天国へのプロトコル
第40回
解約するだけじゃダメ!? マイナンバーカード付きスマホの持ち主が亡くなった時の、正しい処分法
2026年11月6日 07:00
Androidも正式スタート! スマホとマイナンバーカードがますます近づく
2026年10月20日、Android端末にマイナンバーカードの電子証明書機能と属性証明機能が実装できる「Androidのマイナンバーカード」機能の提供が始まりました。これまでも電子証明書機能は組み込めましたが、属性証明機能の実装により、コンビニでの証明書の取得や、マイナ保険証として医療機関の窓口での提示に利用できるようになります。対応機種はデジタル庁のサイトで確認できます。
なお、iPhoneでは2025年6月からマイナンバーカードの両機能が使える環境が提供されています。利用者の数は、2026年9月時点でマイナンバーカード保有数全体の約9%にあたる980万人強。Androidでの実装により、今後この数字は伸びていくと予想されます。
マイナンバーカードという個人情報の塊がどんどんスマホに組み込まれているわけです。しかし、スマホはその高いセキュリティ環境ゆえに、持ち主が亡くなったときにロックが解除できずに相続や引継ぎに欠かせない情報を閉じ込めてしまう、という困った側面があります。
マイナンバーカードを実装したスマホの持ち主が亡くなったとき、どんな対応をするべきでしょうか。下取りに出すにしても、しばらく保管するにしても、正しい処理方法を知っておくに越したことはないはず。デジタル遺品を扱う当連載ではそこに注目しないわけにはいきません。
3年前の「第12回 マイナンバーカード機能を付けたスマホを手放すときは要注意! デジタル庁に詳しく聞いてきた」でも同じテーマを扱いましたが、当時とはマイナンバーカード周りの整備のレベルが異なります。改めて追いかけていきましょう(iPhoneに関しては「第32回 マイナンバーカードを実装した故人のiPhone、スムーズに解約する方法は? 確認してみた」を参照してください)。
基本は何もしなくてOKに……けれど
前提として掴んでおきたいのは、「スマホのマイナンバーカード」情報の保存場所です。
スマホのマイナンバーカードは「マイナアプリ」を通して、カード型マイナンバーカードとスマホを紐付けることで設定します。紐付けられたスマホには固有の「スマホ用電子証明書」が保存されるのですが、保存場所は一般的なストレージの中ではありません。「おサイフケータイ」等で使われる専用チップ(Androidの場合はFeliCa-SEチップ)という別のハードウェアに格納されます。
注意したいのはこの領域はスマホの一般的な初期化操作の対象外ということです。スマホの標準メニューでシンプルに初期化してしまうとデータが残存してしまうので、専用チップ内を消去したうえでスマホ全体を初期化しなければなりません。消去といえば、最近のAndroid端末では「おサイフケータイ」アプリ内でFeliCa-SEチップのデータをまとめて削除できます。しかし、この機能でもスマホ用電子証明書は検知されず、対象外の扱いとなっています。スマホ用電子証明書はいろいろと例外的な存在なのです。iPhoneでも基本的には同様です。
それでいて、手放す際はきちんと失効させなければなりません。デジタル庁は「法律上、機種変更や下取り・売却、廃棄、故障などによって、スマホ用電子証明書を登録しているスマートフォンの利用をやめるときは、利用者ご自身で電子証明書を失効(削除)させることが義務づけられています」と公式サイトに明記しています。では、どう消せばいいのでしょうか?
同庁が推奨するのは「死亡届による自動失効を待つこと」です。
マイナンバーカードの有効性は、同カードの開発と運営を担っているJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)が管理しています。遺族や葬儀社等により死亡届が提出されると、48時間以内に故人のマイナンバーカードとマイナアプリは有効性を失い、専用チップ内のスマホ用電子証明書も自動で消失する仕組みです。
つまり、死亡届さえ提出されれば後は何もしなくてもよいということです。3年前の取材時には確立しきれていなかった部分がしっかり整備されたといえるでしょう。
ただし、事をスムーズに進めるためには、「してはならないこと」も知っておくほうが良さそうです。
開けないなら2日間は寝かせておく
スマホのマイナンバーカードを確実に消去するためには、消去措置が終わる前に手放すことを避けるべきです。
故人のスマホが開ける環境なら、マイナアプリを通して無効化を確認したり、念押しのためにアプリをアンインストールしたりするなどして消去した状態を確定できますが、スマホのパスワードが分からない場合は注意が必要です。
この場合は死亡届の情報が反映される最長期間である48時間を待つのが無難です。ロック状態であってもインターネットに繋がる環境であれば消去されるので、「開けないなら2日間は寝かせておく」ことを意識しましょう。
危険なのは、この期間を待たずにパスワードの入力を闇雲に繰り返すことです。iPhoneはパスワードの入力ミスを11回繰り返すと、端末操作が不能な重いロックがかかったり、標準のストレージのみ初期化されたりします。Galaxyの場合は13回連続ミスで操作不能になります。この状態になるとマイナアプリがインターネットに接続できなくなるので、自動消去は困難になります。
また、死亡届の提出後に故人のスマホの電源を入れないままであったり、オフライン環境に置いたままにしたりしても、当然反映はされません。
もし48時間待たず、消去の確認がなされないまま手放したとしても、故人が自身のマイナンバーカードに設定した各種パスワードが知られなければ悪用されることはありませんが、不確定要素は排除するに越したことはありません。
好むと好まざるとに関わらず、スマホという道具には重要な個人情報や財産、かけがえのない思い出などが集約されるようになっています。パスワードが分からずにログインできない状態ならもちろんのこと、粗方チェックできた後でも急いで手放すのは避けて、ひとまずは手元に留めておくのが得策だと思います。マイナンバーカードの情報にいたってはその間に消えてくれるでしょう。
スマホの通信通話契約の解約や承継もその後で十分です。こちらの手順は過去のレポート(第29回 故人のスマホは本当に「葬儀の案内状」だけで解約できる? 携帯キャリアサイトの説明と実情)を参考にしてください。
| 今回のまとめ |
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故人がこの世に置いていった資産や思い出を残された側が引き継ぐ、あるいはきちんと片付けるためには適切な手続き(=プロトコル)が必要です。デジタル遺品のプロトコルはまだまだ整備途上。だからこそ、残す側も残される側も現状と対策を掴んでおく必要があります。何をどうすればいいのか。デジタル遺品について10年以上取材を続けている筆者が、実例をベースに解説します。バックナンバーはこちらから。





