イベントレポート
新経済サミット2013
米国で注目のスタートアップ企業、Airbnb、Uber、oDesk、Fabが語る起業のコツ
成功した起業家も過去に数多くの失敗、「失敗することが重要だ」
(2013/4/17 13:48)
楽天やサイバーエージェント、GMOインターネットなどが加盟するITビジネスを中心とした経済団体「新経済連盟」は16日、国内外のIT企業トップや創業者などを招いたイベント「新経済サミット2013」を開催した。
午後のセッションでは「今起こりつつある破壊的なイノベーションの新潮流とは何か?」と題し、創業数年で注目のサービスに成長した米国のスタートアップ企業4社、Airbnb、Uber、oDesk、Fabの各CEOによるパネルディスカッションが行われた。
注目の起業家たちが数々の失敗談を披露
Airbnbは、自宅の空いている部屋などを泊まりたいという人に貸し出せるサービスを提供している。2008年にサンフランシスコで創業し、現在では192カ国、35万件以上の登録物件があり、ひと晩に10万人以上がAirbnbを利用して宿泊しているという。
Uberは、スマートフォンのアプリからタウンカー(リムジンやハイヤーのような高級車)の配車を依頼できるサービス。2009年にサンフランシスコで創業し、現在ではニューヨークやロサンゼルスなどの全米の都市や、ロンドン、パリ、シンガポールなど世界各地でサービスを展開している。
oDeskは、エンジニアなどの人材をインターネット経由で雇用できるサービスを展開。4社の中では最も古く2003年の創業で、現在では世界160カ国、320万人のフリーランスがサービスに登録。150万件の仕事を仲介しているという。
Fabは、優れたデザインの製品に特化したECサイトで、2011年にサービスを開始。オープン前からのソーシャルメディアを使った宣伝により、サービス開始初日だけでも6万5000ドルを売り上げ、現在では会員数1300万人を突破し、「7秒に1つの商品が売れる」までに成長したという。
こうした大成功を収めている4社のCEOだが、起業については「決して最初からうまくいったわけではない」と口を揃える。
Fabのジェイソン・ゴールドバーグ氏は、以前の起業では投資家などから集めた4000万ドルを失ったという経験や、「現在のサービスを始める前のFabはゲイコミュニティ向けのサービスだったが、まるでダメだった」といった失敗談を披露。Fabもどうするか共同創業者と話し合う中で、「自分たちが最も長けているのはデザインだ」という結論が出たことで、今の成功に至ったとした。
Airbnbのブライアン・チェスキー氏も、Airbnbのアイデアをメンター(助言者)に披露した際には「まさか、たったそれだけのアイデアじゃないよね」とあきれられたことや、投資家からも「自分の家に誰かを泊めるなんて信じられない、そんな変なアイデアは初めて聞いた」という反応が返ってきたことを紹介。それでもサイトを立ち上げたが、すぐに資金繰りが苦しくなり、シリアル食品を売って資金を稼いでいた時期もあったというエピソードを披露した。
Uberのトラビス・カラニック氏は、「最後に在籍していた企業では、4年間給料も出なかった」と語り、以前にはP2Pのサーチエンジンを開発していたが、そのために数千億ドル規模の訴訟を起こされたといった体験を語った。
oDeskのゲーリー・スワート氏は、「現在で言えばDropboxのようなサービスを起業し、投資家からだけでなく義理の父からも借金をしたが、まるで返せずに終わってしまった」とコメント。ただし、その失敗は現在のoDeskに生きており、サービスに市場性があるかどうかをきちんと見るようになったという。
4人とも、過去の失敗については苦笑いも交えつつ語ったが、「失敗することが重要だ」としている点は同じだ。ゴールドバーグ氏は「みんな失敗する。リスクを取ることが起業家精神。会社が倒産したらどうしようと考えると毎朝怖いが、だから今日頑張らなきゃというのがモチベーションになっている」とコメント。チェスキー氏も、「シリコンバレーでは、いいアイデアを持つためには、たくさんのアイデアを持つことが必要だと言われる。ほとんどは失敗するから」と語った。
また、アイデアを実行に移すことが重要だとする点についても4人の意見は一致。スワート氏が「成功するのは新しいアイデアではない場合も多い」と語ると、ゴールドバーグ氏も「たとえばEコマースはAmazonや楽天がもうやってしまい、それ以上のことなんてできないと人は言うかもしれない。しかし、環境が変われば求められるものも変わる。今はエモーショナルコマースの時代だと思う」と語った。
一方、サービスが成功するまで続けるべきか、それとも早めに見切りをつけるべきかという質問については、4人の意見は分かれた。ゴールドバーグ氏が「2008年に作ったSNSは、1年やって無駄だったらやめようと決めていた。今は数週間程度でも十分なフィードバックが得られるから」と語ったのに対し、カラニック氏は「心から信じているものがあるなら、行けるところまで行くことが重要だと思う。信じられなくなった時がやめるタイミング」とコメント。スワート氏は「自分はどちらかと言えば実行家なので、周囲の意見が重要になる」、チェスキー氏は「最初に使ってくれたユーザーが素晴らしい体験だったと言ってくれたので、周囲はなぜやめないのかと言ったが私はあきらめなかった」とそれぞれの意見を語った。
法的規制については「新しい仕組みを一緒に考えてほしい」
新経済サミットの他のセッションでもテーマとなっている、規制とサービスの関係については、Uberのカラニック氏がコメント。「規制が我々のサービスの壁になる。また、合法だからといってタクシー業界が我々のサービスを受け入れてくれるわけではなく、保護主義が厳しいタクシー業界もある」として、アジアでもシンガポールでサービスを開始し、ソウルや台北での開始も予定しているが、日本では規制が厳しいため現状ではサービス開始の予定はないと語った。
「日本ではハイヤーは一般市民が使うものではないという発想に立っており、おかしな法律や規制もたくさんある。私達が日本でUberのサービスを始めるには、旅行代理店の免許も取らなければいけないらしい。なぜかは知らないが。どこの都市でも規制によって競争を抑えてきた。日本においても、様々な複雑でわけのわからない規制を変える方法はないかと考えている。よいアイデアがある人がいれば助けてください」(カラニック氏)。
一方、Airbnbのような宿泊サービスにも各種の法律や規制があるが、チェスキー氏は「私たちの事業は世界各地で展開しているが、その都市の法律や規制をすべて知っているわけではない」と語り、現時点で特に問題にはなっていないと説明。
oDeskのスワート氏は、「雇用や決済についてはどの国でも法的な規制が厳しいが、そうした法律はそもそも雇用者や企業を守ろうとしているもので、私たちはそれを壊そうとしているわけではない。21世紀型の仕組みはどうあるべきなのかを、一緒に考えてほしい」と語った。