ストリートビューの法的問題を整理、総務省の研究会

「違法ではない」が、より一層の対策を求める


Googleマップのストリートビュー機能

 総務省は22日、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の第2回会合を開催し、Googleマップの「ストリートビュー」機能に代表される道路周辺映像提供サービスの法的問題などを検討したワーキンググループの報告を第一次提言案としてまとめた。研究会では今後、第一次提言案に対してパブリックコメントを募集し、7月末ごろに第一次提言として公表する予定。

 研究会の「インターネット地図情報サービスワーキンググループ」では、道路周辺映像サービスについて、現時点では個人情報保護法の義務規定に必ずしも違反するものではないと説明。また、プライバシーや肖像権との関係についても、撮影様態やぼかし処理などを施すなどの適切な配慮がなされている限り、サービスの大部分は違法となることはないと思われるとして、サービス全体を一律に停止させるのではなく、個別に侵害の恐れのある事案に対処していくことが望ましいとしている。

 個人情報保護法との関係については、住居の外観はそれだけでは個人を特定できないものが大半であり、表札が判別可能な状態で写り込んでいる場合などを除いては、原則として個人情報には該当しないと説明。自動車のナンバープレートについては、登録名義人を照会するためにはナンバープレートの番号に加えて車台番号(下7桁)が必要とされることなどから、個人情報には該当しないとした。また、個人の容貌が写り込んでいる場合には特定の個人を識別可能と言えるが、顔の部分にぼかしをかけるなどの措置を講じた上で公開している限りは、個人情報には該当しないと考えられるとした。

 ワーキンググループではこれらのことから、道路周辺映像サービスは、特定の個人情報を検索できる仕組みを備えていない限り、原則として個人情報保護法の義務規定の適用は無いと考えられると結論付けている。ただし、総務省が定めている「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」の適用対象にはなるとして、サービスの公開にあたっては本人の同意を得るか、オプトアウトの要件を満たすことが必要になるとしている。

 プライバシーとの関係については、道路周辺映像サービスは相応の社会的意義を持つこと、特定個人のプライバシー侵害が問題となる場面は限定的と解されると説明。事業者において、1)カメラ位置や私有地に侵入しないようにするなど撮影様態に配慮する、2)人の顔やナンバープレートにぼかし処理を施す――などのプライバシー保護の措置を取る限り、プライバシー侵害となるケースは大幅に限定されると考えられるとして、プライバシーとの関係でサービスを一律に停止すべき重大な問題があるとまでは言い難いとしている。

 ただし、プライバシー侵害となるかどうかは、写真の内容や写り方に左右される面が大きく、撮影様態も個別のケースごとに検討する必要があるため、最終的には事例ごとの個別判断とならざるを得ないとし、道路周辺映像サービス提供者に一定の法的リスクが残ることは避けられないと指摘している。

 肖像権との関係についても、容貌が判別できないようにぼかしを入れたり、解像度を落として公開している限りは、社会的な受忍限度内として肖像権の侵害は否定されると考えられるが、プライバシーの問題と同様に最終的には事例ごとの個別判断になるとしている。この他の法的問題点としては、撮影にあたって法令の遵守に努めることや、映像中に著作物性が認められる建築物や美術作品などが写り込んだ場合の問題などを指摘。また、防犯上の問題については、警察などにおいて別途検討することが必要だとしている。

 報告書では、一般市民の心理を踏まえれば、法的な問題を克服できたとしても直ちに受け入れられるサービスと言えるわけではないとして、サービス提供者に事前の情報提供や、サービス公開後の削除対応などの充実、サービス全般に対する周知の徹底を求めている。また、道路周辺映像サービスは必ずしも社会的合意を形成した上で提供されてきたとは言い難いとして、現実に発生している様々な課題と緊急性に照らして、提言も踏まえて十分な社会的合意を形成するための一層の努力が強く求められるとしている。


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(三柳 英樹)

2009/6/23 15:54