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ASUS、第3世代EPYCプロセッサの性能や搭載サーバーをウェビナーで紹介

 ASUS JAPANはウェビナー「第3世代AMD EPYCプロセッサーでデータセンターの未来を推進する」を4月21日に開催した。

 ASUSとAMDが登場。AMDが3月に発表した、Zenアーキテクチャーのサーバー向けCPU「EPYC」の第3世代製品EPYC 7003シリーズ(コードネーム:Milan)と、それを搭載したASUSのサーバーについて、特徴が紹介された.

ASUSのAMDのパートナーシップで要望に応える

 オープニングとしては、ASUSとAMDの両社から挨拶がなされた。

 ASUSからはサーバービジネスユニット ジェネラルマネージャーのRobert Chin氏が動画で挨拶に登壇した。

 Chin氏は、ASUSのサーバー事業のコアコンピタンスとして、「Performance(パフォーマンス)」「Green Computing(省電力)」「Management(管理技術)」を挙げた。

 また、「ここ数年でサーバーの世界はパラダイムシフトが起きている」として、「クラウドコンピューティング」「AI/機械学習」「5G」「Edge」の4分野を挙げ、それぞれにASUSが深く関わっていると説明した。

 そのうえでASUSとAMDのパートナーシップを紹介した。EPYCでは初代からパートナーとして「いっしょにプラットフォームや製品を展開してきた」とChin氏。そして第3世代EPYCまで提携を続けていることを強調した。

ASUS サーバービジネスユニット ジェネラルマネージャーのRobert Chin氏。ASUSのサーバー事業のコアコンピタンス3つ
ここ数年のサーバーのパラダイムシフト
ASUSとAMDのパートナーシップ

 AMDからは、日本AMD株式会社 ジェネラルマネージャー コマーシャル営業本部 日本担当 本部長の大月剛氏が挨拶に登壇した。

 大月氏は、HPCからエンタープライズ、AIメガクラウドまで、ASUSがデータセンターのさまざまなワークロードの要望に応えるためにCPUやGPUを提供していると語った。

 さらにAMDの強みとして、サーバー向けとクライアント向けの両方で、CPUとGPUをあわせて提供していること、それによりデータセンターからユーザーまで、エンドツーエンドで高性能なコンピューティング環境を提供していると強調した。

 Zenアーキテクチャーを採用したEPYCは、初代、第2世代に続いて、今回のテーマである第3世代がリリースされた。大月氏は、ASUSが第3世代EPYCを搭載した8機種以上の新製品をリリースしたことを紹介し、「ASUSとのパートナーシップによって、みなさんの要望に応えていきたいと思う」と語った。

日本AMD株式会社 ジェネラルマネージャー コマーシャル営業本部 日本担当 本部長の大月剛氏
データセンターの幅広いワークロードにCPUやGPUを提供
データセンターからユーザーまで、エンドツーエンドで高性能なコンピューティング環境を提供
EPYCシリーズとASUSとのパートナーシップ

第3世代EPYCプロセッサの性能や機能を紹介

 第3世代EYPCプロセッサについては、日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャーの関根正人氏が解説した。

日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャーの関根正人氏

 関根氏はまず、2017年に登場した第1世代からのEPYCの歩みを紹介した。それまでのサーバー向けCPUのブランドであるOpteronから、新しくZenアーキテクチャで作り直したEPYCとして登場し、第3世代が3月にリリースされた。このリリースについて氏は、当初から予定していたとおりのスケジュールであることを強調した。そして、その先の第4世代(コードネーム:Genoa)も開発を順調に進めており、さらにその先の開発も始まっているとして、「数年前から予定どおり進めて市場に投入している。安心して今後の製品展開に注目いただければと思う」と語った。

EPYCの歩み

 その第3世代EPYCについて関根氏は「ベンチマークでトップのスコアを出しているので、AMDでは『世界最高性能のサーバーCPU』を謳っている」と言う。強化点としては、コア性能だけでなく、メモリー性能も強化。そのほか、セキュリティー機能の強化や、これまで4チャンネルと8チャネルでサポートしていたメモリインターリーブに6チャネルも追加したことを挙げ、さらに第2世代EPYCとソケット互換であることもユニークな特徴として言い添えた。

 具体的には、第3世代EPYCのコアアーキテクチャであるZen 3は、Zen 2と比べてIPC(クロックあたりの実行命令数)を19%もアップしているという。通常は世代がかわると1割ぐらいで、大幅な強化だと関根氏は言う。その高速化の内訳として、先読みの機能の強化や、実行パイプラインが太くなっていることなどが合わさって実現したと氏は説明した。

