩恵をフルに受けるためには、やはりアクセスポイントとクライアントの双方にハイパワータイプの製品を利用するのがベストと言える。確かに、アクセスポイント、クライアントのどちらかをハイパワータイプにするだけでもある程度の効果は期待できるが、場合によっては上り/下りの一方の通信速度が思ったほど上がらないケースがある。長距離、もしくは遮蔽物がある環境で、確実に高い速度で通信したいのであれば、ハイパワータイプのアクセスポイントとクライアントの両方を利用すべきだろう。
ただ、残念なことに、今回、新たに発売されたWHR-HP-G54のセットモデル(WHR-HP-G54/P)に同梱されている無線LANカードは、「WLI-CB-G54S」というノーマルタイプの製品だ。このあたりはマーケティング戦略も絡むので難しい判断があったのだろうと予想されるが、せっかくならハイパワータイプのアクセスポイントには、同じくハイパワータイプのクライアントをセットにして欲しかった。
これからハイパワータイプの製品を購入するのであれば、個人的には、WHR-HP-G54単体とWLI-CB-G54HPを個別に購入することをお勧めしたい。この構成であれば、通常の無線LANでは電波が届きにくい環境でも通信環境を改善できる可能性が高い。もちろん、実際の効果は住宅環境などによって異なるが、少なくともノーマルタイプの製品よりは長距離での通信に有利だろう。
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2005/8/30 11:01
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