ライブドア「BLOGOS」が描くブログメディアの“勝ちパターン”


 ライブドアは11月30日、同社が運営するブログメディア「BLOGOS」のビジネスモデルや今後の展開を紹介する記者説明会を開催。ライブドアのブログメディア事業室長の田端信太郎氏、BLOGOS編集長の大谷広太氏、上武大学教授の池田信夫氏の3人が、オープン1周年を迎えたBLOGOSの勝算などについて語った。

 BLOGOSは、情報発信や議論のきっかけとなるような時事分析、オピニオンを含むブログを「livedoor ニュース」編集部が紹介するポータルサイト。2009年10月のオープン以来、池田信夫氏や片山さつき氏ら250人以上が参加ブロガーとして登録され、月間ページビューは約1400万に上る。

「編集の独立」を担保するブログメディア

ライブドアのブログメディア事業室長の田端信太郎氏

 「ブログは有名人の日常をのぞき見る媒体ではなく、個人の日記を超えたメディアになり得る」と語る田端氏。ライブドアが定義するブログメディアには、1)ニッチジャンルに特化する、2)高頻度で更新する、3)ローコストで運営する――といった特徴があるという。

 ニッチジャンルへの特化とは、グルメ関連のブログであれば、豚骨ラーメンだけに焦点を絞るような内容を指す。高頻度の更新は、週刊や月刊のメディアと異なり1日に数回更新するブログ。ローコスト運営は、スタッフが都心にオフィスを構えずに自宅などで作業したり、システム面でも安価なブログを活用することで損益分岐点を下げることだ。

 こうした特徴を踏まえるブログメディアは固定費が小さいため、アドネットワークによる収益だけで事業が成立する可能性が高く、従来のメディアのように「営業スタッフが獲得する広告」への依存度が少ないと田端氏は指摘する。その結果、広告主の意向にとらわれない「編集の独立」が成立するのも特徴だとしている。

 「広告営業があると、『編集の独立』といいながらも、大口のスポンサーへの悪口は書きにくくなるという力学が働く。その反面、ブログメディアは『編集の独立』が、単なるお題目ではなく担保され、本当に書きたいことを書ける。読者側からしても、利害と打算がないという信頼性につながる。」

「ニッチジャンル特化」×「高頻度更新」=ブログメディアの勝ちパターン

GawkerMediaの特徴

 日本にはBLOGOSの競合は存在しないという田端氏だが、「典型的なブログメディア企業」として意識しているのが米国のGawkerMediaだ。同社はゴシップブログ「GAWKER」、ITガジェットブログ「GIZMODE」、仕事術紹介ブログ「lifehacker」など8つのブログを束ねる一方で、システムインフラや広告営業を共通化してスケールメリットを発揮しているという。

 「GawkerMediaは各ブログがニッチなジャンルに特化し、高頻度で記事を更新している。その結果、全体のユニークユーザー数は1300万人に上った。既存のメディアのようなブランドがないにもかかわらずアクセスを拡大する方法を確立しており、ブログメディアならではの“勝ちパターン”として我々も意識している。」

 ライブドアには、読者の誘導が可能なポータルサイト「livedoor ニュース」に加えて、「livedoor Blog」によるシステム基盤があることが、ブログメディア事業の競争優位につながっていると田端氏は分析する。「ライブドアは従来型のポータルサイトから、メディアプラットフォームの提供企業へと生まれ変わりつつある」。

池田信夫氏「BLOGOSが失業ジャーナリストの救済機関になる」

BLOGOS編集長の大谷広太氏
上武大学教授の池田信夫氏

 BLOGOS編集長の大谷氏は今後の展開として、現在も月に1回実施しているUSTREAMによる対談やイベントを充実させるとともに、TwitterやFacebookの活用を進めていくとコメント。また、スマートフォンのアプリの機能拡充を通じて、iPadも含めたモバイル分野の閲覧者を増やしていきたいと語った。

 また、BLOGOSの参加ブロガーに対しては、ライブドアが運営する「ブログ奨学金」や「日本ブログメディア新人賞」との連携を図ることなどによって収益化を支援すると説明。12月中旬には投資・金融に特化したオピニオンメディア「BLOGOS finance」を開設し、2011年10月時点でページビュー数1億、参加ブロガー500人を目指すという。

 なお、BLOGOSの事業に関する収益は非公開。大谷氏は「来年は成長段階だと認識しているが、黒字化できるブログも出てくるなど、全体的ではバランス良くやっている」と話した。

 記者説明会ではこのほか、池田信夫氏がBLOGOSの勝算について「経済学には、市場に参入したプレイヤーが優位に立つファースト・ムーバーズ・アドバンテージという言葉があるが、ヤフーがポータルサイトでそうだったように、ライブドアもオピニオンメディアでトップを獲得できる可能性はある」とエールを贈った。

 「先のことはわからないが、ひとつだけはっきりしているのは新聞とテレビは10年持たないということ。米国ではいくつかの新聞社が倒産したりしているが、日本でもそのような流れは予想できる。今後は失業したジャーナリストの救済機関として、BLOGOSのプラットフォームが役割を果たすかもしれない。」


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(増田 覚)

2010/12/1 06:00