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RPAで住宅ローンの記入項目を50%削減、事前審査が最短1分で可能に~アルヒが実用化
住宅ローンの申請を見える化するサービス「ARUHI navi」も開始
2018年12月27日 12:47
住宅ローンの貸し出し・取り次ぎ業務などを行っているアルヒ株式会社は、RPA(Robotic Process Automation)の活用により、住宅ローン審査の自動化に取り組む。2019年3月までに実用化する考えだ。すでに2017年1月には、RPAの活用により、申し込み記入項目を最大50%削減することに成功。住宅ローンの「簡易事前審査」および「家探し前クイック事前審査」を、最短1分で行えるようにするなど、積極的なIT化を進めている。
マニュアルを見ながらの作業から、RPAによる自動判定・アシストへ
これまでの審査では、人が書類を印刷し、膨大な量のマニュアルを見ながらチェック作業を行っていたが、RPAの導入によって、書類から読み取ったデータからチェックすべき項目を選定し、自動判定したり、人のチェック作業をアシストしたりする。
同社では、「熟練の担当者しかできない業務を経験が浅い担当者でもチェック対応が可能になるほか、チェックの標準化によるオペレーションミスの防止、店舗における人の処理時間を半分に短縮できるといった効果が見込まれる」という。
将来的には、これらの機能を活用して、審査業務のアウトソーシングビジネスにもつなげる考えだ。
家を探す前でも融資額を事前審査、物件が見つかったらすぐに融資手続き可能に
アルヒが提供する「家探し前クイック事前審査」は、同社独自のもので、まだ家が見つかっていない段階でも融資可能額を事前に審査することができる。これを活用することで、物件が見つかったときにすぐに融資の実行手続きができる。
「優良な中古物件は、迅速に契約をしなくては売れてしまうことになる。個人がチャンスを逃すだけでなく、不動産業者にとってもビジネスチャンスを失うことになる。RPAの活用によって融資の可否を迅速に行うことができ、さらに家探し前クイック事前審査によって、まだ具体的な物件がない場合でも融資可能な額を審査できる。」(アルヒ代表取締役会長兼社長・CEO兼COOの浜田宏氏)
同社では、このサービスを活用し、将来的にはスマートスピーカーなどと連動させて、より簡単に物件を見つけることができるサービスにつなげる考えだ。
現時点では構想段階だが、例えば、家探し前クイック事前審査で3500万円の融資限度額が決まれば、スマートスピーカーに「品川区で、3500万円の物件」と問いかけると、その件数を返答。そこから「駅から徒歩5分以内」といえば、さらに絞り込んでくれる。間取りや駐車場の有無などの細かい情報も加えることが可能だ。ある程度、絞り込みが完了すれば、ディスプレイに情報表示が可能なスマートスピーカーには物件情報を表示することができる。さらに、AIスピーカーとの会話を通じて住宅ローンの申し込み手続きなども行えるようにする。
浜田氏は、「AIやロボットを活用することで、事前審査から融資実行に至るまでの作業の手間を少なくでき、圧倒的なスピードで申し込みや融資実行が行えるようになる。こうしたサービスを強化することで、個人や不動産会社から最も選ばれる企業を目指す」とする。また、「AIやRPAが広がれば、置き換えられる仕事が増えていくのは明らかだ。だが、これは人のやる仕事がなくなるというわけではない。ほかにやる仕事はたくさんある。当社の社員もやる仕事はたくさんあり、引く手あまた。無職になるわけではない」などと説明した。
「ARUHI navi」で住宅ローンの進捗を見える化、スマホから関係者間の確認作業・連絡が可能
一方でアルヒでは、住宅ローンの進捗プロセスを見える化する「ARUHI navi」のサービスを12月27日に開始する。個人ユーザーが利用できるもので、住宅ローンの進捗状況や必要書類の確認、不動産事業者とのやり取りなどを、スマートフォンやPCのウェブ上で確認することができるサービスだ。
事前審査や本申込、契約面談予約、契約面談完了、融資実行など、住宅ローンの申し込みから融資実行までの進捗状況を表示。グループメッセージ機能を使って、不動産事業者や司法書士などの住宅ローンの融資実行に関わる関係者間のやり取りを同時に確認できる。また、融資に関する審査結果や契約手続き案内、費用手数料案内などの文書をウェブ上で閲覧できたり、各種手続きの更新や契約面談日、融資実行日などを通知したりする。
関係者間の確認作業や連絡をスマートフォンを使って行うことで、個人と不動産事業者などの連絡の手間を削減し、申し込みから融資実行までのスピードアップが実現するという。
「現在、住宅ローンの申し込みから融資実行までのプロセスを見ると、住宅ローン会社、不動産業者、司法書士、顧客が、それぞれに電話やFAX、メール、書類などを使って複雑なやりとりをしており、結果として伝言ゲームになり、誰が誰になにを伝えたかが分からなかったり、どこかで作業が止まり、審査や融資実行までに時間がかかったりといったことが起こっていた。ARUHI naviは、関係者やユーザーが意思疎通を円滑にするためのプラットフォームであり、こうした問題を解決できる。申し込み受付から融資実行までのスピードを向上させるほか、進捗状況の可視化によって、関係者の安心感を醸成。プロセスの透明性を確保することで、コンプライアンスも強化できる。」
5年後に住宅ローン市場トップシェア目指す
アルヒは2000年6月に設立された企業で、住宅ローンの貸し出し、取り次ぎ業務、保険代理店業務、銀行代理業務を行っている。フラット35の取扱量では8年連続で国内最大規模となっている。2017年12月には、東京証券取引所市場第一部に上場。ちょうど1年を経過したところだ。代表取締役会長兼社長・CEO兼COOの浜田氏は、かつてデルの日本法人社長や、HOYAの取締役兼代表執行役最高執行責任者などを務めた経歴がある。
浜田氏は、「今後、住宅ローン融資件数および金額を毎年15%増で成長させ、現在5位の住宅ローン市場におけるシェアを、5年後にはトップシェアのポジションにまで引き上げたい」としたほか、「個人、不動産事業者、金融機関、消費財・サービスをつなぐ『マルチプラットフォーム企業』を目指す」などとしている。
2018年3月期の営業収益は204億円、税引前利益は52億円。2023年3月期には、営業収益380億円、税引前利益で120億円を目指している。
【記事更新 2018年12月28日 11:40】
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