 メモリまわりにも手が加えられている。「これまで内部バスとメモリクロックが、DDR4 3200では同期が取れていなかったため、最初のアクセスで若干レイテンシーがあった」と関根氏。第3世代EPYCでは、I/Oダイに改良を加えることで、DDR4 3200でもアクセスのレイテンシーを小さくすることに成功したという。「メモリのランダムアクセスが多いアプリケーションでは効果が期待できるのではないかと思う」(関根氏)。

第3世代EPYCの特徴
第3世代EPYCのアーキテクチャ
IPCが19%アップ
メモリまわりの強化

 第3世代EPYCも第2世代と同様に、チップレットのアーキテクチャを採用しており、メモリー/IOダイのまわりに最大8つの、コアとキャッシュを搭載したコアキャッシュダイ(CCD)が並んでいる。

 今回はCCDを大きくアップデートし、Zen2では、4つのコアがL3キャッシュのトータル16MBを共有していたのに対し、8コアでL3キャッシュのトータル32MBを共有するようになった。これにより、コアあたり最大2倍のL3キャッシュ領域にアクセス可能になり、より大きなデータセットがキャッシュにおさまることによるアプリケーションのパフォーマンス向上が期待される。また、たとえば5コア以上を使う仮想マシンでキャシュが分断されることによる効率低下がなくなるという。

メモリー/IOダイとCCD
32MB共有L3キャッシュ

 関根氏は、第1~3世代EPYCの比較表を示し、ソケット形状はSP3で同じ形状のまま、コアデザイン、コア数、CCXアーキテクチャ、メモリーなどを着々と進化させていると語った。

 それに加えて、サーバー向けなので第1世代のときからセキュリティにも注力しているとして、AMDインフィニティー・ガードと総称する、メモリ暗号化のSME(Secure Memory Encryption)とその派生機能を追加していると説明した。第1世代EPYCでは各VMのメモリ空間を固有のセキュリティキーで暗号化して守るSEV(Secure Encrypted Virtualization)を、第2世代ではVMの情報をもったレジスタも暗号化するSEV-ES(Encrypted State)を、第3世代では悪意のあるハイパーバーザーからVMへの書き込みを禁止するSEV-SNP(Secure Nested Paging)を採用している。

第1~3世代EPYCの比較表
AMDインフィニティー・ガード

 次に関根氏は第3世代EPYCであるEPYC 7003の製品一覧の表を示した。基本は8の倍数のコア数だが、第3世代では28と56コアの新しいSKUも追加した。

 また、コア単体性能を求める顧客に向けて、32コア以下で「F」型番のハイパフォーマンスコアモデルも用意した。コア単位のソフトウェアライセンスを利用する顧客に最適だという。型番の末尾に「/P」のついたシングルソケット専用のSKUも、従来どおりコストメリットのあるプロセッサとして展開している。

 さらに関根氏は16コアや8コアのCPUでも、上位コア数と比べてコア数以外の機能をいっさい差別化しないことを強調し、コア数だけを気にすればいいと語った。

 そのうえで関根氏は、EPYC 7003の各プロセッサのポジショニングを説明した。コア性能重視であれば、高周波数かつコアあたりのキャッシュサイズが大きい「F」のついたものが該当する。コア密度重視であれば、コア数が多い製品が該当する。性能&コスト最適化重視であれば、だいたい32コア以下のモデルが該当する。

EPYC 7003シリーズの製品一覧
各プロセッサのポジショニング

 続いて関根氏は、第3世代EPYCのベンチマーク優位性をアピールした。

 EPYC搭載サーバーが獲得した世界記録の数は200以上。「もともとEPYCはHPCで定評があったので、その方面のレコードは多数だが、それだけでなくHCIや分析系データベース、エンタープライズアプリケーションなど、バランスよく世界記録をとっているのも特徴だ」と関根氏は語った。

 HPC分野に関連するspec.orgの浮動小数点数演算性能については、関根氏は「Cascade Rake Refreshの最多コア数との比較」と断わりつつ、2ソケットCPUどうしで第3世代EPYCで差を広げて106%速い性能になったと報告した。

 クラウドや仮想マシンに関連するspec.orgの整数演算性能では、同じく第3世代EPYCでは106%速い性能になったという。

 エンタープライズに関するJVV(Java Virtual Machine Performance)の公表値では、第3世代EPYCで117%速い性能になったという。

