イベントレポート
CEATEC 2025
三菱電機、エアコンが準ミリ波で集中度を計測、自動でコーヒーが届く時代に?
デジタル基盤「Serendie」で「働く」を革新
2025年10月17日 08:40
CEATEC 2025の三菱電機ブースは、「『働く』を自分らしく。~Serendie で生み出すイノベーション~」をテーマに、三菱電機のデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」を積極的に訴求。多様なデータを組み合わせて、オフィスや工場に向けた新たなソリューションや、最新技術を展示した。
エアコンが、それぞれの人の「集中度」を計測、コーヒーを届けたり、空調を変えたり…
ひとつめの事例が、「Serendie で創る、自分らしく働けるオフィス」とした展示だ。
三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」では、「エモコアイ」というバイタルセンサーを搭載している。準ミリ波ドップラー方式を採用したバイタルセンサーが、人の脈を非接触で計測し、そこから「気持ち」を推定し、数値化するのが特徴だ。
この事例では、エモコアイのセンサーを利用して、90秒間に渡って非接触で参加者の脈を計測し、集中度を推定。その結果をもとに、集中度が高い人には、ロボットがコーヒーを届けて、リラックスしてもらったり、集中度が低い人には、空調を強くして、オフィス内での覚醒を促したりといったことを実演してみせた。
「快適なオフィス空間を実現するために、これまで培った技術とAIを組み合わせることで、空調、照明、ロボットを自動制御し、心とテクノロジーが共鳴する快適なオフィス空間を実現する。自分らしく働ける環境を作り上げることを目指す」という。
裸眼で立体映像を体感できる「CieVision(3D)」で、遠隔診療・遠隔作業を
注目を集めていたのが、ゴーグルやヘッドセットなどのウェアラブル機器を装着せずに、裸眼で空中に浮かんだ立体的な映像を体感できる新たなXRソリューション「CieVision (3D)」である。
「現実世界に宿す、もうひとつの視界」というメッセージを実現するように、会場で行われたデモストレーションでは、カメラで撮影した動画を、隣に設置したCieVision (3D)でリアルタイムに表示。立体映像を裸眼で見ることができた。
CieVision(3D)では、手術支援インタフェースとしての利用や、遠隔診療での利用のほか、工場現場では、作業手順を空間に浮遊した画像として表示し、両手を自由に使いながら作業を行えるようにすることが可能になるという。また、アミューズメント施設や商業施設、クルマの車内で、浮遊する3D映像を表示することで、新たなインタラクションによる体験価値が提供できるとしている。さらに、「遠隔就労では、空中に相手の映像や資料を映し出して、その場に人がいるかのような環境で利用できるようになる」という。
また、「CieVision (2D)」では、明るい空中映像を表示でき、装置から離れた場所にも投影できる点が特徴で、それを生かした提案も行っている。具体的には、高速道路における逆走防止対策ソリューションとしての活用を提案。道路情報や車両情報、カメラ情報など、管制センターに集約した情報をもとに、逆走車両を検知すると、逆走するドライバーにだけ視認できる仮想の逆走警告を表示。逆走車両の安全な誘導や、正しい走行している車両に対する注意喚起も行うことができるという。
製造現場をゲーム化、生産性やモチベーション向上も?
ユニークな展示が、「製造業とゲーミフィケーションを掛け合わせたエンゲージメント向上ソリューション」である。
製造現場の生産ラインで働く作業者の実績やスキルを、アバターなどのゲーム要素で表現し、作業者のモチベーション向上や、生産性向上につなげるという。達成度に応じてアバターがレベルアップしたり、着せ替えが可能になったりする。作業者の成長の可視化や職場コミュニケーションの増加を通じて、エンゲージメントの向上や、データに基づいた監督者による評価、配置にも貢献できるという。
AIがトラブルシューティング、自律的に進化する未来の工場を再現
「Serendie で創る、自分らしく働ける工場」というテーマでは、AI によって自律的に進化する未来の工場をデモストレーションしてみせた。
未来の工場における塗装ロボット生産ラインをブース内に再現。三菱電機の産業用ロボットから得られたデータを、AWS上で、リアルタイムで可視化。エッジAIと組み合わせることで、デジタル空間上での動作検証、トラブルシューティングなどが可能になる。
展示エリアでは、自転車のフレームを塗装するロボットを設置。3Dシミュレータによって、計画通りに動作させるだけでなく、クラウド AI とエッジ AIを併用することで、対処方法を適切に示し、トラブルシューティングを可能にする様子を実演した。
装置の温度が上昇したため、現場に駆け付けた技術者が、その対策方法がわからない場合にも、音声でAIに問い合わせれば、適切な対策方法を指示してくれるという。
将来的には、三菱電機が提案する Neuro-Physical AI(ニューロフィジカル AI)を活用することで、より高精度な予測、制御が可能となり、生産効率や安全性を向上させ、人手不足の解消にも貢献できるという。