検索ワードから景気回復の兆しを示唆、米Google最高財務責任者


 グーグルは3日、企業経営者や宣伝・マーケティング担当者、パートナー企業などを対象にしたイベント「Google Business Day 2009」を開催した。

 キーノートセッションでは、グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏が同社の2009年の取り組みを紹介したほか、米Google上級副社長兼最高財務責任者のパトリック・ピシェット氏が昨今の経済動向について話した。

すべてはクラウドの世界を発展させるために

グーグルの辻野晃一郎代表取締役社長
自民党と民主党の検索推移

 辻野氏は、「2009年を振り返ると、まさに『チェンジ』という言葉がふさわしい」と述べ、日米の政権交代や景気動向に触れた。「米Googleは創業11年になり、世代交代に向けて次のチャレンジも進んでいる」。

 2009年のグーグルの取り組みについては、まず、選挙関連情報を提供するプロジェクト「Google 未来を選ぼう2009」を紹介した。8月に行われた衆院選の立候補者へユーザーが質問し、立候補者は「YouTube」で回答するというものだ。

 どのような質問をするのかをユーザー投票で選んだが、「27万票が集まり、最終的に5つ質問を立候補者へ投げかけた。回答は400件あり、これは衆院選全立候補者の30%になる」。また、特設サイトは、選挙期間中に140万人が利用したという。

 続いて、選挙期間中のWeb検索キーワードの推移グラフを紹介。グラフには、自民党と民主党の検索数が示されているが、選挙期間中に民主党の検索数が急上昇している。「この結果を見ると民主党の勝利は予測できた。検索は世論を反映するもの。世の中の声が拾えるツールになっている」。

 携帯電話への取り組みについては、日本初のAndroid搭載機種がNTTドコモから発売されたことに言及し、「日本でAndroidが広まる最初の年になった。今後は各キャリアからAndroidケータイが出ることを想定している」と話した。「米Googleの中でも、モバイル事業は日本で学ぼうと考えている」。

 「Google マップ」の「ストリートビュー」機能については、「プライバシーに配慮し、対象地域を拡大している。地域の皆様の理解を得ながら進めている」と話し、追加した地域を紹介。さらに、施設のオーナーからの依頼でグーグルが撮影し、ストリートビューに追加するパートナープログラムなどを説明した。

 「YouTube」については、「2009年は本格的な広告媒体として展開した。今後もその方針で力を入れる」。また、現在は300社を超えるオフィシャルパートナーがおり、9月にはテレビ朝日とTBSもパートナーになったと説明。YouTubeのユニークユーザーは月間2300万人以上で、モバイルからの再生数も1日2000万回を超えるという。

 このほか、広告事業については、「今年は費用対効果からインターネットの広告が見直された。『Google アドワーズ』の認知・進化を発揮した年。これに『YouTube』を加えると、ブランディングからターゲティングまでのソリューションを提供できるようになった」とコメント。「今後は、地域情報をマスと連携させ、新しい広告の世界を提供していきたい」とした。

 辻野氏は、「グーグルはいろいろなことを手広くランダムに進めているように見えるかもしれないが、我々はクラウドコンピューティングの将来に揺るぎのない確信を持っている。すべてはクラウドの世界を発展させるために、あらゆる経営資源を投入している」と話す。「企業のビジネス拡大において、クラウドの恩恵は計り知れない。仕事のスタイルを変え、高い生産性を実現できる。クラウドを利用する際は、Googleを想定に加えてほしい」とアピールした。

Googleの検索クエリから経済を読み解く、景気回復の兆しあり

米Googleのパトリック・ピシェット上級副社長兼最高財務責任者

 ピシェット氏は、「Googleは、現在を把握することに長けている」と話し、日本でのWeb検索クエリの状況を紹介した。「直近の四半期を見ると、グルメやイベント、自動車、不動産の検索回数が増えている。一方、失業保険や自立支援、メンタルヘルスの検索は減っている」。このことから、景気回復の兆しはあるとし、米国でも同様だという。

 「政府が出すような労働統計や公式統計値の発表を待たなくても、Googleの検索トレンドを見れば、経済がわかる。確かに厳しい経済状況は続いているが、回復の種は蒔かれている」とコメント。「ビジネスにおいては、少し先んじて投資を行うべきだろう。景気が本格的に回復したとき、それをフルに活用できるよう準備しておくことが必要」とした。

 デジタルの世界で経済を見た場合、「後退は皆無」だという。インターネットユーザーは世界で17億人おり、世界人口の27%に相当する。また、16のインターネット先進国では、人々は余暇の時間の30%をオンラインに費やしている。日本においては、インターネット普及率が75%で、40歳未満においては、ほぼすべての人がインターネットを利用していると説明した。

 技術的な視点では、「数週間前に米国ロサンゼルスと日本の千倉の間で海底ケーブルがつながった。これを利用するのは来年になるが、稼働すれば最大4.8Tbpsの通信が可能となる」。さらに、コンテンツも爆発的に増えているとし、「人類の誕生から2003年まで、人間は5エクサバイト相当のデータを記録しているが、今は48時間で同じ容量のコンテンツが作られている」と説明した。

 ピシェット氏は、「さまざまなデータを見ると、今後もインターネットの分野は加速化する以外考えられない。インターネットは成熟期に達しておらず、本当の力を見せていない」と語る。また、今後のトレンドとして、「すべてはオフラインからオンラインへ移行する」「人々はクラウドで生活するようになる」としたほか、インターネット上のリソースを活用することで、「小さい企業でもイノベーションを起こせる」と強調した。


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(野津 誠)

2009/12/3 16:23