情報セキュリティ産業、日本の市場規模は7268億円で世界の13%


 情報処理推進機構(IPA)は28日、日本の情報セキュリティ産業の構造に関する基礎調査の結果を公開した。調査期間は2008年9月~2009年7月。日本、米国、欧州(英国、フランス、ドイツ)、韓国を対象に、市場規模や産業構造、情報セキュリティ政策の動向および情報セキュリティ技術の動向について調査している。

 調査対象国における2008年の情報セキュリティ産業の市場規模は、日本が7268億円(世界シェア13.2%)、米国が2兆4951億円(同45.2%)、西ヨーロッパが1兆5021億円(同27.2%)、韓国が約600億円(同1.1%)。

 産業構造については、製品の供給主体は、韓国以外の国では米国事業者の占める割合が高く、サービスの供給主体についてはどの国や地域でも自国(地域)の事業者が中心だが、日本や欧州では米国事業者の活動も盛んだとしている。

 また、日本ではエンドユーザーに至る製品の流通経路として、システムインテグレーター(SI)の役割が大きく、サービス提供でもSIが大きな役割を担っていると説明。韓国も日本に近い構造と推測され、フランスや英国にも似た構造が見られるという。一方、米国ではレップと呼ばれる媒介事業者を介してメーカーとエンドユーザーが直接取り引きする構造が強く、SIが流通に占める役割は小さいとしている。

 政策面においては、日本以外の国では技術開発における政府資金の活用や、その民間移転の仕組み、情報セキュリティ人材育成のための施策が展開されていると説明。例えば、米国では国立標準技術研究所(NIST)の基準に基づく実施基準などが官民共同で開発され、その技術が民間でも活用されることでセキュリティ対策が推進される構造があり、情報セキュリティに焦点を当てた人材育成が行われているが、日本にはこうした構造が無いと指摘している。

 調査では今後の方向性として、新しい技術動向を念頭に置いた上で、政府の情報セキュリティ対策の向上に直接貢献する研究開発等の投資の実現、それらの成果を政府自身が利用する仕組みの実装、これらを通じた情報セキュリティ産業の活性化を踏まえた政策立案が重要だと指摘。また、情報セキュリティ技術の領域での安全保障を視野に入れつつ、国内の情報セキュリティ産業の活性化や国際競争力の確保に向けた政策対応のあり方、それらを支える人材の確保・育成策に関する検討も必要になるとしている。


関連情報

(三柳 英樹)

2010/1/29 18:03