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ふるさと納税は、返礼品ではなく、寄附金の使い道で選ぶ時代へ

沖縄・首里城の再建支援にすでに6億円、佐賀・糖尿病の根治研究に計3億円の実績

 ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクは10日、同社のふるさと納税事業への取り組みや今後の施策などを発表する報道向け説明会を都内で開催した。

「ふるさとチョイス」

「ふるさとチョイス」では、寄附の使い道を意識

 ふるさとチョイスは、ふるさと納税に関するさまざまな情報を調べられるサイトで、2019年10月21日現在で22万点以上の返礼品を掲載している。無料会員登録により、気になる返礼品をまとめる「お気に入り登録」や、過去の寄附の履歴を閲覧できる機能。地域や返礼品などによる絞込機能などを備えているほか、寄附金の使い道や、災害支援からも寄附先を選べる。また、人気の返礼品のランキングやおすすめの品を紹介するコーナーも設けている。

 寄附にあたっては、クレジット決済やコンビニ決済、キャリア決済、銀行振込、郵便振替など幅広い決済方法に対応している。また、申し込みはウェブからだけでなく、カタログや電話、FAX、東京・有楽町の実店舗のカフェ「ふるさとチョイスCaf?」でも直接申し込むことができる。さらに同サイトでは、地域の人と寄附者が交流できる「ふるさと納税大感謝祭」や「ふるさとチョイスアワード」などのイベントやセミナーも開催している。

 「ふるさとチョイス」では、ふるさと納税を“自分の意思を反映できる”制度であると捉えており、寄附の使い道にこだわった作りがサイトの特徴となっている。自治体はふるさとチョイス上で寄附の使い道に関する投稿を1日に何度も行うことが可能で、寄附者は自治体ごとにどのような使い道が用意されているのかを確認できる。

寄附の“使い道”を意識したサイト作り

 また、購入手続きをする際に、最初に使い道を指定し、それから個人情報を入力するという流れになっているのも特徴だ。ネット通販では最小限の手間で申し込みを完了させることを追求するのがセオリーだが、あえて1ステップ手間を増やして使い道を意識させることで、ふるさと納税の意義を理解してもらうことにこだわっている。

 さらに、使い道を選択した次のステップとして、自治体へ応援メッセージを送れるようになっている。これにより、最初は返礼品の魅力に釣られて申し込んだ人は、最初の使い道の選択画面でその自治体が行っている事業を知り、その事業に対して「がんばってください」といった応援メッセージを送るようになる。トラストバンク代表取締役の須永珠代氏によると、ふるさと納税の担当者は多忙な場合が多いが、この応援メッセージがふるさと納税事業に取り組むモチベーションにつながることも少なくないという。

株式会社トラストバンク代表取締役の須永珠代氏

 さらに最近では、申し込み後に、最初に選んだ使い道について過去にどのような使われ方をしたのか、具体的な利用実績を表示する機能も加わった。「ただ単にお礼の品をもらうだけではなくて、自分もその事業に参加したような意識になることができます」と須永氏は語る。

 寄附の使い道を寄附者に意識させる仕掛けはほかにも随所に用意されており、会員マイページの寄附履歴の詳細ページに、過去に選択した寄附金の使い道についての都度更新された最新情報を確認することもできる。

寄附の使い道で選ぶ「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」が増加

 トラストバンクでは、ふるさと納税を返礼品で選ぶのではなく、寄附の使い道で選ぶかたちを「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」と呼んでおり、「ふるさとチョイス」がオープンした2012年9月の1年後となる2013年9月にGCFを開始した。さらに2018年には、全高の自治体が共通して抱える課題に対して、複数自治体が連携して寄附を募る「広域連携ガバメントクラウドファンディング」もスタートしている。GCFのプロジェクト数は年々増えており、2018年には約226件に上り、今年もその数を上回る勢いだという。

「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」のプロジェクト件数の推移

 ちなみに2019年1月1日~12月2日の期間で最も寄附を集めたプロジェクトは、沖縄の首里城の再建支援プロジェクトで、現在、6億円を超える寄附が届いている。首里城のプロジェクトには返礼品は用意されていないし、災害支援ということでトラストバンクも手数料は一切得ていない。首里城の件でGCFがメディアに取り上げられたことにより、他のプロジェクトのPV数も昨年比150%に伸びているという。

 このほか、ランキング6位の佐賀県のプロジェクトは、1型糖尿病を根治するための研究費を募るプロジェクトで、今回で10回目の立ち上げとなり、これまでで合計3億円近くの寄附を集めている。そして2019年11月、名古屋大の研究グループが1型糖尿病でインスリンを使わない新たな治療法を発見したという発表があり、その研究費の一部はふるさと納税で集めた寄附金が財源となっている。

 「これまで、お礼の品があったからこそふるさと納税はこれだけ伸びたというのは事実だと思います。お礼の品によって、地域の生産者や事業者のビジネスのノウハウ蓄積やモチベーションの向上につながり、商品開発を行う地域商社が増えるなど、新たな産業にもなっています。このような状況の中で、ふるさとチョイスが目指す第2のステージは、お礼の品を選ぶ人にも、寄附金の使い道を意識させることで、地域を応援する気持ちを醸成していくことです。」(須永氏)

第2ステージに向けた施策

 そのための取り組みとして、まず、12月10日にふるさとチョイスの災害支援とGCFのふるさと納税の寄附総額が2019年に100億円を突破したことを機に、抽選で5組10名の寄附者を地域に招待する「使い道体験ツアー」のキャンペーンを開始した。同ツアーでは、災害支援とGCFを通じて、寄附金がどのように活用され、地域が変わったのかを現地で知ることができる。来年以降も同様のツアーを予定しており、ふるさと納税で復興した被災地の訪問や、ふるさと納税で生まれ変わった伝統工芸体験、ふるさと納税で助かった動物との触れ合いなどを順次実施することを予定している。

「使い道体験ツアー」の応募ページ

 また、現在は自治体によるGCFのプロジェクトのページはトラストバンクが投稿する仕組みとなっているが、2020年4月からは自治体が自由にいつでもGCFのプロジェクトを立ち上げて投稿できるようにする。現状でも、返礼品の投稿などは自治体がいつでも自由に投稿できるようになっているが、使い道についても返礼品と同じように、気軽にプロジェクトを公開できるようにする。

 このほか、寄附の使い道で絞り込む機能を追加したり、自治体がもっと具体的に使い道の詳細ページを作れるようにしたり、使い道選択のページにGCFプロジェクトを表示したりといった機能も来年度中の提供を予定している。

寄附の使い道で絞り込む機能を追加予定
使い道詳細ページを自治体が自由に作成可能に

 「ふるさと納税制度を地域の取り組みに生かすため、寄附者と事業者、自治体と寄附者、そして自治体同士など、いろいろな方をつなぎ合わせて、インターネットだけでなくリアルも含めてシームレスにつなげていくことがポータルサイトの役割だと考えています。」(須永氏)