イベントレポート
Pure//Accelerate 2019
Pure Storage、QLC NANDで十分な性能を実現するFlashArray//C、Optaneをキャッシュで使うDirectMemoryを発表
NVIDIAのAI学習サーバーに最適化したフラッシュストレージや、AWS・Azureサポートも一般提供へ
2019年9月18日 00:01
エンタープライズ向けストレージベンダの「Pure Storage」(ピュア・ストレージ)は、アメリカ合衆国テキサス州の州都オースティンにあるオースティン・コンベンション・センターで9月16日~9月18日(現地時間)の3日間に渡って年次プライベートイベント「Pure//Accelerate 2019」を開催している。
9月17日の午前9時からは基調講演が行なわれており、同社 会長 兼 CEO チャールズ・ジャンカルロ氏を始めとした同社幹部が登壇して様々な発表が行なわれている。それに先だってPure Storageは、基調講演で発表する内容に関する記者説明会を行ない、Pure Storageが今回のPure//Accelerate 2019で発表する概要を明らかにした。
Pure Storageによれば、今回のPure//Accelerate 2019では、新しいフラッシュメモリ製品として、IntelのOptaneを採用してキャッシュとして利用できる「DirectMemory」、QLCのフラッシュメモリを採用して低コストに大容量を利用できるFlashArray Cなどを発表した。
Optaneを採用したDirect Memory、QLCフラッシュを採用したFlashArray//C
今回Pure Storageが発表した概要は以下のようになる。
(1) 新しいフラッシュストレージデバイスとして、IntelのOptaneを採用した「Direct Memory」の発表
(2) 低価格なフラッシュストレージデバイスとして、QLCを採用した「FlashArray //C」の発表
(3) ブレードベースのストレージサーバーFlashBladeに、150ブレードを搭載して最大で8PBになるモデルを追加し、NVIDIAのAI学習サーバー「DGXシリーズ」との最適化を実現
(4) Amazon Web Services(AWS)、Microsoft AzureのストレージをPure Storageのソフトウェアから利用できるクラウドサービスのGA(General Availability、一般提供開始)
最も注目すべきは、同社がオンプレ用、自社クラウドサービス経由で顧客に提供しているフラッシュストレージの新しいグレードが2つ追加されたことだ。
1つは同社のフラッシュストレージで最上位製品に位置することになるDirectMemoryだ。DirectMemoryは、Intelが開発したフラッシュメモリの性能をDRAMに近づける技術3D Xpoint(スリーディークロスポイント)を採用し、SLCのフラッシュメモリよりも高速になった「Optane」(オプテイン)を採用した製品になる。
Pure Storageによれば、Direct Memoryによりレイテンシ(遅延)は半分になり、アプリケーションの性能は2倍になるという。Direct Memoryは既に同社が「FlashArray//X」として提供しているフラッシュストレージ製品の最上位モデルと位置づけられ、一種のストレージキャッシュとして利用することができる。
もう1つの新しいフラッシュストレージはQLCのフラッシュメモリを搭載することで、そこそこの性能を低価格に提供できる「FlashArray//C」だ。
フラッシュメモリは、1つのセル(フラッシュメモリの中のデータを保管しておく単位のこと)にいくつのデータを当初は1ビット(SLC)だったのを、2ビット(MLC)、3ビット(TLC)、4ビット(QLC)と増やしていった。フラッシュメモリが同じセル数であるとすれば(計算上は)MLCはSLCの2倍、TCLはSLCの3倍、QLCはSLCの4倍のデータを格納することができる。
このように、データ容量を増やすには有効な技術なのだが、その反面弱点もあって1セルあたりに格納するビット数が増えれば増えるほど性能(特にレイテンシ)は低下し、耐久性は落ちていく。
しかし、それでもハードディスクよりは圧倒的に高速なので、沢山のデータをそれなりの性能で実現したいというニーズにはQLCのフラッシュメモリは適していると言える。FlashArray//CはこのQLCを利用することで「低コストに大容量のストレージを使いたい」という顧客ニーズに応える製品となる。
これにより、性能重視のエリアではDirect MemoryのFlashArray//Xが、通常のエンタープライズアプリケーションには通常のFlashArray/XXが、データの保管などの用途にはFlashArray//Cがという形でラインナップが完成することになる。
両製品とも本日(9月17日、現地時間)から一般提供が開始されており、既に同社顧客がオーダーできる状況にあるとPure Storageは説明した。
NVIDIAのDL学習に最適化したフラッシュストレージ「AIRI」に対応したサーバも正式発表
Pure StorageはAIRI(英語ではエアリー、日本語ではアイリ)という開発コードネームで、NVIDIAのAI開発プラットフォーム(DGXシリーズ)に最適化した製品群の計画を明らかにしてきたが、今回のPure//Accelerate 2019では、そのAIRIに対応したブレードストレージサーバーとなるFlashBladeの新モデルとして150ブレードを搭載し、最大で8PBまで拡張できる製品を正式に発表した。
NVIDIAのGPUを利用したAI開発の環境では、GPUの演算性能はもちろん重要なのだが、同時にデータの読み書きの性能も課題になっている。というのも、GPUを利用してディープラーニングの学習を行なわれる場合には、膨大なデータを活用するからだ。
そこで、Pure StorageとNVIDIAが共同で開発したAIRIは、ブレードストレージサーバーのFlashBladeと組み合わせることで、そうしたボトルネックを解消する。
FlashBladeはスケールアウト型のブレードストレージサーバーで、ブレードを足せば足すほどストレージサーバーの性能を引き上げることができる(イメージとしてはRAID0がストレージの台数を増やせば増やすほど高速になる仕組みと同じだと理解するとわかりやすい)。このため、NVIDIAのスーパーコンピュータであるDGXシリーズと組み合わせることで、ディープラーニングの学習時に問題となるストレージの帯域幅の問題を解決する。
新しいFlashBladeは内蔵できるブレードを最大150まで増やすことができ、最大で8PBの容量に対応することができる。
AWS・Azureとの統合サービスも一般提供開始
また、Pure StorageはAmazonが提供するパブリッククラウドサービスAWS(Amazon Web Services)とMicrosoftが提供するパブリッククラウドサービスAzureを、Pure Storageの一部として使うことができるサービスであるCloud Block Store for AWS、CloudSnap for AzureのGA(General Availability、一般提供)の開始をしたことを明らかにした。
Pure StorageのストレージはPurityというソフトウェアで、構成を管理したり、バックアップを作成したりなどを柔軟に利用できるが、それぞれのサービスを活用するとAWSとAzureが提供するクラウドストレージをPure Storageのストレージとして利用して、管理することができる。
Cloud Block Store for AWSに関しては従来と同じようにPure Storageと契約することもできるし(1年~3年)、AWSのストア経由で機能をテストしたり、契約したりもできるようになる。