16日刊行の「ぴあ」電子書籍版、Azure利用の電子書籍クラウドサービスを採用
「ぴあ+〈plus〉」をiPadで表示した画面 |
日本デジタルオフィス株式会社と日本マイクロソフト株式会社は15日、Windows Azureプラットフォームを利用した電子書籍クラウドサービス「DO!BOOK[SV]」を開発し、ぴあ株式会社が12月16日に刊行する電子書籍「ぴあ+〈plus〉」(仮称)に提供すると発表した。
「DO!BOOK[SV]」は、電子書籍コンテンツの作成、公開、分析などを提供するSaaS型のクラウドサービス。公開したいPDFファイルをアップロードすると、HTML5対応の電子書籍コンテンツに自動的に変換され、PCやタブレット端末・スマーフォンなどマルチデバイスからの閲覧が可能となる。
電子書籍の保管場所もWindows Azureプラットフォーム上となるため、大量のアクセスが来た場合でもスムーズに利用できる環境の構築が可能。ユーザーにとっては、専用アプリケーションのインストールや書籍をダウンロードする必要がなく、ブラウザーで手軽に電子書籍を閲覧できる。
公開される電子書籍ページは、現時点では雑誌やカタログなどのコンテンツを表示することを前提としており、固定されたレイアウトのページを拡大・縮小しながら、ページ単位で読み進めていく形となる。PDFに埋め込まれたリンクは電子書籍ページでも再現され、ウェブページへの誘導も可能。FacebookやTwitterなどのSNS連携機能も備え、気に入ったページを友人に紹介することや、ユーザー同士や編集部とのコミュニケーションツールとしても利用できる。
電子書籍の閲覧ログはSQL Azure上に蓄積され、読者が電子書籍のどの部分を長時間閲覧していたかを色分け表示する「ヒートマップ分析」や、閲覧順序を可視化する「アイトラッキング分析」など、詳細なログ分析もサービスとして提供。今後はさらに、2012年1月にはFacebookページとして組み込めるモジュールの提供、2012年3月には決済システム連携モジュールの提供を予定する。
PDFファイルをHTML5対応の電子書籍コンテンツに自動変換して公開する | PCでの閲覧画面 |
よく閲覧された場所や視線移動などの分析もサービスとして提供 | Facebookページ組み込みや決済システムなどを今後提供予定 |
●「ぴあ」電子書籍版がシステムを導入、SNS連携の「はみだしYOUとPIA」も
ぴあの岡政人氏 |
ぴあ株式会社では、2011年7月に休刊した情報誌「ぴあ」の映画欄を、無料の電子書籍コンテンツ「ぴあ+〈plus〉」として12月16日から配信するにあたり、「DO!BOOK[SV]」をシステムとして採用した。15日には同じシステムを利用した、スタジオジブリの電子フリーペーパー「電子ジブリぴあ」の配布も開始している。
ぴあメディア局映画グループの岡政人氏は、「上映スケジュールなどの情報はウェブサイトの『ぴあ映画生活』などで提供しており、検索性などの面ではウェブが便利。一方で、これまで紙で提供していた、カレンダー形式で一覧できるようなコンテンツが欲しいという声も多くあったことから、ぴあ休刊以降検討を重ねてきた」と説明。雑誌のような形式のコンテンツが欲しいというユーザーの要望に応える形で、電子書籍コンテンツとして提供することにしたという。
電子書籍の「ぴあ+〈plus〉」は、まずは映画に特化した形のコンテンツからのスタートとなり、上映スケジュールを中心に毎週更新する「通常号」を軸として、誌面紹介に適した企画をまとめた「増刊号」や、劇場でも小冊子として同時に配布する「特別号」などを展開していく。また、今後はSNS連携機能を活用して、雑誌時代の読者投稿欄「はみだしYOUとPIA」のようなコンテンツも実現してきたいとした。
また、翌日の16日に公開を控えているにも関わらず、映画館の上映情報については「これから作成する」と説明。シネコンなど、このタイミングでないと上映スケジュールが決まらないところが増えているためで、「雑誌の休刊時に、情報誌としての役割を終えたと説明した部分でもあるが、紙の時代にはそこをカバーできなかった」として、こうした直前までの対応ができるのも電子書籍の利点だとした。
「ぴあ+〈plus〉」サービス立ち上げの経緯 | 「今週の映画情報」をBOOK形式でまとめて提供 |
SNS連携による「読者投稿欄」的なサービスも | Androidタブレットでの表示画面 |
日本デジタルオフィス代表取締役の濱田潔氏は、今後提供予定の決済システム連携モジュールは、システムの利用料はかかるがマージンはゼロの販売システムとして提供すると説明。サービス開始を記念して、今回のぴあと同様のシステムを年額20万円から試用できるモニターキャンペーンも先着20社限定で実施する。今後は電子カタログやマニュアルなどビジネスコンテンツの配信用途も見込んでおり、今後1年間で500社、3年間で国内外1万社への導入を目標とすると語った。
日本マイクロソフト業務執行役員パートナー&クラウド推進本部長の平野和順氏は、「今週はタクシーの配車システムなど嬉しい発表が続いており、Azureも実サービスに根を下ろしてきたなと実感している。Azureはプラットフォームであり、その上のアプリケーションが必要。こうした素晴らしいサービスが増えていくよう、今後とも支援していきたい」と語った。
日本デジタルオフィスの濱田潔氏 | 日本マイクロソフトの平野和順氏 |
関連情報
(三柳 英樹)
2011/12/16 06:00
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