イベントレポート

CEATEC 2025

CEATECになぜ巨大バンカー? 富士通ブースで体験できる「AIキャディ」付きバンカーショット

名門ゴルフ場のバンカーショットを体験可能

CEATEC 2025の富士通ブース

CEATECに巨大バンカーが出現、名門ゴルフ場を再現

 CEATEC 2025の富士通ブースには、巨大なバンカーが登場した。

 これは、高低差が約1.6mという、プロでも攻略が難しい「東急セブンハンドレッドクラブ 西コース18番ホール」の名物バンカーを、リアルサイズで再現したものだ。砂も同じものを使用するという力の入れようだ。

大きなバンカーが登場した

 なぜ、富士通が名門ゴルフ場のバンカーを、CEATEC会場に再現したのか。

 それは、富士通が持つ独自の「骨格認識AI」技術を、わかりやすく訴求するため仕掛けだったのだ。

砂は、東急セブンハンドレッドクラブで使用されている本物を持ち込んだ

 富士通では、Fujitsu Uvanceのオファリングである「AI Technologies and Solutions」において、人の動きをデータ化する骨格認識AI技術を提供。取得したデータを分析し、AIエージェントが、的確なアドバイスを行い、人のパフォーマンスを最大限に引き出す最適な動作をリアルタイムで提案することができるようにしている。

 その体験型デモンストレーションの題材として、ゴルフのバンカーショットを選んだのだ。

「AIと一緒にバンカーという大きな壁を乗り越えていく」

 富士通ブースのテーマは、「人の能力を拡張するAI」である。「AIが人の仕事を奪うのではなく、AIが人をサポートし、人とAIが共存していくことを目指している。AIと一緒に、バンカーという大きな壁を乗り越えていくという意味も込めた体験になる」と説明する。

「モンスターバンカーチャレンジ」の様子

 富士通は、2022年のCEATECではゴルフスイングの骨格認識AIのデモンストレーションを行い、2024年のCEATECでは、バスケットボールのシュートフォームや、能楽の体験を題材としてきたが、今年は、さらに大掛かりな仕掛けで訴求をしてみせた。

AIキャディが攻略をサポート、体験も可能

 再現した東急セブンハンドレッドクラブは、千葉県千葉市にある名門ゴルフ場で、10月17日から開催される富士通レディース2025の会場にもなっている。これまでの歴史のなかでも、18番ホールの名物バンカーにつかまり、優勝争いから脱落するといったドラマが生まれている。今回の「モンスターバンカーチャレンジ」の展示では、AIキャディのアドバイスを得て、この難攻不落のバンカーを攻略することを目指す。

目の前には1.6メートルの壁が立ちふさがる
AIキャディによるアドバイス
富士通所属の古江彩佳プロからの応援メッセージも

 バンカーの向こうには、横8900mm×縦3450mmの大型スクリーンを設置。富士通の骨格認識AIと、AIGIAのスイング解析アプリケーションを組み合わせて、スイングの分析結果をアドバイスする。出力されるデータは、ミート率やヘッドスピード、打ち出し角度などのパフォーマンス評価、前傾ライン、膝の角度などの姿勢評価であり、それらをもとにしたアドバイスが行われる。AIGIAのアプリには、丸山茂樹プロが監修に加わっており、アドバイスは、それらのノウハウをもとにしている。

 「モンスターバンカーチャレンジ」は、予約する形で体験ができる。

 参加者のショットが、このバンカーから脱出し、グリーンに乗ったときには、ブース前で見ていた来場者から大きな拍手が湧くという一幕もあった。

15日にはデジタル庁の平将明大臣も来場、バンカーショットを体験していた
富士通の時田代表取締役社長もバンカーショットを体験

アプローチも体験可能、もちろんAIキャディあり

 また、アプローチの体験もできるようになっている。

アプローチショットスキルアップの様子。横と後ろのカメラで骨格を認識して分析する

 こちらは、「アプローチショットスキルアップ」と題し、東急セブンハンドレッドクラブ 西コース17番ホールを再現。グリーン手前30ヤードからのアプローチショットに挑戦。このスイングを分析し、AIキャディがアドバイスをくれる。

 バンカーショットと同様に、富士通の骨格認識AIと、AIGIAのスイング解析アプリケーションを連携。さらに、PRGRが持つ最新弾道計測技術を組み合わせて、クラブの使い方を分析して、AIキャディがアドバイスする。

ビンそばに寄せることができた
様々な指標が表示される
骨格を認識して姿勢をアドバイスする
こちらもAIキャディによる細かいアドバイスが受けられる

マーカーレスの「骨格認識AI」、アドバイスの品質統一や「すぐに改善」に効果

 体験型デモストレーションでは、いずれも横と後ろに2台のカメラを設置。マーカーレスで、複雑な人の動きを捉えて、高速に、高い精度で解析できるのが特徴だ。

2台のカメラを使って、スイングのデータを取得する

 「2台のカメラを設置すれば、骨格認識が可能であるため、インドアゴルフレッスン場などの狭い場所でも設置できる。また、従来の仕組みだと、映像データを見てコーチがアドバイスするため、時間がかかったり、コーチごとにアドバイスの仕方が違ったりするが、システム化することにより、スイングをした1秒後には結果が出ており、すぐにアドバイスをもらうことができる。スイングの感覚が残っているところでアドバイスをもらえるため、すぐにスイングの改善に活かすことができ、同時に、コーチのアドバイス内容の品質も統一化できる。多くの人を対象に、ゴルフの技術向上に貢献ができる」とした。

 骨格認識AIでは、フォトリアル技術を活用することで、有用な学習データを人工的に大量に生成し、アノテーションを実施しているほか、人間の身体にあわせた独自の補正アルゴリズムを採用。ディープラーニングによる画像解析の課題を解決しているという。また、人の動きを、3次元に、時系列を加えた「4次元」で捉えて、一連の動きを動作として認識することで、より精度を高めているという。富士通では、骨格認識AIに関して、200件以上の特許を取得している。

国際大会の採点支援にも採用、スポーツや医療など9社と連携

 富士通の骨格認識AIは、すでに実用化されている。

 国際体操連盟では、2019年から同技術を採用した採点支援システムを導入。10月19日から、インドネシアのジャカルタで開催される2025 FIG体操競技世界選手権でも、採点支援システムが採用されることになる。「体操における採点支援システムでは、4~8台のカメラを使って精度を高めている」という。

 また、Human Motion Analyticsにより、骨格認識AIのソフトウェアライセンスやAPIで提供。様々な業種に特化したパートナーとの連携によって、実用化を進めている。

 今回の展示で連携したAIGIAをはじめとして、すでに9社との連携を図っており、野球やジムなどのスポーツ分野のほか、医療分野では、台湾Acer Medicalとの協業により、高齢者の歩行パターン異常を検知して、認知症やパーキンソン病などの早期把握を支援するという。