第243回:高い検出力を誇るロシア製セキュリティ対策ソフトが国内市場に参入
ジャストシステム「Kaspersky Internet Security 6.0」



 昨年末に国内参入を果たしたロシア製のセキュリティ対策ソフト「Kaspersky Internet Security 6.0」。高性能エンジンと迅速な定義ファイル更新による高い検出力を特徴とする同ソフトだが、実際の実力はどうなのだろうか? その実力を検証した。





新規参入が相次ぐセキュリティ対策ソフト市場

Kaspersky Internet Security 6.0

 セキュリティ対策ソフト市場が、なかなか「熱い」戦いの様相を呈してきた。

 セキュリティ対策ソフトの状況やシェアは、海外と国内、さらには企業向けとコンシューマ向けでそれぞれ傾向が異なるものの、国内のコンシューマ向け製品の主なプレーヤーは長らくシマンテックの「Norton」シリーズ、トレンドマイクロの「ウイルスバスター」シリーズ、マカフィーの3社でほぼ固定されていた。

 この市場に、更新料「0円」という強力なコスト戦略で大攻勢をかけてきたソースネクストの「ウィルスセキュリティ」シリーズがシェアを伸ばして国内の3強入りを果たしたかと思えば、マイクロソフトもWindows Vistaの発売に合わせて「Live One Care」で新規に参入。そして、今回取り上げるジャストシステムも「Kaspersky Internet Security 6.0」で昨年末から国内市場に本格参入してきた。

 コンシューマー向けのセキュリティ対策ソフトに関しては、フリーで提供されているオンライン製品を利用するユーザー数も無視できなくなりつつあるが、有力なプレーヤーの相次ぐ新規参入によって、今後、そのシェアがどう変わっていくのかがなかなか興味深いところだ。





ランキング上位の常連ソフト

 今回、取り上げる「Kaspersky Internet Security 6.0(以下KIS 6.0)」は、もともとはロシアのKaspersky Labsが開発した統合セキュリティ対策ソフトだ。ウイルス対策の「Kaspersky Anti-Virus」を中心に、スパイウェア対策、ファイアウォール(アンチハッカー)、スパム対策機能が搭載されており、インターネットのセキュリティを統合的に確保できる。


Kaspersky Internet Security 6.0。ウィルス対策、スパイウェア対策、ファイアウォール、スパム対策などの機能が搭載された統合セキュリティ対策ソフト

 国内では昨年末からジャストシステムを通じて販売が開始されていたが、今年の3月にWindows Vista対応版が登場し、本格展開に向けた国内の体制がようやく整ったことになる。

 KIS 6.0最大の特徴は、同社のキャッチコピーを借りればその「性能」だ。セキュリティ対策ソフトの評価などを行なう海外のサイトで常に上位にランクインしており、世界最高水準のウィルス検知率、世界最速レベルの新種ウィルスへの対応速度を誇っている。スパイウェアやフィッシング、ボットなど、最近ではセキュリティを脅かす存在が多様化し、その進化が加速しつつあることを考えると、高い検出力は利用者にとって大きな魅力だ。


KIS 6.0の最大の特徴は高い検出力。リアルタイムスキャンなどの状況を見ていると、常にファイルがチェックされているのが確認でき、安心感を得られる。更新ファイルのアップデートも頻繁だ

 前述したソースネクストが圧倒的なコストを武器にした製品だとすれば、KIS 6.0は「安全性」という部分に特化した製品ということになる。同社の創設者であり、開発者でもあるカスペルスキー氏の「元KGB暗号エキスパート」という肩書きを訴求に利用している点など、性能によって他製品との差別化を図ろうというところだろう。





意見が二分するソフトの動作

 検出率などについては高い評価を得ているKIS 6.0だが、その利便性については評価が二分される傾向にある。実際、インターネット上の評判などを見てみても、「重い」という評価もあれば、「軽い」と判断するコメントも見かけることがある。

 セキュリティ対策ソフトは、そもそもPCをインターネット上の危険から守るために導入するソフトウェアであることを考えれば、製品選択の最重要ポイントは検出率などの性能であることは間違いない。しかしながら、最近では安全性に加えて、PCへの負荷が製品選びの重要なポイントになりつつある。いくら高い安全性を確保できたとしても、それによってPCの利便性が低下しては意味がないと考えるユーザーが多いことの現われだろう。

 では、実際にKIS 6.0は「重い」のだろうか、「軽い」のだろうか? 実際に使ってみた感想から言わせてもらえば、個人的には「意外に重くはない」という印象を受けた。

 微妙な表現にしたのにはインストール直後の処理が非常に重いという理由からだ。KIS 6.0では、リアルタイムスキャンによって常にPCのデータが検索されるが、この処理によって常に一定レベルのCPU負荷が発生する。この状況で同時にフルスキャンを実行すると、負荷はさらに高くなり、CPU負荷は30~50%以上で推移し、メモリの使用率も非常に多くなる。

