BIGLOBEがパーソナルクラウド戦略、ライフログサービスなど


 NECビッグローブ(BIGLOBE)は8日、戦略説明会を開催し、ユーザー視点に立ったISP“インターネット・サービス・パートナー”となるビジョンを示した。クラウド時代を見据え、個人ユーザーがパーソナルクラウドを使いこなせるよう支援するためのサービスを展開するというもので、ライフナビゲーションサービス「BIGLOBEライフログ(仮)」や、パーソナルクラウドのゲートウェイとなる「BIGLOBEゲート(仮)」など、今後提供を予定している新サービスを発表した。

ライフログをクラウドにアップロード、専用ハードも開発中

「BIGLOBEライフログ(仮)」概要

 「BIGLOBEライフログ(仮)」は、デジタルカメラやGPS、ICカードなどのデータをクラウドにアップロードすることで、ユーザーの行動ログを整理し、カレンダーや地図上に表示する自動日記帳サービスだ。例えば旅行の写真であれば、そのままでは断片的な記録に過ぎないものを、経路に沿ったかたちで保存・閲覧できるほか、それを公開することで、他のユーザーの旅行プランの参考としても役立つという。PC用のWebブラウザのほか、Android携帯電話やカーナビなどから閲覧可能にしたい考えだ。

 さらに、アップロードした行動ログに基づいてお勧めのスポットを提示してくれるリコメンド機能もある。次回の旅行の参考となるだけでなく、旅行の途中でアップロードすれば、翌日訪問すべきお勧めのスポット情報を旅行先で入手するといった活用も考えられる。ユーザーの次の行動に関する情報を提示してくれるという意味で、BIGLOBEではこのサービスを“ライフナビゲーション”と位置付けているわけだ。

 この「BIGLOBEライフログ(仮)」では、インターネットに対応していない各種デバイスのデータをアップロードするための専用ハードウェア「ライフログ・アップローダー」を用意するのも特徴だ。これには、デジタルカメラやICカードリーダー、無線LANなどのネットワークなどを接続するUSBポートのほかは、アップロードボタンと「Link」「Busy」ランプがあるだけのシンプルな携帯デバイスだ。

 戦略説明会では、Linuxを搭載し、乾電池で駆動するプロトタイプを展示。ネットワーク接続には無線LANを用いていたが、モバイルWiMAXなど他の方式にも対応し、PC不要でアップロード作業が行える。旅行先に携帯してのアップロード作業や、普段はPCを使わず、携帯電話からのインターネット利用がメインのユーザーなどの利用を想定している。

 「BIGLOBEライフログ(仮)」は、2010年3月以降のトライアルサービス開始を目指して、現在、「ライフログ・アップローダー」も含めて開発を進めている。


「BIGLOBEライフログ(仮)」地図表示画面「ライフログ・アップローダー」は今後小型化を目指す

各種クラウドサービスを連携する“自分用スタートページ”

「BIGLOBEゲート(仮)」概要

 「BIGLOBEゲート(仮)」は、クラウド上の各種サービスを連携させるための“自分用スタートページ”を提供するサービスだ。ユーザーのWeb閲覧履歴や操作履歴、ブックマーク、各種サービスのID・アカウントなどをクラウド上で管理し、シームレスに連携する。

 例えば、ショッピングサイトで見つけた気になる商品のページを、ドラッグ&ドロップ操作でWebメールサービスで知人に送信できるほか、同様にTwitterやmixiなど外部Webサービスにも投稿可能。その商品を売っているリアル店舗の場所を地図で確認するといった機能も想定している。

 インターフェイスとしては、Windows用のアプリケーションとAndroid携帯電話用のアプリケーションを提供する。端末が変わっても共通の操作で直感的に利用できるとしており、携帯電話で行ったWeb検索結果をPCで詳しく確認することなどが可能。さらには、PCで購入・視聴している動画の続きを携帯電話から視聴するといったことも考えられそうだ。

 「BIGLOBEゲート(仮)」は、2010年3月までに提供開始予定。料金などの詳細は未定だが、BIGLOBEの接続会員向けに無料提供するかたちなどを検討しているという。


「BIGLOBEゲート(仮)」Windows用アプリケーション画面「BIGLOBEゲート(仮)」Android携帯用アプリケーション画面

 戦略説明会ではこのほか、「BIGLOBEマルチコネクト」「BIGLOBEケータイ会員証(仮)」といった新サービスも明らかにした。

 「BIGLOBEマルチコネクト」は、ユーザーの自宅無線LAN、新幹線などの公衆無線LAN、モバイルWiMAX、HSPAといった複数の無線回線を使い分けるソフト。ソフトにBIGLOBE IDを登録して起動しておけば、あとはその場に最適な回線を検索して自動で設定を切り替えて接続する。まずはWindows用のWi-Fi対応バージョンを8月に提供開始する予定で、順次モバイルWiMAXなどにも対応する。さらには、デジタルカメラやスマートフォンなどの各種機器用も投入するという。

