社会保障・税に関する番号制度、技術WGが中間まとめ

論点整理などにとどまり、今後具体的なシステムについて検討


 政府・与党社会保障改革検討本部で検討が進められている「社会保障・税に関わる番号制度」と、IT戦略本部で検討が進められている「国民ID制度」で、両制度に共通する事項のうち技術に関する事項を検討するために設けられた「情報連携基盤技術ワーキンググループ」が28日、第7回会合を開催し、これまで検討してきた内容の中間とりまとめを行った。

社会保障・税分野に「番号」を導入、行政効率化と個人情報保護の両面を議論

 「社会保障・税に関する番号制度」は、年金・医療・介護保険・福祉・労働保険・税務の各分野において、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤として「番号」を導入し、各機関のシステム連携を進めようとする制度。これにより、所得情報の正確性向上とそれに伴う社会保障の充実、負担・分担の公正性の確保、各種行政事務の効率化、手続きの簡素化などが実現できるとしている。一方の「国民ID制度」は、社会保障・税以外の行政分野での利用や民間分野での利用など、さらに広い分野での利用を想定しており、情報連携基盤技術ワーキンググループでは両制度で共通する事項に関する技術的な検討を行ってきた。

 中間まとめでは、番号制度の基本的な考え方として、住基ネットに関する最高裁判決で示された、「何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有すること」「個人情報を一元的に管理することができる機関または主体が存在しないこと」といった趣旨を十分踏まえる必要があると指摘。「番号」に関わる個人情報は情報保有機関が分散管理することとし、分散管理を基にした高いレベルのシステム上の安全措置と制度上の保護措置を講じることで、国民が安心して「番号」のメリットを享受できるよう、情報連携基盤の構築を検討する必要があるとしている。

番号制度における符号連携のイメージ(配布資料より)

 個人に付与する「番号」については、住民票コードと1対1で対応する新しい番号として生成するとともに、住民票コードに論理的に遡れないようにすることが必要だとしている。また、この「番号」は各行政機関間の情報連携には直接用いず、各機関ごとに異なる符号(リンクコード)を番号から生成して割り当て、このリンクコードを各機関が保有するデータベースと紐付けることとしている。

 一方、中間とりまとめ案には、情報保有機関は利用者の基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)を住基ネットの基本4情報と突合した上で、番号生成機関に対して「番号」の提供を求め、自らが保有する個人情報のデータベースと「番号」を紐付けるという記述もあり、会合では委員からこの部分をより正確な記述とするよう求める場面があった。また、「番号」と符号の関係についても、「番号」を情報連携に直接用いる案が示されているが、これについては「コストパフォーマンスは高いものの、連携対象の拡張性に欠け、セキュリティ・プライバシー影響度が非常に大きいことから問題であるという意見が多かった」とまとめられている。

 情報保有機関間での個人情報などのデータ送受信方式についても、情報連携基盤を介して送受信を行う方式(ゲートウェイ方式)と、各機関間で直接送受信する方式(アクセストークン方式)の2案について議論が行われたとし、「いずれの方式を採用すべきかについては、ユースケースの分析が十分になされていない現段階で決定するべきではないという意見が多く、また、両者の複合型も選択しとして考えるべきであるという意見も出された」と述べるにとどまっている。

 このほか、ユーザーが「番号」に関わる個人情報やアクセス記録の確認、行政のワンストップサービスなどを行えるようにするウェブサイト「マイ・ポータル」を開設することや、ログイン用のICカードを交付することなどについても、これまでの検討内容と今後検討が必要な事項をまとめた形となっている。

今秋に法案提出、2015年に「番号」利用開始

 政府・与党社会保障改革検討本部では、社会保障・税に関する番号についての方向性を示した大綱を6月30日にまとめており、番号制度については2011年秋以降の可能な限り早期に法案を国会に提出し、法案成立後可能な限り早期に第三者機関を設置し、業務を開始。2014年には個人・法人に番号を交付、2015年には社会保障分野と税務分野のうち可能な範囲で番号の利用を開始することを、今後のスケジュールのめどとして示している。

 情報連携基盤技術ワーキンググループの中間とりまとめはこの大綱を受け、今後関係省庁が行っていく予算要求や予算編成過程において、一定の方向が示された材料が必要であることから、これまでに検討してきた内容について論点を整理した。ただし、「現状の検討結果だけでは十分であるとは言えず、さらに踏み込んだ検討が必要な事項や、新たに検討しなければならない事項などが存在する」として、具体的な結論には至っていない項目も多い。こうしたことから中間とりまとめ案では、「検討すべき事項は数多くあるが、今後まずはユースケースの分析を早急に進めるとともに、それを充足するための機能の確認や、トランザクション数、データ量などによる性能面の妥当性検証などを行う必要があり、政府において最適なシステム構築に向けた検討を精力的に進めていくことを強く求める」と結んでいる。


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(三柳 英樹)

2011/7/28 19:03