 タスクマネージャでプロセスを監視したところ、フルスキャンを実行すると、リアルタイムスキャンのプロセスと合わせて「avp.exe」が2つ同時に起動しており、これらがCPUパワーとメモリを消費しているのが確認できる。今回、Core Duo T2400、RAM1.5GB搭載のノートPCでテストしたが、シングルコアでメモリも少ないPCでは、かなり重い処理となるだろう。おそらくKIS 6.0が重いと判断される理由は、この時点での評価と考えられる。


インストール直後にフルスキャンを実行したときのタスクマネージャの画面。フルスキャンとリアルタイムスキャンで「avp.exe」が2つ存在しているのが確認でき、そのときの使用メモリもかなり高くなることがわかる




使い込むと「軽く」なる?

 しかしながら、しばらく使っていると、この重さが次第に解消されてくる。たとえば、フルスキャンだが、KIS 6.0では、はじめの1回目はPC上のすべてのファイルをチェックするため、この処理に多大な負荷と時間がかかるが、2回目以降はフルスキャンを実行してもすべてのファイルはチェックせず、更新されたファイルしかチェックしない(設定によって変更可能)。

 このため、筆者の環境(対象ファイル数:165,220)では、1回目1時間以上かかったフルスキャンが2回目以降はわずか4~10分ほどで終了するようになった。もちろん、実際の時間は更新されたファイルの数に依存するが、感覚的には毎日フルスキャンを実行した場合の所要時間は5分程度、1週間に1回なら10分程度といったところだ。これはリアルタイムスキャンでも同じようで、一旦、スキャンされたファイルは次回以降、更新されていない限りはスキャンがスキップされている。


更新されたファイルのみチェックすることで短時間でスキャンを実行。筆者の環境では前回のスキャンから1週間後のフルスキャン時で168,793ファイルを9分でスキャン完了した

 つまり、最初にフルスキャンを実行し、リアルタイムスキャンによるファイルチェックも一通り実行されてしまうと、後は必要なファイルのみしかチェックされないため、PCに対する負荷がほとんどかからず、今度は逆に「軽い」と感じるようになるわけだ。

 また、これも設定によって可能だが、KIS 6.0ではCPU使用率が高いときに、自らの優先度を低下させ、他のアプリケーションにを優先して処理することができる。前述したように、初回のリアルタイムスキャンとフルスキャンの同時実行時などは、さすがにハードディスクへのアクセスが集中してどうにもならないが、普段はほかの操作をしても、さほど負荷は気にならない。うまくバックグラウンドで重い処理が行なわれている印象だ。


更新されたファイルのみのスキャンやCPU負荷の軽減など、設定次第でパフォーマンスを向上させることが可能

 このほか、今回使用したWindows Vista版には新機能として速度と性能のバランスを重視した「スマートスキャン」モードが搭載されている。これによって、ファイルの新規作成時とオープン時、およびアプリケーションの終了時のみにスキャン処理を行なうことが可能で、パフォーマンスの低下を押さえる工夫もなされている。重い、軽いという判断の分かれ目には、このようなバージョンによる機能の違いも原因としてありそうだ。





国内対応が今後のポイント

 以上、ジャストシステムの「Kaspersky Internet Security 6.0」を実際に利用してみたが、数週間使った感想としては、確かに第一印象は重いが、使い込むほどに不満がなくなっていく印象だ。それでいて、高い検出率や1時間ごとの更新ファイルのアップデート(更新がある場合のみ)などの安心感が得られるのだから、セキュリティ対策ソフトの選択肢としては悪くないと言えるだろう。

 ただし、Windows Vista版の登場が3月とOSの発売からずれ込むなど、国内対応の遅れが若干気になるところだ。今回は発売間もないために致し方なかったとも言えるが、今後はいかに迅速な対応ができるかがポイントとなりそうだ。特に、P2Pで感染するタイプのウィルスなど、国内ならではの被害なども存在することを考えると、ローカライズに加え、国内の状況に合わせた定義ファイルの迅速な更新が不可欠と言える。

 製品自体の完成度は高いので、あとは国内向けの対応や認知度の向上が製品としての課題だろう。ジャストシステムが、今後、これらの点をどう克服していくのかに期待したいところだ。

 なお、これはKIS 6.0に限った話ではないが、最近ではそもそも統合セキュリティソフトが必要かどうかという疑問を個人的に感じるようになってきた。Windows Vistaには、スパイウェア対策として「Windows Defender」が搭載されており、Windowsファイアウォールも双方向に進化するなど強化されている。KIS 6.0の場合、インストールしてもWindows Defenderは有効のままとなっているなど、OSとサードパーティ製ソフトで機能の使い分けがしっかりできていない印象もある。OSが標準でセキュリティ対策機能を搭載する中、こうした専用ソフトがどのような展開を進めるかも注目したいところだ。


関連情報

2007/5/8 11:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。