ニュース

NokiaがまさかのAndroidスマートフォンを発表

~買収予定のMicrosoftのコメントは建前にとどまる

 フィンランドのNokiaは24日、Nokia初のAndroidスマートフォンシリーズ「Nokia X」を発表した。

 MicrosoftがNokiaのデバイス・サービス部門買収を決定していることから、Windows PhoneではないAndroidスマートフォンを新たに開発販売したNokiaの意図に注目が集まっている。これを受けてMicrosoftは24日、公式なコメントを発表した。しかしコメント内容は買収完了前であることから建前にとどまり、具体的な内容には踏み込んでいない。

Nokia Xファミリー3機種。タイルデザインのUIを実装しており、ぱっと見はWindows Phoneのようだ

 Nokiaが現在スペインのバルセロナで開催中のMobile World Congressで発表したのは、比較的安価なスマートフォン5機種である。Nokiaは「ネクストビリオン」つまり新たに10億人がインターネットを利用できるようにすることを社の目標としており、そのコミットメントを果たすための安価なスマートフォン発表だと説明する。

 5機種のうち上位3機種が新しいNokia Xファミリーに属するNokia X、Nokia X+、Nokia XLの3機種。スマートフォンとしては比較的安価な価格帯の89ユーロから109ユーロ。Lumiaにインスパイアされたデザインだという。

 Xモデルは4インチIPS液晶と3メガピクセルカメラで512MBのRAMを搭載。X+はさらに4GBのマイクロSDカード同梱と768MBのRAMを搭載。最上位機種のXLは、5インチ液晶、Skype通話に使える2メガピクセルの前面カメラ、オートフォーカスとフラッシュ搭載の5メガピクセル背面カメラを備える。

 Android端末ながら、Windows Phoneによく似た独自のタイルユーザーインターフェイスをかぶせてあり、Skype、OneDrive、Outlook.comなどMicrosoftのサービスに標準対応する。

 Android Open Source Project (AOSP)を採用しているため、GoogleサービスやGoogle Playは搭載しない独自フォークとなる。その意味ではAmazonや安価なスマホメーカー戦略と似た製品だ。Nokiaは独自のアプリマーケットプレイスであるNokiaStore、地図サービス、音楽サービスを搭載した。

 しかし、Androidアプリのほとんどに対応しているといい、現時点で対応できないアプリにもごく簡単に移植できるツールを提供し、移植コストはきわめて低いと強調している。

 発売時点でも主要アプリとしてFacebook、LINE Free Voice and Messages、LINE Camera、LINE Bubble、Picsart、Plants vs Zombies 2、Real Football 2014、Skype、Spotify、Swiftkey、Twitter、Viber、Vine、WeChatに対応。BlackBerryのメッセンジャーサービスBBMも搭載する。

 Nokia Xはアジア太平洋地域、欧州、インド、ラテンアメリカ、中東、アフリカ地域で発売されるが、米国での発売は予定されていない。

Nokia Asha 230
Nokia 220

 また、Nokia Asha 230はNokiaのAshaファミリーで最安価なタッチディスプレイ端末で45ユーロ、また最安価なNokia220はソーシャルアプリが利用でき29ユーロと、非常に安価な価格帯だ。

 一連の製品を見ると、暗にWindows Phoneが安価なスマートフォンラインでは重すぎることを匂わせているようにも思える。MicrosoftはWindows Phoneが低スペック端末でも動作するように改良し、そのように主張してきた経緯がある。

 Microsoftに買収されることが決定しているNokiaが、LumiaなどのWindows Phone以外に新たにAndroidスマートフォンを発表したことには困惑の声が多い。

 米Microsoftは24日、コミュニケーション担当コーポレートバイスプレジデントFrank X Shaw氏が公式コメントを発表。Microsoftの見解として、Nokiaの買収が完了していないことを挙げた。MicrosoftがNokiaのデバイス&サービス部門の買収を発表したのは2013年9月。そして買収完了予定は2014年第1四半期の終わり頃としている。そのため「現在は独占禁止法の要求に従って2つの独立会社として動いており、買収完了までそのようにする」と説明する。

 2番目に、Microsoftのサービスがこれら端末の上で動作することは喜ばしいこととコメント。最後に「私たちの主要なスマートフォン戦略はWindows Phoneのままであり、開発者のための中核となるデバイスプラットフォームはWindowsプラットフォームだ。」と締めくくった。

 特に最後のコメントを見る限り、MicrosoftはNokia買収完了後にこのAndroidスマートフォンNokia Xファミリー開発を中止するのではないかと推測する観測者は多い。

 その一方で、Windows Phoneのアプリ数が少ないことから、AndroidアプリをWindows Phoneで動作させるための技術戦略として有望と考える説もある。いずれにせよ、いまだ憶測の段階を出ておらず、今後どのような方向に進むのかは全くわかっていない。

 Shaw氏はコメントの最後に、業界の変化が非常に速いことが今回の展示会でも見られると指摘した上で、「今年バルセロナで当たり前の現状と見なされていることは、1年後にバックミラーから見ると非常に異なるように見える可能性がある」と意味深な言葉を残している。

(青木 大我 taiga@scientist.com)