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BluetoothとQRコードで傘をレンタル、神戸市と阪神電鉄が「アイカサ」支援で地域活性化
2020年2月20日 11:53
必要なものを使いたい時だけ借りられるシェアリングエコノミー・サービスが拡がりを見せている。
神戸市は傘のシェアリングサービス「アイカサ」を提供するNature Innovation Group(以下、アイカサ)と提携、阪神電気鉄道株式会社(以下、阪神電鉄)と共に、ICチップを内蔵したオリジナルのIoT傘をシェアするサービスを4月より開始することを発表した。2月17日には神戸市、阪神電鉄、アイカサによる「シェアリングエコノミーを活用したまちづくり実証事業に関する三者連携協定」を締結式が行われた。
アイカサは日本で初めて傘のシェアリングビジネスを開始したスタートアップで、東京や福岡を中心に800箇所以上あるスポットで自由に貸出と返却ができる傘を1日70円でレンタルしている。2018年12月に渋谷でのサービス開始から登録ユーザー数は8万人以上、レンタル傘の本数も1万本以上に増やしている。今回の連携は関西初のサービスとなり、神戸市の中心地である三宮から元町、ハーバーランドエリアと甲南大学がある岡本商店街、阪神電鉄39駅の構内をあわせた合計80箇所に2,000本のレンタル傘を設置する。
BluetoothとQRコードで傘をレンタル
アイカサはアプリを使わずLINEからサービスを登録し、支払いもLINE Pay(クレジットカードも可能)で行えるという簡便さが当初の特徴。だが、利用者が増えるにつれLINEユーザー以外からのサービス登録を希望する声が増えていた。レンタル傘も技術やコストの関係で柄の部分に付いたダイヤルを解除して使用するようにしていたが、今回の連携をきっかけに大きく見直しすることにしたとのこと。
大きな変更点は専用アプリの開発で、一度登録するだけで簡単に繰り返し簡単に使えるようにした。さらに、レンタル傘を置く専用スタンドを開発し、アプリを立ち上げたスマホを近づけるとBluetoothで通信し、傘立てに付いたQRコードを読み込むとロックが解除され、傘の貸出と返却ができるようにする。
クーポンの発行や周辺地域の情報提供もしやすくなり、神戸市では昨年2月にリリースした市民のエコアクションを促進するアプリ「イイことぐるぐる」との連携し、利用ポイントを提供するなどのコラボを計画している。
アイカサではサービスもさることながら、傘の仕様についても日々改善を行っている。アイカサの代表取締役を勤める丸川照司によると、ビニール傘の年間消費量は8000万本で金額にすると東京スカイツリーの建築費に相当すると言う。そのためレンタル傘は頑丈で軽くて修理が可能で、神戸市らしくタータンチェックと海をイメージしたオリジナルのデザインにしており、メンテナンスは神戸市内の福祉作業所に依頼することが予定されている。
また、新しくデザインされた傘は柄の部分にICチップが埋め込まれており、利用中の移動データを収集できる。今回の連携ではデータの分析や活用も予定しているが、詳細についてはこれから計画していくということだ。
シェアリングエコノミーに力を入れる神戸市様々な取り組みとの連携も
神戸市ではシェアリングエコノミーの推奨に力を入れており、コミュニティサイクル「こうべリンクル」やレンタルモバイルバッテリー「ChargeSPOT」といったサービスを展開している。傘のシェアリングサービスも神戸市内に設置されたつなぐ課が中心となって取り組みを開始し、2年かけて以下の5つの取り組みをつなげて展開する。
1. まちの利便性・快適性向上による地域経済・沿線活性化
2. 実証事業により得られるデータを活用したまちづくり・地域課題の解決
3. 市民のエコアクション促進(環境アプリとの連携)
4. 市内学生の起業・経営マインド育成
5. 市内福祉作業所の参画機会提供
締結式に出席した神戸市の久元喜造市長は「利用者を街全体から沿線まで拡げることで人の移動と回遊性を高め、現在進行中の三ノ宮エリアの再整備とも連携するなど、単なるレンタルサービスに終わらせない活用を3者で進めていきたい」とコメントしている。
阪神電鉄経営企画室部長の柴田達人氏は「傘の忘れ物は駅に届けられるだけでも半年で5500本もある。廃棄物処理の問題もありエコ対策としてのシェアサービスは以前から取り組んでいたこともあり、地域沿線の活性化支援にもつながる今回のプロジェクトには期待を込めて支援していきたい」と述べている。
丸川氏「シェア傘をインフラとして定着させたい」
アイカサの利用料は1日70円で6日以降は月末まで420円で使い続けられ、紛失代金も864円に抑えられている。平均的なビニール傘代の660円より利用料を抑えることで、傘を使う体験や高度を変えるのが目標だ。現在のアイカサの利用は20代後半から30代前半が中心で、男女比は半々だという。
今後はアプリで利用者の幅を拡げ、決済の種類を増やすことも予定している。LINEを使ったサポートも継続し、来年度には日傘の提供も予定している。「売り上げは現時点で未発表だが、長期的な目標としてはインフラとして定着するにはレンタル傘の本数が10から100万本になるまで拡大したい」と丸川氏はコメントしている。
サービス開始については明確な日程を発表したかったが、傘の製造を依頼している中国の向上が新型コロナウィルスの影響でスケジュールが読めないため、今回は4月中という発表になった。
製造については、メンテナンスを依頼する福祉作業所で対応する可能性もあるが、その際にはさらに新しい機能や仕様が取り入れられるかもしれない。単なる傘のレンタルに終わらず新しい取り組みにつなげていこうとするアイカサのこれからの取り組みにはこれからも注目していきたい。
(2/20 14:21更新)記事初出時、丸川氏の写真を誤って掲載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。