ニュース

米政府のカスペルスキー製品使用禁止の件について、ユージン・カスペルスキー氏が語る

露Kaspersky Lab最高経営責任者(CEO)のユージン・カスペルスキー氏

 露Kaspersky Labで最高経営責任者(CEO)を務めるユージン・カスペルスキー氏が、メディア向けの説明会を6月12日に実施した。最近のインターネットセキュリティ動向に触れつつ、米政府におけるカスペルスキー製品の使用禁止に対する、同社の透明性向上に向けた取り組みなどについて説明を行った。

 2016年の米大統領選挙で同社製品がロシアの諜報活動に利用された疑いがあるとして、米政府は安全保障上の問題からカスペルスキー製品を政府調達企業リストから外していた(2017年9月14日付関連記事「米国土安全保障省がカスペルスキー製品の排除を通達」参照)。

 同社はこの騒動を受け、透明性を高めるための取り組み「Global Transparency Initiative」を発表し、2018年5月には同社が使用するツールやソースコードを第三者組織が監査・検証するための施設「Transparency Center」をスイスのチューリッヒに開設した。同社インフラの一部、「ソフトウェアアセンブリライン」および「Kaspersky Security Network(KSN)」データの保管と処理を担うサーバーを移転した。2020年までにはアジア、米国にも同施設を開設する予定になっている。

 Kaspersky Labでは同社が地政学的な混乱の中におり、結果的にユーザーにも悪影響を与えていると見ている。

 「残念ながら政治的な観点から非常に複雑な問題に発展している。新しいTransparency Centerでソースコードやアップデートを各国の第三者組織で見ていただくことで透明性を証明していきたいと思っている。」(ユージン氏)

 また、パブリックアフェアーズ担当バイスプレジデントのアントン・シンガリョーフ氏によると、ドイツの情報セキュリティ庁(BSI)など欧州各国、日本やシンガポールでも継続的な対話を行うことで、同社の取り組みについて理解を得ているという。中でも英国当局ではGlobal Transparency Initiativeを立ち上げる中で支援を受けていたという。

 一方で米国は対話を一切受け入れない状況のため、「何が懸念事項になっているのか、理解して対応する必要がある」としている。米国での業績は「下降気味」としながらも、ロイヤルカスタマー層は存在するため、ユーザーが安心するための透明性確保に向けた取り組みを推進するとしている。

 なお、Transparency Centerの今後の設置国については、「可能性として日本も探っていく」とコメントした。

露Kaspersky Labパブリックアフェアーズ担当バイスプレジデントのアントン・シンガリョーフ氏