 VDIに関連するLOGIN VSIベンチマークの結果も関根氏は紹介した。VDIにおけるビジネスユーザーの典型的なワークロードをシミュレートするもので、良好なユーザーエクスペリエンスが提供できるセッション数を測るベンチマークだ。結果としては1台あたり240対509で、倍以上のバーチャルデスクトップを提供できると関根氏は述べた。

 場所代や電気代を含む運用コストについても関根氏は比較した。spec.orgの整数演算性能で2万5000というスコアを実現するのに必要な台数が49%少なくなるという。それにより、35%の省電力や、4年間で35%のTCO削減が実現すると関根氏は語った。

HPC分野に関連するベンチマークの比較
クラウドや仮想マシンに関連するベンチマークの比較
エンタープライズに関連するベンチマークの比較
VDIに関連するベンチマークの比較
場所代や電気代を含む運用コストについての比較

 最後に関根氏は、プラットフォームベンダーやインタンスのサービスベンダー、ソリューション事業者にわたるパートナーエコシステムを紹介し、第3世代でさらに強化されて数が増えていると語った。

EPYCのパートナーエコシステム

第3世代などEPYCを搭載するASUSサーバーのラインナップを紹介

 第3世代などのEPYCを搭載するASUSサーバーについては、ASUS Japan株式会社 インダストリアルプロダクト部 シニアプロダクトマネージャーの王慶涛氏が解説した。

ASUS Japan株式会社 インダストリアルプロダクト部 シニアプロダクトマネージャーの王慶涛氏

 王氏はまず、第3世代EPYCにあわせてAUSサーバーのラインナップを更新したと語った。そのラインナップは、1Uから4Uまで、用途もメインストリームからHPC、GPGPUサーバー、高密度サーバーまでさまざまなものがあるという。

 そうした製品群を用途ごとに5つのグループに分けて王氏は紹介した。

 まずホスティング。この分野では高い密度が必要となる。これに対しては2Uに6ノードを集約した(他社でいうブレードサーバー)RS620SAを王氏は挙げた。

 次に仮想化基盤やクラウド。この分野では高いコア数や大容量メモリが必要になる。これに対して王氏は、RS700シリーズとRS500シリーズを挙げた。

 続いてデータ解析やHPC。この分野では高い並列性や演算性能が必要になる。これに対して王氏はRS700シリーズを挙げた。

 その次はディープラーニングやAI。この分野についてはGPGPUサーバーのESC4000AおよびESC8000Aを王氏は挙げた。

 最後はSDS(ソフトウェア定義ストレージ)。この分野について王氏は、最大24ベイのSSD(NVMe対応)を搭載できるRS700シリーズとRS500シリーズを挙げた。

5つの分野ごとのASUSのEPYC搭載サーバー

 また王氏は、ASUSサーバーがspecで712個の世界記録を獲得したことを紹介した。特に、第3世代EPYCを搭載したRS720A-E11が最速サーバーの世界記録を獲得したことを氏は強調した。さらにRS620SA-E10とRS500A-E10は、WindowsとLinuxの両方の環境で、電力効率の記録を取得したという。

ASUSサーバーが712の世界記録を獲得

 ここで改めて王氏は、ASUSのEPYC搭載サーバーのポートフォリオを整理した。

 まずRS520AとRS500A。ワンソケットCPUのサーバーで、位置づけは「バランス」。2Uで、最大24ベイにSSDを搭載できる(NVMe対応)。

 次にRS720AとRS700A。デュアルプロセッサのサーバーで、位置づけは「パフォーマンス」。2Uおよび1Uだ。

 3つめはRS620SA。2Uに6ノードを集約するサーバーで、位置づけは「コンピュート密度」。

 4つめはESC4000AとESC8000A。2Uと4UのGPUサーバーだ。

ASUSのEPYC搭載サーバーのポートフォリオ

 次に王氏は、第3世代EPYC対応サーバーでの新設計・新機能を紹介した。次世代AST2600 BMCハードウェアの採用や、GPUとFPGAの搭載密度の向上、水冷対応の設計、OCP 3.0対応、ケーブルアーム、全ストレージベイがNVMe対応などがあるという。

