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コーディング不要で電子出版、アドビ「Digital Publishing Solution」提供開始

 アドビシステムズ株式会社は30日、「Adobe Digital Publishing Solution(DPS)」の提供を開始した。DTPやHTMLなどで作成した各種コンテンツを、iOS/Android/Windows対応のモバイルアプリとして配信するための製品。従来のバージョンと比較し、コーディング(プログラミング)なしに作成できる領域が増えており、マーケターやデザイナーでも容易に利用できるのが特徴という。

アドビシステムズ株式会社の岩本崇氏(フィールドプロダクトマネージャー)

マーケターでも使える電子出版ソリューション

 2010年、iPad初代モデルの発売とほぼ同時期に発表された法人向け電子出版ソリューション「Digital Publishing Suite」の次世代バージョンに位置付けられる製品。今回、機能が大幅強化されたことを受け、名称が「Digital Publishing Solution」に改められた。なお、略称については「DPS」のままで特に変更されていない。

 30日には都内で報道関係者向けの説明会が開催された。アドビシステムズの岩本崇氏(フィールドプロダクトマネージャー)は「この5年でモバイルデバイスが使われる環境は大きく変化した。日常的に使うアプリはPCからモバイルへシフトしており、何よりユーザーが肌身離さず使うようになってきた」と、iPad登場直後と比較してますますモバイルアプリの重要性が高まっている点を指摘。その変化を踏まえて、新DPSは開発されたという。

「Digital Publishing Solution」の特徴

 従来のDPSでは、雑誌でいえば1号分にあたるような比較的大容量のコンテンツをあらかじめ一括ダウンロードさせるような構成となっていた。これに対し、新DPSでは記事単位での配信が容易になった。具体的には、各記事の一覧ページ(雑誌の目次に相当)作成にあたってのコーディングが不要になったため、マーケターやデザイナーらコンテンツ制作の現場により近い担当者が自らアプリを開発できるようになる。

 コンテンツのレイアウトも幅広くサポートする。アドビのDTPソフト「Adobe InDesign」で作成した固定レイアウトのデータに加え、デバイスの画面サイズなどに応じて動的にレイアウトを変化させる“レスポンシブ”な形式でのアプリ作成も可能としている。WordPress、Drupal、Adobe Experience Managerなど各種CMSとも連携できる。

 アプリは、iOS/Android/Windows対応のものを制作できる。なお、製品価格は個別見積もりとなっており、アプリ数、更新頻度などによって変動する。

新DPSは各種アプリやCMSと連携させて使う
iOS/Android/Windows対応アプリを制作できる

アクセス解析機能も充実

アドビシステムズ株式会社の秋山直人氏(シニアビジネスデベロップメントマネージャー)

 新DPSは6月17日からベータテストが行われ、約4000社が参加した。記者説明会の時点では、カンタス航空の機内誌をアプリ化した「Qantas Magazine」など、8つのアプリが新DPSで実際に開発され、AppleのApp Storeなどを通じて配信されてている。アドビシステムズの秋山直人氏(シニアビジネスデベロップメントマネージャー)は、これらのアプリのデモを行った。

 また、新DPSがマーケター向けを謳う背景の1つに、アクセス解析機能を強化した点がある。各ページの表示回数や滞在時間に加え、ユーザーの動線、再帰率なども測定できる。秋山氏は「(ページビューなどをもとに)記事の配置を変更し、それをイチから開発するのではなく、ダッシュボードから簡単に変更できることは非常に重要だ」と説明する。

 新DPSの正式版はワールドワイドでの提供が始まっており、日本も含まれる。また、30日間の無償体験版(英語)が用意されている。

新DPSで実際に制作された「Qantas Magazine」
ページ閲覧回数などの測定機能なども備えている

【記事訂正 20:00】
 記事初出時、登壇者の肩書きを誤って掲載しておりました。正しくは岩本崇氏が「フィールドプロダクトマネージャー」、秋山直人氏が「シニアビジネスデベロップメントマネージャー」となります。お詫びして訂正します。

(森田 秀一)