第284回:お手頃価格で購入できる
ツクモのインターネットラジオチューナー「i.Radio」



 ツクモから、17,800円という低価格が特徴のインターネットラジオチューナー「i.Radio(NTD-9000)」が発売された。BGM代わりにインターネットラジオを、と考えている人に最適な製品だ。





パッシブに楽しむインターネットラジオ

右下に設置されているのが「i.Radio」

 アップルのiTunesがアクティブに音楽などのコンテンツを楽しむためのサービスだとすれば、インターネットラジオはどちらかというとパッシブに音楽を楽しむためのサービスではないか。ツクモの「i.Radio」を使ってあらためて感じた。

 好みの音楽やPodcastを探す、ダウンロードする、iPodに転送して聞く、といったように自分の趣味嗜好に合わせて積極的に楽しむiTunesに対して、インターネットラジオは、せいぜい好みの放送局にチューニングするだけ、あとは流れてくる音楽をひたすら聴き流すという、非常に受け身的な楽しみ方になる。

 もちろん、これまでのインターネットラジオは、再生ソフトや放送局の設定などがハードルとなっていたのも事実だが、今回、ツクモから発売されたインターネットラジオチューナー「i.Radio(NTD-9000)」によって、こうしたハードルもすっかり取り払われた印象を受けた。

 i.Radioは、ゼン・ティーコムが開発したインターネットラジオチューナーで、本体に搭載された10BASE-T端子を利用してルータに接続すれば、すぐにインターネットラジオが楽しめる。


ツクモのインターネットラジオチューナー「i.Radio(NTD-9000)」。シンプルで低価格なインターネットラジオチューナー

 同様のハードウェアは、サン電子のBiBio wGate(販売終了)など、以前から存在しており、PCレスのオーディオ感覚でインターネットラジオを楽しむというコンセプトはすでにあったのだが、今回のi.Radioは2万円を切る17,800円という低い価格設定をしているのが最大の特徴だ。

 個人的には「もうひと声」と言いたくなるところではあるが、1万円台なら、音楽を手軽に楽しめる額として、限られたお小遣いを切り崩すことも十分検討できるのではないだろうか。





プリセットされた放送局を手軽に再生

 i.Radioの使い方はとても簡単だ。極端な話、つないで電源を投入するだけですぐに音楽が聞こえてくる。スピーカーは内蔵されていないので、外付けスピーカー、もしくは家庭用のオーディオ機器などと接続する必要はあるが、設定らしい設定は基本的に必要ない。

 背面の10BASE-T端子をルータなどに接続すると、DHCPでIPアドレスを自動的に取得。その後、出荷時設定登録されている10局の放送局の中から、放送局に自動的に接続され(通常は最後に再生していた局に再接続)、音楽が再生されることになる。


使い方は至ってシンプル。ネットワークとスピーカーに接続後、電源を入れれば自動的に音楽が再生される。放送局はプリセットされた10の局から選択可能だ

 放送局は標準で10局が登録されており、クラシックからロックまで一通りのジャンルを取り揃えている。

 選曲は前面の液晶パネルを見ながら、ボタンなどでで操作。具体的には、「CONTROL」ボタンを押してメニューから「TUNE」を選び、「ENTER」ボタンを押す。すると、画面に登録されている放送局名が表示されるので、ボリュームを回転させて局を選び、再び「ENTER」を押して確定するという操作になる。

 ボタンでの操作が面倒なら、ブラウザを利用したWeb設定画面からの操作も可能だ。ネットワークに接続されたPCから、「http://本体のIPアドレス:8080」にアクセスすると(IPは本体の液晶で確認可能)、設定画面が表示される。ここから「チャンネルの選局/編集/削除」画面を表示して、聞きたい放送局の「選局」ボタンをクリックすれば切り替えることができる。


i.Radioの設定画面。放送局の選択や設定が可能となっている




Webインターフェイスで放送局を自由に追加

 もちろん、放送局を追加することも可能だ。shoutcast/icecast方式で、MP3形式の配信を行なっている放送局に対応しており、最大99局まで登録することができるようになっている。


SHOUTcastで放送局を選び、そのURLを設定画面から登録することで放送局を追加できる

 SHOUTcastにアクセス後、検索やランキングから聞きたい放送局を探しだし、「Tune In」ボタンをクリックしてplsファイルを取得する。その中身か放送局のURLとポート番号を抽出して設定ページから登録するという手順になる。好みの局を探し出すのは結構苦労するが、一度登録してしまえば後は気軽に再生できる。

 なお、取扱説明書ではインターネットラジオ局の探し方として有限会社トライステートのホームページが紹介されている。ここでもいくつかの放送局が紹介されていたり、50局登録済みのリストもダウンロードできるので、参考にするのも良さそうだ。


放送局のリストはテキストファイルでインポート/エクスポートが可能。ダウンロードしたリストをまとめて登録することもできる




「あまり好みでない」ジャンルを聴くのに最適

 冒頭でも触れたが、インターネットラジオの最大の魅力は気楽さだ。ジャンルさえ選べば、あとは勝手に音楽が流れ続けるので、BGMとして聴き流すのにちょうど良い。

 個人的にはクルマで聴くFMラジオに近い感じを覚えた。好みの放送局はあるものの、再生していてもそれほど一生懸命聴き入るわけでもなく、何となく耳に入ってくるというイメージに近い。好みの音楽や聴いたことがある音楽が流れれば、意識がフッと音楽へと移るが、曲が終わればまたBGMへと変わっていく。

 手持ちの音楽CDから音楽を集めた音楽プレーヤーや携帯音楽プレーヤーで、しかも自分で作ったプレイリストをベースに聴いていると、メインディッシュばかりが連続で出てくるレストランのようで疲れてくることがあるのだが、音楽のほとんどが意識の外にあるBGM的なインターネットラジオでは、そういった疲れ方をしないのがありがたい。

 そういう意味では、インターネットラジオというのは、実は、さほど好みではないジャンルの音楽を聴くのに向いてるのかもしれない。たとえば、筆者はクラシックなど無縁な生活をしてきたが、なぜかインターネットラジオではクラシックの放送局を聴くことが多い。

 仕事をしながらのBGMとして考えると、あまり好みの曲が流れると集中できない。かといってまったく知らない音楽だと面白くもなんともない。その点、クラシックだと、ほとんどは知らない曲なのだが、たまに聴いた記憶がある曲が再生され、仕事から音楽へと意識を一時的に切り替えることができる。これが頭をリフレッシュさせているように感じられて、実に心地良い。





遊びで買うのにちょうど良い

 おそらく、インターネットラジオは、もはや誰もが使うようなメジャーなサービスとは言えないだろう。しかし、実際に使ってみると、それなりにメリットもあり、もう少し見直しても良いサービスなのではないかと感じるところもあった。

 そういった意味では、手軽さと低価格でインターネットラジオへの入り口の敷居を下げたi.Radioの存在意義はそれなりに高いと言える。特に、これまでソフトウェアのインストールや放送局選びが面倒そうで敬遠していたユーザーには一度体験してみることをお勧めしたい。


関連情報

2008/3/4 11:01


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。