第3世代EPYC対応サーバーでの新設計・新機能

 ここから王氏は、個別の機種を説明した。

 1つめはRS720A-E11。第3世代EPYCのために新しく設計した新世代のハイパフォーマンスサーバーと王氏は説明した。2U、デュアルプロセッサ対応で、24ベイ(NVMe対応)、32枚のメモリを搭載できる。最新のモジュラー設計で、1G LAN×4または10G LAN×2をカスタマイズで搭載可能。OCP 3.0対応。GPUは、ダブルデッキのGPU×4搭載可能で、NVIDIA・AMDのGPU以外に、ザイリンクスのFPGAも認証している。

RS720A-E11

 2つめはRS700A-E11。720Aと同じ700シリーズで、1Uのモデル。デュアルプロセッサ対応。1枚のダブルデッキGPUを搭載できる。

 3つめはRS500A-E11。第2世代EPYCから更新した第3世代EPYC対応のメインストリームソリューションだという。1Uに12個のNVMe SSDを搭載できる。

RS700A-E11とRS500A-E11

 4つめはRS620SA-E10。マルチノードのサーバーだ。第2世代EYPCからの製品だが、第3世代のEPYCもあらかじめ対応するよう設計しているという。ノードごとシングルCPUを搭載し、1枚のGPUカード搭載可能。8枚のメモリ。1つのPCIe 4.0スロットを用意し、OCP 3.0のメザニンカードも1枚。2枚のM.2 OSドライブを搭載し、フロントに2つホットスワップ対応ベイ(NVMe対応)を備える。「たとえば42Uラックで計算すると、2Uに4ノードを搭載するサーバーを収めると84ノードとなる。それに対してRS620SA-E10は、2Uで6ノードなので、126ノードとなる」と王氏は試算してみせた。

RS620SA-E10

 5つめはESC4000A-E10。GPUサーバーで、「メーカーの中で最初にNVIDIAのA100向け認証を受けた」と王氏。片側に2枚のダブルデッキGPUを搭載するバタフライデザインが特徴で、合計4枚のダブルデッキGPUを搭載できる。また、オプションのPLXスイッチを使えば、最大8枚のシングルデッキGPUを搭載できる。

ESC4000A-E10

 続いて王氏は、ASUSのEPYC 7003プラットフォームでの新設計を紹介した。ハードウェアでは、ホットスワップファンや、ケーブル配線の改善、ボールベアリングのレールキット、ケーブルアームサポート、液体冷却ソリューションの提供、最新のBMCコントローラーが挙げられた。

 ソフトウェアでは、最新のBMC管理ソフトウェアASMB10-iKVMへの対応や、プラットフォームファームェア回復性(PTR)への対応が挙げられた。

 GPU&FPGAのマルチサポートとしては、RS720Aでは4枚のダブルデッキGPU搭載でき、RS520Aでは2枚のダブルデッキGPU搭載でき、700Aでは1枚のダブルデッキGPU搭載でき、さらにFPGAサポートと、ニーズにあわせた選択肢が挙げられた。

ASUSのEPYC 7003プラットフォームでの新設計

 ソフトウェア対応においては、VMwareやCitrixなどの仮想化、Red HatやUbuntuなどのLinux、Azure Stack HCIなどのHCIと、さまざまなワークロードにおいてISVによって認証されているという。

 その中でもAzure Stack HCI対応について王氏は紹介した。WindowsによるHCIソリューションで、「ハードウェアは、ストレージ、ネットワーク、GPUサポートなどで柔軟性を提供する必要がある」と王氏。「ASUSでは、ハードディスクベイ、ネットワークモジューラーサポート、OCP 3.0サポート、GPU/FPGA搭載密度の向上、など多大な努力をしてきた。第3世代EPYCとの組み合わせによって、最高のパフォーマンス、最強のデータ保護をそなえる、最大数の仮想マシンを運用できるソリューションを提供する」と語った。

 さらにAzure Stack HCIでのASUSのEPYC搭載サーバーを、ユースケースごとに王氏は選んでみせだ。ブランチオフィスとエッジにはRS500A-E10、SQLサーバーにはRS700A-E9-RS12、エンタープライズ仮想化にはRS700A-E11、スケールアウトストレージにはRS720A-E11だという。

 「これらの製品は第3世代EPYCの力を生かして、たとえば、高密度のユーザーベースを可能にするコア数や、高いセキュリティのSEVによって仮想化の保護を保証、大規模I/O設計によりスケールアウトしやすいこと、シングルソケットのソリューションによってソケットベースのライセンスソリューションでTCOの利点、といったことを実現する」と王氏は語った。

さまざまなワークロードにおいてISV認証
Azure Stack HCI対応
Azure Stack HCIのユースケースごとの、ASUSのEPYC搭載サーバー