 「BIGLOBEケータイ会員証(仮)」は、携帯アプリケーションとしてBIGLOBE IDの会員証機能を提供するもので、「ケータイを介してネットとリアルをつなぐ」というコンセプト。リーダーに携帯電話をかざすだけでPCなどの機器の設定を行ったり、ワンタイムパスワードやユーザー認証の機能を提供することを想定している。10月にサービスを開始し、順次、機能を拡張していく予定だ。


「BIGLOBEマルチコネクト」概要「BIGLOBEケータイ会員証(仮)」概要

新たなISP“インターネット・サービス・パートナー”へ

BIGLOBEの飯塚久夫代表取締役執行役員社長

 BIGLOBEの飯塚久夫代表取締役執行役員社長はクラウド戦略の方向性について、「クラウドという流れに乗って、それをユーザー視点に立ち、特にパーソナル領域において個々のサービスを実現していきたい」と説明する。

 インターネット環境が今後、WiMAXやLTEといったネットワーク面、ネットブックやスマートフォンといったアプライアンス面などで進展していくことから、「クラウドはもっと使いやすくできるはず」と期待を示す一方で、ユーザーがそもそもクラウドに接続できない、あるいはニーズに合ったサービスをなかなか見つけられないといった課題もあると指摘する。

 こうした状況に対して、「BIGLOBEは今までISPとしてユーザーをインターネットにつなぐ入口の役目を果たして来た。これからは単につなぐだけでなく、クラウドを使いこなすための“パートナー”という考えでサービスを提供していく」と宣言。利用者視点に立った新たなISPという意味で、従来の“インターネット・サービス・プロバイダー”ではなく、“インターネット・サービス・パートナー”となることを強調した。

 “インターネット・サービス・パートナー”とは、誰もがパーソナルクラウドのメリットを享受できるよう支援するものだという。その実現のためにBIGLOBEでは、「ユビキタス」「パーソナライズ」「クロスアプライアンス」という3つの側面を連携させるとともに、クラウドを使いこなすための「パーソナルクラウドゲートウェイ」を提供する。


“インターネット・サービス・パートナー”の説明クラウド時代に向けたBIGLOBEの戦略ビジョン

 BIGLOBEが提供しているFTTHやADSLといった固定ブロードバンドサービスをはじめ、無線LANスポット対応やモバイルWiMAXといった回線ラインナップ、8月より提供予定の「BIGLOBEマルチコネクト」、3月から提供中のリモートデスクトップサービス「LogMeIn」などは、このうちの「ユビキタス」領域のサービスにあたる。

 「パーソナライズ」領域としては、前述の「BIGLOBEライフログ(仮)」をはじめ、8月以降順次開始予定だというBIGLOBEトップページなどにおけるパーソナライズやコンテンツのリコメンド機能、11月以降開始予定のBIGLOBEサーチのパーソナライズ機能のほか、Windows Live IDやOpneIDとBIGLOBE IDとの連携強化などを挙げた。

 「クロスアプライアンス」領域では、前述の「BIGLOBEケータイ会員証(仮)」のほか、5月から提供中の携帯画像共有サービス「フォトポケ」や、家庭内の消費電力を自動計測してネット上で“見える化”するサービスとして4月から6月までトライアルを実施した「みんなでカーボンダイエット」などを紹介した。


ID連携の概要BIGLOBEトップページなどのパーソナライズ概要
BIGLOBEサーチのパーソナライズ概要BIGLOBEの各サービスを連携した、パーソナルクラウドの活用イメージ

 「パーソナルクラウドゲートウェイ」とは、PCや携帯電話、テレビ、ゲーム機、カーナビなど、さまざまな機器から共通の操作で、データ連携や利用シーンに応じたリコメンドなどの機能を提供するもので、前述の「BIGLOBEゲート(仮)」がこれにあたる。

 飯塚社長は、特に日本では接続サービス以外のインターネットサービスは無料であるというカルチャーが根強いと指摘。広告モデルにいかに果敢にチャレンジしていくかはもちろん重要だが、ISPはインターネットサービスでいかにユーザーから対価を支払ってもらうかを考える必要があるとした上で、今後インターネットサービスがクラウド化でますます複雑化すれば、こうした「パーソナルクラウドゲートウェイ」のようなサービスを有料で使ってもらえる可能性もあるとしてる。

 そのためには、例えば月額100円といったかたちで、いかにユーザーが支払いやすくするかといったiモードライクな発想で進めていくことが「現実的な教訓」だとした。

 BIGLOBEの2008年度の売り上げは906億円だった。今回発表した新たな戦略に加え、M&A戦略などにより売り上げを拡大し、2012年度に1300億円を目指す。


NECグループのハードウェア事業との連携も強みだという売り上げの推移と2012年度の目標

関連情報

(永沢 茂)

2009/7/8 18:41