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東工大と富士通、世界最高速となる56Gbpsの無線伝送に成功、基地局間通信の無線化に発展も

 国立大学法人東京工業大学と株式会社富士通研究所は1日、72~100GHzのミリ波帯を使用したCMOS無線送受信チップとモジュール化技術を開発し、世界最高速となる56Gbpsでの無線伝送に成功したと発表した。

世界最高速となる56Gbpsでの無線伝送に成功した半導体チップと送受信モジュール。東京工業大学は送受信回路の低損失化・広帯域化技術を、富士通研究所はモジュール化技術を開発している

 今回、ミリ波帯を使用した送受信回路の広帯域化・低損失化を実現するために、データ信号を72~82GHzの低帯域信号と、89~99GHzの高帯域信号に分け、それぞれ10GHz幅ごとに変復調を行う技術を開発。これにより、20GHz幅の超広帯域信号でも入力・出力の電力比が一定となる範囲が10GHzと同等となり、低雑音で高品質な信号伝送を実現したという。

 また、ミリ波帯に周波数変換された信号を電波として送受信するための増幅器を開発。周波数によって増幅率が部分的に低下する信号成分を、出力信号の振幅を入力側にフィードバックすることで、増幅率を安定させている。そのほか、プリント基板とアンテナ(導波管)の間を超広帯域、かつ低損失に接続するためにプリント基板上の配信パターンを工夫し、インピーダンス整合させた導波管と基板間のインターフェイスを開発した。

開発した送受信機の構成

 実験では、10cmの距離を隔てて2台のモジュールを対向させ、データ伝送を実施。導波管と基板間の損失を10%以下に抑え、世界最高速となる56Gbpsのデータ伝送に成功した。これに加え、伝搬距離を伸ばすための高出力増幅器技術や、超広帯域信号を処理するベースバンド回路技術を組み合わせることで、屋外設置可能な無線装置が可能になるとしている。

 なお、ミリ波の無線通信は、周波数の高さからCMOS集積回路の動作限界近くで設計する必要があり、広帯域な信号をミリ波帯に周波数を変復調する受信回路や、回路基板とアンテナを接続するインターフェイス回路を低損失で実現することが難しかったとしている。

 東京工業大学と富士通研究所では、都市部や河川、山間に挟まれた地域といった光ファイバー通信網の敷設が困難なエリアにおいて、基地局間ネットワーク向けの無線基幹回線をターゲットに、2020年ごろの実用化を目指すとしている。

(山川 晶之)