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量子セキュリティのキーパーソンが講演、オンラインシンポジウム「量子が拓く未来の産業」10月25日開催、参加無料

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)、一般社団法人量子ICTフォーラムの共催によるオンラインシンポジウム「量子セキュリティ合同シンポジウム2022『量子が拓く未来の産業』」が10月25日に開催される。参加費は無料だが、事前登録が必要で、申し込みの受付は10月24日正午まで(ただし、定員になりしだい締め切り)。協賛は一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)、後援は内閣府と総務省。

 NICTは、2021年に「量子セキュリティ拠点」に指定され、研究開発、オープンテストベッドの構築・運用、標準化などによる社会展開、量子ネイティブ人材の育成を軸に活動を行ってきた。今回のシンポジウムは、量子セキュリティに関する現在行っている活動と、実用化に向けた産学連携の取り組みを紹介する場となっている。

 現在、広く使われている通信の暗号技術は、コンピューターの高速化と新たな計算技術の確立により、容易に解読されるようになると予想される。これに対して今回のシンポジウムのテーマである「量子セキュリティ」は、「量子通信」を基礎に、量子暗号技術の「量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)」と「ワンタイムパッド暗号」により、解読が非常に困難とされている。

 量子セキュリティの基礎となる「量子通信」とは、これ以上分割できない最小単位の粒子「量子」の状態を信号として送受信する技術だ。量子は通信回線の途中で盗聴された場合、変化が生じ、受信側で検知できるようになっている。量子セキュリティは、この特徴を生かして暗号鍵を送る「量子鍵配送」に用いられている。さらに、通信ごとに暗号鍵が変わる「ワンタイムパッド暗号」により、通信しているデータを盗聴しても復元することは難しいという。

「量子通信」の概念(画像提供:NICT)
「量子鍵配送」の概念(画像提供:NICT)
「ワンタイムパッド暗号」の概念(画像提供:NICT)

 シンポジウムは、徳田英幸氏(NICT理事長)、田原康生氏(総務省 国際戦略局長)、岡田俊輔氏(Q-STAR実行委員長/東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者/東芝デジタルソリューションズ 取締役社長)のあいさつで開幕する。

 シンポジウムは2部構成となっており、前半は、佐々木雅英氏(NICT 量子ICT協創センター 研究センター長)が「量子セキュリティ拠点の概要」、島田太郎氏(Q-STAR代表理事/東芝 代表執行役社長 CEO)が「量子技術の産業化に向けたQ-STARの取組み」、富田章久氏(量子ICTフォーラム 代表理事/北海道大学 教授)が「量子暗号通信技術の現状と課題、産学連携」と題して講演する。

 後半は、量子セキュリティ拠点の活動紹介について講演。藤原幹生氏(NICT 量子ICT研究室 室長)による「QKD技術の概要、我が国における社会実装の現状」、高橋莉里香氏(東芝 研究開発センター 研究主務)による「東芝における量子暗号通信技術の研究開発・実証の紹介」、前田和佳子氏(日本電気 アドバンストネットワーク研究所 プロフェッショナル)による「NECにおけるQKD技術の社会実装に向けた取り組み」、佐々木雅英氏(NICT 量子ICT協創センター 研究センター長)による「Tokyo QKD Network、保険医療用の超長期セキュアデータ保管・交換システム(HLINCOS)のご紹介」「電子カルテデータの復元・閲覧デモ」、鳥羽牧氏(凸版印刷 DXデザイン事業部 量子技術戦略室 室長)による「量子時代に備えたPQC CARDRの開発 耐量子-公開鍵暗号を実装したICカードによるアクセス認証」、横山輝明氏(NICT 主任研究員)による「NICTにおける人材育成プログラムについて」が予定されている。

 最後にパネルディスカッション「量子時代のクラウドサービスとセキュリティ対策」が行われる。モデレーターは佐々木雅英氏。パネリストは、花井克之氏(Q-STAR 量子暗号・量子通信部会 部会長/東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 ビジネスユニットマネジャー)、岩井大介氏(Q-STAR 最適化・組合せ問題に関する部会 部会長/富士通エグゼクティブディレクター)、高野秀隆氏(Q-STAR 標準化連携/提案WG、テストベッド連携WG/長大 クオンタム推進部 部長)、菊地俊介氏(さくらインターネット研究所 上級研究員)、倉員桂一氏(ECSEC Laboratory 代表取締役社長)。また、参加者のQ&Aを受け付ける時間も用意されている。