イベントレポート

NIMS WEEK 2019

五感センサー最後の砦“嗅覚”をセンシングする

10月28日から11月1日まで茨城(千現地区・並木地区・桜地区)と東京(東京国際フォーラム・東京大学 本郷キャンパス)で行われた、「NIMS WEEK 2019」。特定国立研究開発法人、物質・材料研究機構(NIMS)が実施する研究成果などの発表会で、超スマート社会に向けた材料進化の最前線がアピールされている。本レポートでは、その中で、筆者が注目したものを紹介する。

 ニオイをセンシングし、生活や医療に役立てようとする研究が進んでいる。MSS(Membrane-type Surface stress Sensor)は、香りやニオイのモノサシを目指すセンサーだ。現在は黎明期とも言える状況で、MSSフォーラムで多くの企業が参加し、実証実験が進んでいる。

 嗅覚とあるように、すでにお酒のニオイからアルコール度数を推定したり、ラ・フランスの熟度指標である硬度をニオイから推定したりすることに成功している。

 また既存のレーザーを使用するものよりも、MEMSを採用したことで小型化が容易で、かつ約100倍の感度を持つ。

試作機。センサー及びボード自体は指先サイズ

 例えば、1チャンネルは1mm以下で、1cm内に100チャンネル以上を集積可能で、シリコンベースで大量生産にも適する。センシングレベルは、ガス分子でpmm以上の感度で、応答速度も1sec以下の応答にも対応する。

 そういった性能から、IoTセンサーとしての社会実装を目指すほか、モバイル機器への搭載もやりやすい。生活環境や人のニオイをセンシングできる性能があるため、IoTセンサー網への組み込みを狙う。

 仕組みは、膜型表面応力センサーの利用。感応膜にガス分子が吸着する際にゆがみが発生。それを電気信号として検知する。また感応膜には有機や無機、生体などを利用可能となっている。

 ちなみに、ニオイの成分分子は40万以上。なにかのニオイにひとつ含まれる分子は1~数千と組み合わせが膨大だ。

林 佑樹

1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、材料、先端科学のほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。それらジャンルすべてが何かしらの技術でリンクしているのが最近のお気に入り。技術などを見る基準は「効率のいいサボりにつながるか」。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影が多い。